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■スタンドアップ(ニキ・カーロ監督)

■スタンドアップ(ニキ・カーロ監督)

1980年代、ミネソタ州の鉱山で女子労働者が起こした訴訟を描いたノンフィクション「North Country」を映画化。この訴訟は、米国のセクシャル・ハラスメント法の制定に貢献したんだそうだ。

というと、小難しくてメッセージ性の強い映画みたいに思われちゃうだろうけど、そこはハリウッドですから。キャラクターはどれも単純化されて分かりやすいし、最後は父親が家族のために立ち上がるし、主人公は勝利するし、ちゃーんと「感動して立ち上がり、拍手する人々」みたいな(厳密には違うが)感じのシーンも用意されているのだ。

主人公の女性は、10代で「父親が誰か分からない」(終盤で判明するが)赤ちゃんを出産し、追われるように故郷を出て、長じてはひどいDV男と結婚し、殴られ、ボロボロになって故郷の鉱山の町に戻ってくる、という設定。
1989年。当時の炭坑労働者の男女比は30対1だったそうだ。

鉱山での「セクハラ」のレベルは、ちょっと想像を超えている。
レイプされる危険は日常茶飯事。女子用簡易トイレを現場にようやく設置してもらえたと思ったら、中に女性が入った途端、男たちが笑いながらトイレを箱ごと揺らし、ひっくり返す。なにしろ、「男の職場に女がいて目障りだ」程度の動機ではなく、「女のせいで男が仕事を奪われている」と本気でみなが思っているんだから、いやがらせの程度も半端じゃないのだ。

ただ、正直言って、主人公の女性にはあまり感情移入できなかった。
組織の中での動き方を30代のわりには知らないし、上司とけんかするならもっとうまくやれよ、とか、男社会で意見を通していくにはもうちょっと知恵を使ってくれよ、とか、社長にセクハラを訴えにいくなら、録音ぐらいしておけよ、とか、ついつい悔しくなってしまう。おまけに、運転免許をほしがる息子にこっそり無免許運転させちゃうし(映画の中では母と息子の心の結びつきを示すシーンなんだけど、ごめん、私は交通事故の被害者の顔がちらついて、むしろ憤りを感じてしまった)。
おまけに、訴訟を起こすのに手伝ってもらう代理人の弁護士が、恋仲になりそうな相手の男、ってのもなんだかなあ。

むしろ、圧倒的な男社会の中で、男たちのひどく下劣ないやがらせを、心で怒りくるいながらも、鼻でふふんと笑ってみせたり、わざと笑顔で下ネタにつきあってやったり、平然を装ったりしながら、「働き続けること」を最優先し、賢く乗り切ろうとしている他の女性従業員のほうが身近に感じちゃった。でもそれだけじゃ、企業は、世の中は変わらない。
その中で、グローリーという名の女性がいてね。鉱山労働者として、組合の一代表として、周囲の男たちの信頼を勝ち取りつつ、言うべきことは言って、闘う姿にはほれぼれとする。ああ、なんとかっこいいのだろう、と。
映画を通して、彼女の存在は一貫して訴えるものがあります。

また、思春期の息子と主人公女性とのやりとりの痛々しさやら、初めて自分の稼いだ金で家族で外食するシーン、家出した息子が帰ってくるシーン、ずっと娘(主人公)が鉱山で働くことを反対していた自らも鉱山労働者である寡黙な父親が最後にみなの前で声を上げるシーンなどは、かなり感動的。
試写会は圧倒的に若い女性が多くて、多くの子たちが泣いていました。
彼女たちは私なんかよりずっと若い分、男職場で苦労したり、日々悔しい思いをしたりしているのかもなあ、と思ったのでした。

言葉にできない「ホテル・ルワンダ」

映画「ホテル・ルワンダ」を試写会で見た。
言葉にならない思いが頭の中をぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる……。
とうてい、ここにも書けない状態。

心の中で、今年見たほかの映画たちとまったく違う場所に、ドカーンと飛び込んで、完全に他を圧倒してしまった、って感じ。
「『愛する家族を守りたい』。ただ一つの強い思いが、1200人の命を救った……」というのが映画のキャッチコピーで、いかにも米国受けしそうな「家族を守るパパ」的フレーズなんだけど、実際に映画を見てみたら、全然別のところが、やたら心に残った。

例えば外国メディアのジャーナリストが虐殺の映像を世界に向けてニュースで放映した夜、「これで世界が助けてくれる」と期待し、喜ぶ主人公のルワンダのホテルの支配人男性に対して、このジャーナリストは自嘲気味にこんな風に言う。
「助けが来なかったら? 彼らはニュース映像を見て、『恐いね』と言って、ディナーを続けるんだ」
世界の無関心と、その構成員である私。

さらに、この支配人はいよいよ死を目前にした時、ホテルに逃げ込んでいた避難民たちに「海外の有力者に電話をかけて助けをもとめてください。そして別れを告げてください」と呼びかける。このシーンの台詞はとてもすごいんだけど、上手に思い出せない。ただ、彼は最後にこんな風にも言う。
「(電話の相手が)恥して助けを送るように」

「恥」という言葉が、胸に刺さった。

いくつもの問いかけに、まだまだ、答が見つかりそうにない。

1月14日からシアターN渋谷でロードショー、だそうです。
とにかく、見てくださいませ。
私もそのころまでに、少しずつここで言葉にしてみるので。
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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