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おいおい、あんた、そりゃないだろう

久しぶりに地元図書館の会話クラブへ。
私の暮らすカウンティーでは、ほぼすべての図書館で、週に1~2回、同様の会話クラブがある。アメリカ人がボランティアで、外国人を集め、ゆったりと英語で会話しましょー、という趣旨のクラブだ。
「教室」ではないから、宿題も、無理強いされることもない。が、先生のほうも、外国人に英語を教える専門の方が来てくださるわけではない。
すごく素敵だなあ、と思う方もいれば、おいおい、あんた、そりゃないだろ、という先生ももちろんいる。もちろん、どの先生に関しても、外国人のためにボランティアをしよう、という精神には頭が下がるけれど。

本日のナンシー先生は、「おいおい、あんた」系だった。

この日は、「まったく英語が分からないの」 という不安気な中国人の母娘が参加していた。
「英語がまったくわからないのに大丈夫かしら?」 と中国語で尋ねられたので、どうにかこうにかヘタクソな中国語で 「大丈夫だと思うよ。一緒に席に座ろうよ」 と誘った。
さて、まずはみんなで自己紹介。
ナンシー先生は、「OK。では最初に、お名前と、出身国と、どのくらいこの国に暮らしているのかを順番に話してちょうだいな」 という。
彼女の英語を聞いて、あっちゃー、まずいぞ、と思った。
英語の分からない外国人にも、きちんと丁寧に完璧な文章で質問しようとするタイプ。相手が分からないと気付くと、より複雑な言い回しを使っては墓穴をほり、どんな表現であれば英語初心者に伝わるかをまったく解してないタイプだと分かったからだ。

案の定、中国人母娘は、ナンシー先生の英語をまったく分からない様子。
こういう時は、「name?」 とか 「what country?」 とか、単語だけ並べてあげたほうがずっと分かりやすいのに。ナンシー先生は、必死で質問をたたみかけ、文章はいよいよ長くなっていく。
結局、私より圧倒的に中国語のうまい中華系タイ人のレックが通訳役を買って出て、母娘2人は無事、名前と出身国を答えることができた。

しかし、である。
我らがナンシー先生は、なぜか、彼女たちの出身国をあっさり忘れてしまうのだ。
「えっと……。あなたは日本からだったかしら?」
「いや、タイでしたよね?」
などと英語で質問し、そのたび、何を言われたか分からない中国人母娘の表情が固まる。
ちょっと、いいかげんにしてよ、彼女たち、さっきどんなに必死の思いで 「China」 の一言を言ったと思ってんのよっ!
私は内心、むっとしてしまう。

どうやら、私やタイ人のレックが中国語で彼女たちと意思疎通をしてるのをみて、「日本人なのかー」 とか 「いや、タイ人だったのかも」 とか勘違いしちゃったみたい。

気付けば、その場にいる日本人の私と、タイ人3人と、韓国人2人が、アジアンタッグを組んで、中国人母娘を守るぞ的な雰囲気になっていたのだった。

ここまでなら、まあ、よくある話。
でも、この日は、この先があった。

まったく話せない中国人の母娘に、ナンシー先生はこう話しかけた。

「大丈夫。トライすることが大事よ。実は私が出会った生徒さんにこんな人がいたの。髪をすっぽり布で覆った女性で、初めてこのクラブに来た時はまったく英語が話せなかった。初対面の時、私は彼女の年齢を60代前半かな~、と思ったの。1カ月くらい経つと、彼女は少しずつ英語を話し始めたわ。すると、不思議ね、彼女が以前より明るい雰囲気に見えた。60代前半に見えたのが、もしかしたら、50代かも、と。それからさらに1カ月。彼女に再会してびっくりしちゃった。彼女はもう、髪に布なんか巻いてなかった。アメリカ人っぽい服を着て、すごく若々しく見えた。年齢を聞いたら、なんと42歳だって! 英語もとっても上手になってたのよ」

言いたいことは、分かるよ。
悪気がないのも、分かる。
こうやって外国人のためにボランティアをしようというあなたの精神には頭も下がる。
でもさ。

アメリカっぽい服を着て、英語を話せるようになり、髪のベールを外したら、なぜ自分の眼に彼女が途端に若々しく見えるようになったのか、考えたことはある?

思わずそんな風に、口をはさみそうになってしまったけど、やめた。
ここは、自己紹介だとか休日の過ごし方だとか、当たり障りのないテーマについて平易な英語でおしゃべりする場所。私が彼女に議論を挑んだら、周囲にすっごく迷惑だろうしね。

そう思ってたら、目の前にいた韓国人の女性が、一言こう質問した。

「その女性、どこの国の方だったんですか?」

ナンシー先生は一瞬、言いよどみ、「覚えてないけど、どこか中東の国だと思うわ」

その瞬間、質問した韓国人女性と目が合った。
彼女の目が 「ほらね、やっぱり」 と言ってた。
思わず、目で 「結局、そういうことよね」 と答えた。

ちなみに、この場には、イランから来た男女もいた。
絶対に思うところがあったと思うけれど、彼らとは視線が絡まなかったので、真意はよく分からなかった。


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そういう時ってなぜかアジアの国の人たちと意思の疎通がはかれてしまうの。ほんとに。なんでだろう。
やっぱり、感覚的に近いものがあるのかなぁ。
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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