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記事265◆インスタントラーメンの父、訃報に寄せて

■掲載年月日 2007年01月30日
■追悼、日清食品創業者・安藤百福さま
■人類に残した「一杯の幸せ」

◇毎日2億食、世界の味から宇宙の味へ
◇ラーメンの話したら、みーんな元気になれるんや


 「インスタントラーメンの父」が亡くなった。お湯を入れるだけで食べられるチキンラーメンなどの即席めんの発明者、日清食品創業者会長の安藤百福(あんどうももふく)さん。享年96。安くて、便利で、温かい。今日もそんな「一杯の幸せ」に満たされる私たちの姿を、大空のどこかで見てますか。


 百福さんの訃報(ふほう)(1月5日)から数週間たった冬晴れの日、「インスタントラーメン発明記念館」(大阪府池田市)を訪ねた。ここはいわば即席めんの聖地。チキンラーメンやカップヌードルなどの発明秘話が展示され、カップめんを自分でデザインできる体験コーナーもある。99年の開館以来、ラーメン好きが引きも切らない。昨年は約30万人が訪れ、7月には延べ100万人を突破した。

 「知らなかったなあ。世界的な大発明やったんですねえ」。展示にすっかり感心したふうの男性会社員(27)は訃報を聞いてここに来たくなったんだそうだ。家族連れも目立った。孫を抱いた男性(63)は「懐かしい。チキンラーメン発売当時(1958年8月)はすごい人気で、売ってる店のうわさを聞いては買いに走った。びっくりしたな。『なんで湯を入れただけで食べられんねん?』って」。

 入館者の思い出にしばし耳を傾けてみた。「当時、チキンラーメンはうどん屋のうどんより高かった。それでも食べたかったんや」は戦中派。「カップヌードル(71年9月発売)って、あさま山荘事件(72年2月)のテレビ中継で機動隊が食べて有名になったよな」。これを知ってるかどうかで年齢が分かる。「母が面倒くさがりで土曜の昼はいつも即席めん。でも僕には懐かしいおふくろの味やな」とかつて「新人類」と呼ばれた中年男が漏らせば、「スケート場で食べるカップめん。なんであんなにおいしいんやろ」と今どきの若者。老いも若きも、懐かしい思い出がある。まさに「国民食」なのだ。

 百福さんが即席めんの製法を発明したのは58年3月5日未明のこと。一杯のラーメンを求めて人々が列をなした戦後闇市の風景が原点だったという。発明から約半世紀。今やヘッドホンステレオ、家庭用ゲーム機、コンパクトディスクとともに日本人の手による希代の発明品と世界中から称されるようになった。

 世界の即席めんの年間消費量は857億食(05年、世界ラーメン協会調べ)。まさに「世界の味」だ。1位は中国、2位はインドネシア、3位にようやく日本が登場する。05年にはスペースシャトルに積み込まれ、「宇宙の味」にもなった。
 百福さんの死去を受け、米紙ニューヨーク・タイムズは社説に感謝を込めて「ミスター・ヌードル」と取り上げた。「(即席めん発明の功績で)安藤氏は人類の進歩におけるパンテオン(古代ローマの神々の神殿)で永遠に祭られる」とあった。もう、神さま扱いである。

 3年前、百福さんと言葉を交わしたことがある。その時の印象も「神さま」だった。この発明記念館の前で声をかけ、こんな質問をぶつけた。「今の日本はどうでしょう? 自殺率は世界一。若者に仕事はない。子どもが殺されたり殺したり。こんな日本を元気づけるにはどうすればいいのでしょう?」
 いささか大上段に構え過ぎた質問に、しかし、百福さんは笑顔のままでこう言った。

「ラーメン、ラーメン。ラーメンの話をしたら、みーんな元気になれるんや。私かて、そうでしょ。毎日ラーメン食べて元気です」

 百福さん。実は私、あの時、するすると力が抜けました。ラーメンで日本が元気になるものか、と。でも、神さまか仙人のような百福さんの風ぼうを見ていたら、ふと思ったのです。「この人には今も、闇市で見たラーメン一杯の幸せが鮮やかに見えてるのかも」と。

 宇宙用の即席めんの開発の際には「対立する国の人とも同じ宇宙空間でラーメンを食べるなんて、夢があるじゃないか!」と語ったという。きっと本気で信じていたのだろう。ラーメンは人を元気に、幸せに、そして平和にするんだと。

 毎日、2億食。今日も世界中でたくさんの人が、同じ空を見上げながら、熱いインスタントラーメンをすすっている。


■海外でもこんなに人気 (各国特派員の報告より)

 ◇消費量1位は中国
 海外でもアジアを中心に即席めんの人気は高い。
 即席めんの消費量1位の中国では年間に約460億食(05年)が胃袋へと消えてゆく。世界の過半数を占める量だ。人気の味は「紅焼牛肉」味や「四川風激辛鍋」味など。学生や若者はもちろん、会社員の残業には欠かせない存在で、残業者からは「発明されたことを恨むよ」という声も。しかし、即席めんが日本人の発明だと知る人は、まずいない。
 一方、韓国は消費量では世界5位だが、1人当たりにすると年間約80食(05年)で一気に世界一に躍り出る。ソウル駅の隣の大型スーパー、ロッテマートには、袋入りめんが77種類、カップめん58種類、合計135種類がずらりと並び、壮観だ。ここの一番人気は「辛(シン)ラーミョン」。韓国メディアによると「単一品目のラーメンでは世界最多の販売量」で、日本にも輸出されている。
 一方、消費量で4位の米国は日清食品が70年、初の海外進出を遂げた国だ。96年から昨年までニューヨーク・マンハッタン中心部のタイムズスクエアに掲げられた、高さ18メートルもの巨大なカップヌードルの広告は有名だった。毎年、大みそかのカウントダウンの時は全米中に中継された。学生や低所得者、あるいは非常用食品というイメージが強いが、中には熱狂的なファンも。ネット上で10年前から「オフィシャル・ラーメン・ホームページ」を運営し、370種類のオリジナルレシピを発表してきたマット・フィッシャーさん(29)=コロラド州=は、百福さんの発明について「利便性と価格に焦点を当て、新たな産業を作り上げた。偉大な食品をありがとう」と指摘する。
 めんをすする習慣がないアラブ圏でも出回っている。カイロのスーパーに並ぶのは、サウジアラビア企業が、中国系住民も多いインドネシア企業からライセンスを得て製造している「インドミー」という名の即席めんだ。イスラム教で禁忌されている豚肉のエキスは一切含まれていない。ビーフやチキンなどの風味があるが、めんをスープと一緒に食べる習慣がないため、焼きそばタイプが人気だ。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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