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★ペルセポリスⅠ、Ⅱ(著・マルジャン・サトラピ)

★ペルセポリスⅠ、Ⅱ(著・マルジャン・サトラピ)

1969年生まれのイラン人女性が描いたマンガ。
上巻「イランの少女マルジ」は、79年のイスラーム革命や、革命後に自由な暮らしがどんどん抑圧されていくさま、80年から始まったイランイラク戦争、14歳でイランを離れ、単身でオーストリアに行くまでを描き、下巻「マルジ、故郷に帰る」では、オーストラリアでの暮らしから、アイデンティティーの危機、失恋を経てイランに帰国、結婚、離婚し再びフランスに渡るまでを描いている。

すでに12カ国語に翻訳されている話題作、と聞いたのは随分と前で、昨年、上巻を読んだら思った以上によかったので、今回、下巻にも手を伸ばした次第。

一人の少女の目からみた「革命」や「革命後」は、とてもリアルで、身近で、一方、少女の両親が「自分たちの年で外国でやりなおすのは大変だけど、せめて娘には教育を与え、自由な外国で暮らす力を付けてやりたい」と願う思いはとても切実で。
上巻は、当時の革命前後の様子や空気を理解するのにはとてもわかりやすい1冊だし、それ以上の魅力をしっかり持っています。

でも、私は下巻のほうが好きかも。

上巻で、少女マルジは両親の愛のもとで庇護される存在。でも下巻では違う。
14歳でヨーロッパに渡り、独りぼっち。「戦争の国」から来た少女の目には、先鋭的な友だちが語る「アナーキズム」にも落胆するばかり。無理して髪型を変えたり、マリファナを吸ったり。
でも、
「とけ込もうと努力するほど、自分の文化から遠ざかり、両親やルーツを裏切り、誰か他人のゲームに翻弄されていく気がした」と書く。
失恋し、クスリにはまり、身も心もボロボロになって、最後は帰国するのだ。

ところが故郷でもマルジの心は癒されない。
イランイラク戦争の間、故郷を離れ、せっかくヨーロッパに渡ったのに、その間、なにも成し遂げられなかったという罪悪感、どんな友だちの中にいても逃れられない孤独感、結局、うつ状態になり、果てにはODで自殺未遂……。
この後、なかば自棄になって始めたエアロビクスにはまり、インストラクターになっちゃうあたりもすっごいリアリティー。
思うに、心はたいていの場合、健康な身体によって救われるのだ。

この10代後半から20代前半のマルジの心の変遷は、イランという国を知らなくても、ちゃんと理解でいるもののように思います。

20代になったマルジへの変わらぬ両親の賢明な愛にも感服。

絵も良いです。
スクリーントーンを一切使わず、黒ベタを多用し、肉厚な線で描いた絵が、むちゃくちゃ魅力的で、新鮮です。
かなりお勧め。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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