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ライト兄弟と戦闘機と (航空宇宙博物館・後編)

館内ではIMAXという名のシアターがあって、そこで3演目ほどの短い映画を上映していた。なんとなく、スリリングな飛行映像を大画面で楽しむ類のものだろうと、題目も見ずに、チケットを買ってしまった。これが間違いの始まり。

座席に座ったところで、演目のタイトルが、Fighter Pilot だと知った。
Fighter、って何だっけ。
あれれ、戦闘機、じゃなかった?
英語力不足はこういう時に困る。

映画が始まった。
まずは主人公の独白から。

「僕の祖父は第二次世界大戦で戦闘機乗りだった」

どうやら祖父にあこがれた若きパイロットの物語、らしい。
英語が聴き取れた部分だけでも、と、小声で息子に訳してやっていたら、話はこんな風に転がっていく。

「僕の祖父は、ミッドウェーにも、沖縄にも行った」
「そして、たくさんの勲章をもらった。僕にとってのヒーローだ」

息子に訳しつつ、嫌な展開だなあ、と思っていたら、息子がぼそっと問うてきた。

「たくさん勲章をもらった、って、それ、たくさん人を殺したってこと?」

うーん、鋭い。
答える言葉を持たない母ちゃんである。

映画はそのまま、米軍基地での本物の空中戦さながらの訓練風景へ。
延々と、本当に延々と、戦闘機の訓練映像が続くのだ。
訓練の中で想定上の敵の戦闘機を打ち落とし、「よし!」とガッツポーズを取る姿とか。
思わず、「つまらなくなったら、途中で出てもいいからね」と私のほうから言った。
きわめて好戦的な作りで、できれば子どもに見せたくない類の映像の数々。
息子も、「時間がもったいないし、もう出ようか」と言いだし、半時間ほどで途中退席してしまった。

アポロの月飛行やら、宇宙飛行士の暮らしぶりやら、なぜ物は空を飛べるのかという体験型の展示だとか、いっぱい親子で楽しんだけれど、その後も、なんだかずっと心が重かったのは、決して、親子で15ドルも払った映像を途中退席してしまったせいだけじゃなかったと思う。

息子には、ライト兄弟の伝記をかつて読み聞かせたことがある。
「空を飛びたい」という思いに忠実に、誠実に、けっしてあきらめずに夢に向かって駆け抜けたライト兄弟の話を、息子に知ってほしかったから。
一方で、今年の夏は、戦争や原爆の悲惨さを、親としてできうる限り語ってきたとも思う。

息子はライト兄弟と宇宙関係の展示には大喜びだったが、戦闘機の部屋は「怖いから見たくない」と足早にやり過ごした。
私自身、第二次世界大戦時に使われた戦闘機について、息子に説明する自信はなかった。
だから、ライト兄弟の話ばかり息子に話して聞かせてしまった。

だけど。
この博物館で、ライト兄弟の木製飛行機と、戦闘機と、宇宙ロケットが並んで展示されているのを見ると、飛行機が発明され、それが人を殺める道具として利用されていった歴史は一目瞭然。その流れを無視し、あるいはそれに目をつぶり、別々の物語のように子どもに語ってきたこともまた、うそなんだよなあ……。

この国で、この国の学校に通い、星条旗に向かって右手を左胸にあて、「忠誠の誓い(the Pledge of Allegiance)」を唱えることになる息子に、親の結論を押し付けるのではなく、長い時間をかけて物事を自分で考えることの大切さだけを伝えていくのって、どんな風にすればいいんだろう。

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お元気ですか?

アメリカでの生活はどうですか?まだ慣れるまでは大変だと思いますが、頑張って下さいね。私も22から半年間アメリカのアトランタに短期留学した経験があります。アメリカでの生活は最初戸惑いました。道も判らなかったので車で迷子になり、30分で帰宅できるところを5時間かかって帰宅した事もあります。(泣きたくなりました。)でも最後はこの街に住み続けたいと思うようになるくらい、アメリカが好きになりました。
太一は今、不安だと思います。しかし、言葉が伝わらない気持が不安から不満に早く変わるといいですね!
不安はエネルギーにはならないけど、不満はエネルギーになると思います。
私も頑張ります。住む場所は違うけど心は絆で繋がってると思います。
又、コメントしますね!
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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