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記事249◆秋空の下、口笛を、の記事

■掲載年月日 2006年10月25日
■秋空の下、軽やかに口笛
■変幻自在、どこでも音楽会


 口笛が今、静かなブームを呼んでいる。吹き方を教える教室が登場し、今年は初の全国大会も開かれた。晴れた秋空の下で美しい口笛を吹けたら、どんなにすてきだろう。楽器のいらない、一番身近でシンプルな“楽器”、口笛の世界を歩いた。

 「さあ、息を吸って。ほっぺを柔らかく」
 「高い音の時は唇を絞って」

 ここはヤマハミュージック横浜「大人の音楽レッスン」の一部屋。譜面立てがずらりと並び、20~60代の男女10人が練習中だ。
 見た目は極めて地味である。動きがない。イスに座っているだけ。中には「考える人」のポーズで吹き続ける男性もいる。楽器もなければ、手足も動かさない。カメラマンが「写真、難しいです……」とうめく。確かに、写真だけでは演奏中と分からないかも。
 しかし、動きはないが、部屋に満ちる口笛の音は変幻自在。みなで合奏する「遠き山に日は落ちて」のふるえるような高音を耳にし、不思議な気がした。目の前には一つの楽器もないのに、立派な管楽合奏みたい。

 習い始めて3年目の男性(51)は「子供が大学生になった途端、休日が暇になった。家内から『何かやれば』と勧められて……」。一方、夫婦で通う人も。夫(68)が「一緒にできる趣味がほしくてね」といえば、妻(64)も「主人に聞いてもらいながら練習しています」。
 口笛の魅力は、手軽さと音色にあるようだ。「40歳を目前に音楽がやりたくなったが僕は音符も読めず、楽器もできない。でも口笛なら、ね」と弁護士の男性(39)。「楽器がいらないからどこでも演奏できる。体の一部が楽器になるなんてすてきだわ」という会社員の女性(60)はなんと千葉県から片道2時間かけて通っている。

 社会人1年生の女性から定年退職した人まで、世代を超えて和気あいあい。彼らが目指すのは日本初の「口笛コーラス隊」の四部合奏だ。

 同教室の講師、高橋一眞(かずま)さん(67)は口笛講師歴10年。メディアに紹介されるたび、「こんな教室を待っていた」と参加者が増えるそうだ。健康ブームも一因らしい。「腹式呼吸だから健康にもいい。座ってできるジョギングのようなものです。口の周りの筋肉を鍛えるから、口元が引き締まり、表情も若返りますよ」。中高年には格好の趣味なのかも。

 口笛は吹くだけでなく吸っても音が出る。訓練すれば音域も3オクターブ近く出すことができ、思った以上にその表現は奥深い。「海辺や原っぱで1人口笛を吹いてごらんなさい。心が澄み、無限の安らぎを感じる。幼い日に口笛を吹いた日々が懐かしい人もいるはず。大量定年時代、口笛人口は増えるでしょうね」。高橋さんは言うのである。

       ♪

 口笛はかつて、あまり上品なものではなかった。魅力的な女性とすれ違った男たちが吹く「ヒュー」や、親にしかられた悪たれ坊主がごまかそうと吹く「ヒューヒューヒュー」。ところがこの手の口笛、めっきり聞かなくなった。今やテレビドラマや漫画に残るだけではないか。そういえば「夜口笛を吹くと蛇が出る」という言い伝えも聞かなくなって久しい。

 一方、音楽としての口笛は、定年目前の団塊世代がまだ子どもだった昭和30年代に一世を風靡(ふうび)した。坂本九の「上を向いて歩こう」が大ヒット。みなが口笛のパートを一生懸命に練習した。米国映画の挿入曲「史上最大の作戦のマーチ」や「クワイ河マーチ」なんていうのもあった。今、口笛を吹くと懐かしい気持ちになるのは、忘れかけた思い出がよみがえるからかもしれない。

 口笛の教室が増えてきたのはここ数年のこと。02年には、サザンオールスターズの関口和之さんのウクレレと、俳優の竹中直人さんの口笛で全曲作ったアルバム「口笛とウクレレ」が話題になった。「実数は未公表ですが、息の長い作品。4年前の発売時の倍近い枚数が今までにじわじわと売れてきた。珍しい現象です」(ビクターエンタテインメント広報担当)という。

 そして今年はとうとう、初の口笛全国大会が開催された。

       ♪

 全国大会の旗振り役は、「口笛音楽文化の構築」を目指すプロ奏者、もくまさあきさん(64)だ。個人のホームページで参加を呼びかけただけだったのに、なぜか青森から広島まで約100人がテープ審査に応募した。30人に絞って昨年10月に予選を行い、さらに選ばれた10人が今年3月の全国大会に出場。第2回全国大会は来年秋とまだまだ先だが、すでに問い合わせがくるという。

 もくさん自身がプロの口笛奏者になったきっかけは、飛び込み参加した92年の米国の口笛世界大会。世界中の口笛愛好家たちが集まる真剣勝負だ。大好評だったのに気をよくして、00年、正式にエントリーし、ポピュラー部門で見事2位入賞を果たした。

 ところで、口笛教室などなかった時代、もくさんは「世界2位」の技術をいったいどこで磨いたのか。「実は、会社勤めの30年間、ずっと営業マンをやってましてね。宴会部長として口笛で場を盛り上げているうち、上手になっちゃった」。そういえば横浜教室講師の高橋さんも「会社員時代にスナックで古賀政男の『影を慕いて』を口笛で吹いたらママに大受け。それから接待カラオケで演奏するようになった」と言っていたっけ。

 今、この記事を読んでるアナタも近い将来、口笛コンサートを開催してるかも?


◇個性出やすい「楽器」
--動物ものまね・江戸家小猫さんのお話

 コオロギやスズムシなどの秋の虫や鳥のさえずりの模写に口笛は欠かせない存在です。例えばコオロギが羽をこすり合わせる音。あれは吸って口笛の音を出しそれを上あごに当てて音を転がして出しています。
 僕たち団塊世代は、誰も結構口笛が得意です。子供時代、めんこ同様に口笛は男の子の遊びでしたから。学校帰りなんかによく吹いたものです。特に僕にとって口笛は家業ですから。友達が「クワイ河マーチ」なんかを練習する横で、おやじ(江戸家猫八さん)に習った「吸う口笛」をよく練習しました。コオロギの音を出せたのは確か、小学6年生の時だったと思います。
 口笛の魅力は、歌声の音域よりもはるかに高い音を出せること。低い声の男性でも美しい高音を出せるのは、声帯を使わず、口を楽器のように使って出す音だからです。また、口笛は音に個性が出やすい「楽器」。口の形は一人ひとり違うから。吹けるようになってから、音に自分の持ち味を出せるまでの奥深さが最大の魅力だと思います。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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