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記事238◆森昌子さん再デビューでインタビュー

□掲載年月日 2006年06月07日
□森昌子さん、20年ぶり再デビュー
□今、心から歌いたい
□結婚、育児、離婚を体験し私は強くなった。


 森昌子さん(47)が7日、新曲「バラ色の未来」で20年ぶりに「再デビュー」した。結婚、出産、離婚、そして父の死。さまざまな経験を乗り越えた今、かつての「天才少女」は何を歌うのか。

■新人歌手みたいに

 レコード会社の会議室で、青いスーツ姿の昌子さんは新人歌手のように背筋をピンと伸ばして言った。「昔の私には『優等生の森昌子』というイメージが重く苦しかった。歌いたいのではなく、ただ歌わされているだけの気がして、歌手をやめたかった。いつも自分探しをしてました」

 意外な告白だった。「せんせい」でデビューしたころから歌唱力は抜群。「天才少女」と呼ばれ、NHK紅白歌合戦にも15歳で最年少出場(当時)を果たし、引退前には司会やトリも務めた。まさかあの活躍の日々を、「歌わされていただけ」と語るなんて。
 昌子さんは続けた。「この年になって初めて私、自分の意思で歌う喜びに気付きました。だから『復帰』ではなく『再デビュー』。一からのスタート。過去の同じ場所に戻るための『復帰』ではないんです」。ふっきれた笑顔だった。

■穏やかな歌声

 実はこのインタビューの直前、私は7日発売の「バラ色の未来」を聴いた。驚き、少々落胆もした。引退前の「越冬つばめ」や「哀(かな)しみ本線 日本海」の切なく凍えるような歌声を期待していたから。しかし、新曲CDの昌子さんの声は、昔とは全然違った。ただ穏やかで、柔らかく、まるい。

 かつて「もしも死んだら泣いてくれますか」と悲恋を歌った人が、「バラ色の未来があるから」と明るく歌っている。離婚騒動で傷つき、昨年の今ごろは人の視線が怖くて家から出られなかったというのに。この歌声の穏やかさは何なのだろう?

 新曲を作詞した作家、なかにし礼さん(67)が、レコーディング秘話を明かしてくれた。「彼女は初め、昔と同じ歌い方で歌おうとしたのです。僕は違うと言いました。『20年間歌から離れていたことを認め、過去を捨てて目の前にある新しい歌に向かい合ってほしい』と。再び歌い出した彼女の声はとても素直になっていました」

 そして、もう一つ。「彼女には眉間(みけん)にしわを寄せ、悲しい顔で歌う癖がある。おそらく子供時代から上手に歌おうと必死に頑張ってきたのでしょうね。僕は言った。『バラ色の未来なんだ。心からの笑顔で歌ってごらん』。すると、驚きましたね。笑顔で歌った彼女の歌声には優しさが満ちていったのです。歌は毎日練習すればうまくなるというものではない。結婚し、子育てし、離婚してうまくなる歌もあるのです」

 昌子さん自身はこう振り返る。「先生の『笑って』という言葉が『もう何も格好つけることはないんだよ』と聞こえた気がしました。その瞬間、心が楽になって、生まれて初めて素顔の自分のままで歌えた気がしました。歌っていて『楽しい』と思えたんです」

■「ママ、歌ったら」

 昌子さん自身の歌の記憶は3、4歳にさかのぼる。歌手志望だった父親に毎晩、アイスクリームの土産と交換に流行歌を歌わされた。親せきに連れて行かれた人気テレビ番組「スター誕生」を勝ち抜き、13歳でデビューした。しかし、歌手である自分への違和感がぬぐえず、「歌わされているだけ」という思いは消えなかった。
 11歳年上の森進一さん(58)に恋したのも「おまえ、本当は歌をやめたいんだろう?」と見抜かれたからだ。「初めて本当の自分を見つけてくれた気がして、うれしかった」。それほどに孤独だったのだ。

 結婚と同時に歌を捨てた。家で歌を口ずさむこともなかった。テレビの懐メロ番組で自分の映像が流れそうになると、急いでスイッチを切った。息子に見せたくなかったし、自分も見たくなかった。「歌は結婚生活に必要ないものでした」

 そんな昌子さんが今回再び歌う決心をしたのは、息子たちのお陰だ。一時は心身を病み、パニック発作にも苦しんでいた昌子さんが、昨年3月の離婚から半年を経て元気を取り戻し始めたころ、18、16、12歳の3人の息子たちは突然こう言った。
 「ママ、そろそろ歌ってもいいんじゃないの?」「だってママには歌しかないじゃん」
 母親が歌う姿など見たこともないはずの息子たちの言葉に、昌子さんは驚いた。息子たちに背中を押されるように「歌」と向かい合った瞬間、「歌おう」と素直に思えた。「初めは『生活のため』なんて言ってましたが、今は違う。私が歌いたいんです。生まれて初めて心から」

■自然体でいい

 毎朝6時に起き、息子の弁当を作る。午前中に家事を終えてからが、「歌手・森昌子」の仕事時間だ。「実は昔の自分と比べられるのがとても怖かった。でも今は開き直りました。年を重ねたありのままの私を見てもらえばいい、って」
 再デビューが決まって以来、買い物先のスーパーで中高年女性に呼び止められることが増えた。女性たちは「実は私、主人と離婚して……」「子供を抱えて頑張ってます」などと打ち明け、「だから昌子さんも頑張って!」と手を握り締めてくる。昌子さんはそのたびに思う。「私には歌があるから恵まれている。重いものを抱えて生きる女性たちのためにも歌いたい」

 結婚時代には絶対に聴かなかった昔の自分のCDも、歌詞を覚えるために繰り返し聴いている。「昔のようには歌えません。昔にかなわないのは、何より若さ。声の張り。肌の張り。でもね、昔の自分に負けないものもあるから大丈夫」

 それは何か。「結婚生活や子育て、そして離婚を体験し、私は強くなった。もう『優等生』のイメージはいらない。自然体でいい。昔のように歌えなくても、年を重ねた今の私だから歌える歌がきっとある」

 インタビューの最後に、人生の「再デビュー」に挑んでいる人々へのメッセージを頼んだら、昌子さんは「重い質問ですねえ」と苦笑した後、自分に言い聞かせるみたいに言った。
 「あきらめないで。そして、負けないで……」

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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