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記事224◆深淵なるトイレ掃除の世界、の記事

□掲載年月日 2006年01月31日
□トイレ磨けば心輝く
□会社で早朝掃除、創業来45年の哲学

 45年間、掃除の道を極め「トイレ掃除で学校も社会も変わる」と説く人がいる。カー用品の全国チェーン店を一代で築いた鍵山秀三郎さん(72)だ。なぜ今、掃除なのか?

■素手でゴミ分別

 朝7時前。スーツ姿の男たちが自動車用品卸売販売のイエローハット本社(東京都目黒区)に次々と吸い込まれていく。始業時間は8時50分だから、2時間も早い出勤だ。数分後、約30人の社員が再び建物の外に現れた。今度は長靴にジャンパー姿。腰からポリ袋を下げている。いよいよ、同社恒例の早朝掃除の始まりである。
 単にほうきで掃くだけではない。本格的である。歩道の排水溝の鉄格子を外し、たまった枯れ葉やゴミをすくい上げる。汚水混じりの枯れ葉やゴミを、社員が素手で分別する。寒さにかじかむ手が赤い。
 ゴミを除いた枯れ葉は近所の公園で積んで堆肥(たいひ)に。拾った空き缶やペットボトルは水洗いし、つぶして回収業者へ。段ボールも拾ってきてはつぶし、重ねて縛る。自分のゴミも他人のゴミも分け隔てなく分別し、リサイクル。徹底している。

 排水溝に上半身を突っ込み、社員の先頭切ってゴミと格闘していたのが、同社創業者で現在は相談役の鍵山さんだ。「きれいになるでしょう?」。排水溝をのぞき込んでは、実に幸せそうに目を細め、笑う。
 会社を中心に東西2キロ、南北300メートルもの範囲を、毎朝少しずつ順番に掃除する。社員は自由参加で手当も付かない。それでも、本社勤務の約200人のうち数十人が参加する。早朝掃除の社風を望んで入社する社員もいるという。毎朝6時に出勤し、掃除に参加する男性社員(67)は「掃除すると無の境地になり、ストレスが消える。体力も付く。早朝掃除のお陰で何の運動もしていないのに、体のどこも悪くないんです」。

■最初は1人で

 鍵山さんの掃除は会社創業の1961年、独りぼっちのトイレ掃除から始まった。誰より早く出社し、素手に素足で便器を磨く社長に、最初は社員も戸惑った。しかし10年を過ぎたころから手伝う社員が増え始め、20年を過ぎると数十人の社員で会社の外も掃除するのが定着。うわさを聞いた他の企業が掃除研修に来るほどになった。会社も成長を続け、今や海外を含めて500店舗以上を持つチェーン店に。鍵山さんは「成功は掃除のお陰」と信じて疑わない。

 では、なぜトイレ掃除なのか。鍵山さんは「人の嫌がるトイレを掃除することで、謙虚になれる、気付く人になれる、感動の心をはぐくむ、感謝の心が芽生える、心を磨く」と五つの効能を説く。「心を取り出して磨くことはできないが、代わりに目の前のモノを磨くことで心を磨くことができる」とも。こうなると掃除というより哲学である。

 93年には、「掃除哲学」に感動した有志が「日本を美しくする会」を結成し、全国の学校や街を掃除する活動を始めた。国内にとどまらず、ブラジルや中国などでも「素手でトイレ掃除」を披露した。現在は全都道府県に支部を持ち、年間の掃除参加者は延べ1万人近いという。
 熱狂的な支持の一方、反発もなくはない。ゴミ集積所のゴミの分別をやり直していて、住民らに「他人のゴミ袋を開けるな」と文句を言われたり、「道路使用許可を得ていない」とパトカーを呼ばれたこともある。

 それでも鍵山さんは暑い日も寒い日も掃除をやめない。「今やめたら昨日までの努力が無駄になる。捨てて惜しくないような努力では決してなかったですから」。昨年出版した本の書名は「掃除道」(PHP研究所)。まさに45年間の長い道のりだったのだ。

 この「掃除哲学」が今、教育現場でにわかに注目を浴びている。トイレ掃除で学校が変わる、というのである。鍵山さんがトイレを掃除した学校は400校を超え、今年もすでに約40校に招かれている。「最初は掃除を嫌がる生徒も、教師やボランティアの大人が素手に素足で掃除する姿を見ると、参加する。いつの間にか夢中で便器を磨き、便器が輝くころには子供たちの目も輝いている。子供は大人よりずっと変わるのが早いです」と鍵山さん。

 登下校を警察官が見守らねばならないほど荒れていた高校で7年ぶりに体育祭が復活したり、退学者が激減したり、トイレ掃除で学校が変わる姿を鍵山さんは数多く見てきたという。

 学校だけではない。「日本を美しくする会」は2年半前から新宿で月1回の掃除をしている。新宿東口商店街振興組合の安田眞一さんは「以前は排水溝にヘドロがたまり、汚臭の発生源となっていた。掃除のお陰で街の汚臭が消えました」と語る。「歌舞伎町では掃除を始めて以降、犯罪件数も減ったそうです」と鍵山さん。「掃除力」は計り知れないのである。

■道具はきれいに

 ところで、この実践を家庭の掃除に生かす方法はないものか。鍵山さんの助言は「道具をきちんとそろえ、道具の置き場を決め、工夫しながら掃除すること」。早速、同社の掃除道具置き場を見せてもらって驚いた。きれいに洗ったほうきやスコップが定位置にずらりとつり下げられ、ホームセンターの売り場に並ぶ新品のようだ。
 「道具が汚れていたり、そろっていないと掃除をする気がそがれます。また、範囲を区切って毎日徹底的に磨くことで、汚いところときれいなところの差がはっきりし、掃除が嫌いな人でも汚いところを放っておけなくなります」と鍵山さん。

 掃除は苦手で、おまけに大嫌いな私だけど、まずは掃除道具の掃除から始めてみようか。
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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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