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記事219◆セイコガニを食べよう、の記事

新聞掲載後、「私も食べたい!」「どこで取り寄せられるのか」など問い合わせが殺到した記事です。
やはり、おいしいものは誰でも好きですものね。

■掲載年月日 2005年12月14日
■カニを味わう
■珠玉の外子、内子とみそ…セイコガニ
■意外な安さに、じわり喜び


 冬の風物詩、ズワイガニの季節である。越前ガニや松葉ガニといった主役の陰で、あまり知られていない小さなカニがいる。ズワイのメス、セイコガニ。開高健さんがこよなく愛したというこのカニを、とびきりおいしく食べる方法を探った。

□■海の宝石箱

 ズワイガニは水揚げされる地域によって呼称が違う。北陸では「越前ガニ」、山陰では「松葉ガニ」と呼ぶ。これらはいずれもオス。一方、メスはオスよりはるかに小さく、甲羅の幅も10センチ足らず。福井県ではセイコガニやセコガニ、石川県ではコウバコガニなどと呼ばれる。「セイコ」は「背に子(卵)」から名付けられたといわれている。ズワイやタラバが足のカニ肉とカニみそを楽しむものなら、セイコで一番うまいのは卵(外子)、オレンジ色の卵巣(内子)、そしてカニみそだ。

 オスに比べて値段もずっと安い。福井県の大手卸売業者「福井中央魚市」の担当者によると、「オスは浜値で1キロものが1杯2万~2万5000円。ところがメスは大きいものでも1500~2000円。小さいのなら400円くらい」。これなら庶民の口にも入りそうだ。
 このカニを愛したのが開高健さん。サントリーの広報誌「サントリー・グルメ」第1号に「越前ガニ」のタイトルでこんな文章を残している。

 <雄のカニは足を食べるが、雌のほうは甲羅の中身を食べる。それはさながら海の宝石箱である。丹念にほぐしていくと、赤くてモチモチしたのや、白くてベロベロしたのや、暗赤色の卵や、緑いろの“味噌”や、なおあれがあり、なおこれがある。これをどんぶり鉢でやってごらんなさい。モチモチやベロベロをひとくちやるたびに辛口をひとくちやるのである。脆美、繊鋭、豊満、精微。この雌が雄にくらべるとバカみたいに値が安いのはどういうわけかと怪しみ、かつ、よろこびたくなる>

 開高さんが通い詰めた福井県越前町の老舗旅館「こばせ」の主人、長谷政志さんは懐かしそうに語る。「1965年でしたか。ベトナム戦争から命からがら帰国した開高先生がこちらに来られました。先生はセイコガニを『海の宝石箱』と呼んでおられましたので、私、『今夜は手元が狂って宝石箱をひっくり返してしまいました』と差し上げたのが今の『開高丼』です」

 炊きたての白いご飯にセイコガニのみそや卵をたっぷりのせて、しょうゆをかけて食べる。長谷さんが開高さんに差し出した丼には、なんと25杯分のカニを使ったという。今でもこの宿では約7杯のセイコガニで作った4~5人用の「開高丼」(1万円)が人気だ。

□■バブルの後遺症

 ズワイガニが水揚げされる地方以外で、セイコガニを味わうにはどうすればいいのか。東京の市場にはほとんど出回らない。そもそも最近は、福井の地元でも食べ方を知らない若い人が増えているという。「バブルの後遺症です。地元ではかつて子供がおやつ代わりに食べたものですが、バブルで値段が暴騰し、浜値で1杯4000円ぐらいまで跳ね上がった。オスの越前ガニが5万も10万もした時代です。あれ以降、家庭でセイコガニを食べる習慣が減ってしまった」(福井中央魚市)という。もったいない話だ。

 東京でこの「海の宝石箱」を食べるには主に二つの手がある。一つは越前料理を食べさせる店に行くこと。もう一つは、通信販売である。最近はインターネットを使って1杯1000~2000円で取り寄せられるようになった。

□■ネット注文も

 試しにネットで注文してみた。一部足が折れた格安のものが6杯6040円(送料込み)。数日後には氷詰めのゆでガニがクール宅配便で届いた。
 まずは、腹の部分を開く。赤黒い卵がたっぷり。これが外子だ。プチプチとした食感がたまらない。尻の付け根にあるオレンジ色の内子は味も最高なので食べ忘れないこと。次は甲羅を尻の方からはがす。甲羅の口の部分にあるくちばしを外側から押すように外す。くちばしについたカニみそを上手に吸い出す。

 甲羅の中身をきれいに食べたら、次はいよいよ本体部分。深緑色のカニみそと、オレンジ色の内子が混じり合う、セイコガニの真骨頂だ。カニの両足を左右の手に持ち、縦に半分に割って、中身にしゃぶりつく。足や足の付け根に入ったカニ肉はハサミや包丁などを使って食べる。冷凍ものとは違う、カニ肉の食感もうれしい。

 次は、炊きたてのご飯に内子やカニみそをのせてみた。小さい茶わんながら「開高丼」である。しょうゆをタラッとかけ、ガッガッとかき込む。濃厚な内子やみそが米の一粒一粒にまとわりつき、口の中にぱっと広がる。これは確かに、うまい。

□■最後はスープまで

 食べ方を教えてくれた福井県に住む親類は「セイコガニで一番うまいのは内子とカニみそ。僕らの家族は細い足のカニ肉や外子は捨ててしまう」という。なんともったいない話。地元の人はそれでいいが、東京まで取り寄せた者としては、そうはいかない。食べ終わったカニの殻はオーブンでこげないよう軽く焼いて粗くつぶし、ショウガや青ネギを加えてスープを取る。カニのだしはみそ汁やおじやに最高。我が家では緑豆春雨をスープで炒め煮するのが人気だ。

 セイコガニは、オスの越前ガニより漁期が短い。オスもメスも11月6日解禁だが、オスは3月20日まで、メスは産卵保護のため1月10日まで。取り寄せるなら今のうちというわけ。
 年の暮れ、家族で「海の宝石箱」を味わってみては?
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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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