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記事209◆人はなぜ夕焼けを見ると切なくなるのか、の記事

「積年のフシギ」という週1回の連載がありました。毎回各記者がテーマを選んで、「フシギ」に挑戦するのです。
ついつい、ふざけて 「人はなぜ夕焼けを見ると切なくなるのか」というテーマを選んでしまったせいで、えらく苦労した記事です。

■掲載年月日 2005年09月29日
■積年のフシギ
■夕焼け


 秋は夕暮れ。清少納言は枕草子にそう書いた。空が高くなる秋は夕焼けが美しい季節だ。ところで、なぜ夕焼けはこんなにも人の胸を切なくさせるのだろうか。【小国綾子】

 夕焼けは、切なさや悲しみと分かちがたい関係にある。
 北原白秋は「なんでこの身が悲しかろ 空に真赤な雲のいろ」と書いた。
 フォークグループNSPの74年のヒット曲はずばり「夕暮れ時はさびしそう」。
 「暮れなずむ町の光と影の中」で始まるテレビドラマ「3年B組金八先生」のテーマ曲「贈る言葉」では、武田鉄矢さんが「涙かれるまで 泣くほうがいい」と歌う。
 さらに吉田拓郎さんの「落陽」では、苫小牧発仙台行きフェリーでサイコロ二つを振れば、「また振り出しに戻る旅に陽が沈んでいく」。
 ああ、切ない。

 しかし、加山雄三さんのヒット曲「君といつまでも」となるとだいぶ事情が変わる。二人を夕闇が包む窓辺で「しあわせだなあ」である。明日を信じられる2人にとって、夕焼けは「幸せ」の色なのだ。

 夕日は「祈り」でもある。浄土思想では「西方浄土」といって夕日のかなたに「浄土」の存在を信じ、夕日を拝んだ。

 夕焼けに向かって走れば誰にも負けない青春の巨匠、森田健作さんにも聞いた。「僕は太陽が大好き。朝日を見れば『よーしやるぞ!』、夕焼けを見れば『バカヤロー』。つい叫んだり走ったりしたくなりますね。特に真っ赤な夕焼けは人を素直にさせるんです」。この人も「切ない」とはちょっと違うようだ。

 困った。そこで「夕陽評論家」を名乗ってすでに四半世紀、という油井昌由樹さんを訪ねた。日本だけでなく世界68カ国の夕日を見てきたという。

 夕焼けは切ないですよね?

 ところが、である。油井さんの夕焼けのイメージは、なんと「連帯感」。「『夕焼けがきれいだね』と語り合う相手との連帯感はもちろん、一人ぼっちで夕焼けを見上げたとしても、『3時間後に、地球上のどこかで、別の国の誰かがこの夕焼けに感動するのだろう』と不思議な連帯感を感じるんです」

 夕焼けが生む人の感情とは、こうも多種多様だったのか。

 ではここで、夕焼けの仕組みを学んでおこう。気象エッセイストの倉嶋厚さんによると、夕焼けは光の散乱によって起こる。朝日や夕日の光は大気に斜めに差し込むため、大気を通過する距離が長くなる。散乱しやすい青系統の光は途中でなくなり、残った赤系統の光が地平線近くの空で散乱するので、空が赤く染まるわけだ。夕焼けの美しさが最高潮に達するのは「太陽が地平線から3~4度下がった時、つまり日没後15~20分ぐらいの時。紅黄色の空が弧状に広がり、その上空の空が紫色、そしてバラ色へと変わる」と倉嶋さんは言う。

 倉嶋さんから「夕轟(ゆうとどろ)き」という言葉を教わった。「二つの意味があって、一つは夕方、どこからともなく物音が騒がしく聞こえるという意味。もう一つは、恋心などのために夕暮れになると胸が騒ぐことです」。夕焼け時の物思いを表す言葉も、ちゃんと存在するのだ。

 日本色彩研究所にも聞いてみた。研究第1部の名取和幸課長によると、人は昼間、1000万種類もの色を識別できるという。「ところが日が暮れるにしたがって識別できる色数は減っていく。最初に見えなくなる色が赤です」

 赤は不思議な色で、色による連想を尋ねた調査でも、人に最も多くのイメージを連想させたのが赤だったそうだ。「赤は躍動感や生命のイメージであり、火のイメージでもある。まさに色の王様。昼間は一番目立つ赤色が、夕暮れ時には真っ先に消えていく。地上から赤みが消え、青と黒だけの世界になる途中、空にだけ赤い色が現れる。これが夕焼けです。人の心を強く揺り動かす秘密はこんなところにあるのかも」と、名取さんは分析するのである。

 それが「切なさ」なのか他の感情かは別にして、夕焼けが人の心を揺り動かすことだけは間違いなさそうだ。油井さんは言う。「太陽は一つなのに、夕焼けの色や呼び起こされる感情は見る人の数だけ違う。これが夕焼けの一番の魅力です」

◇「小焼け」って何?

 「夕焼け」と切っても切れない言葉に「小焼け」がある。これは何なのだろう。
 「夕焼小焼(ゆうやけこやけ)のあかとんぼ」で始まる童謡「赤とんぼ」を作詞したのは三木露風。彼の故郷、兵庫県竜野市の文学資料館「霞城(かじょう)館」によると、「小焼け」の正体には諸説ある。「仲良しこよし」の「こよし」と同じで、歌の調子を整える言葉という説。空いっぱいに広がるのが「夕焼け」で「小焼け」はこぢんまりした夕焼け、という説。夕焼けが消える途中で一瞬、空が再び赤みを増す瞬間、という説もある。

 同館職員の里中さんは「この歌詞は象徴詩ですから、人それぞれに感じたままを受け止めるのが良いと思います」。

 油井さんもまた、「小焼け」のなぞに迫ろうとした一人だ。最初に「反対薄明ではないか」と考えた。反対薄明は東の空に見られる現象で、太陽が沈む直前、西から頭上の空を通って東に向かった赤系統の光が、東の地平線近くをオレンジ色に染めることをいう。この仮説を実証しようと、油井さんは童謡「夕焼け小焼け」を作詞した中村雨紅の故郷、東京都八王子市も訪れた。だが、歌詞にある「山のお寺の鐘が鳴る」の舞台といわれる寺の境内からは、肝心の東の空が見えなかったという。

 油井さんは最近、「小焼け」は実際の空の色ではないのかも、と考えるようになった。「例えば母親と『きれいだね』と手をつないで夕焼けを見上げた時、心の中に映る情景が『小焼け』ではないのかな」

 空には「夕焼け」。
 心に「小焼け」。
 心の「小焼け」に赤とんぼが飛ぶ秋である。
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ナース兼任グラドル 宮沢あいり

私も里中さくらが大好きなんです。もしよろしければぜひ私のサイトも遊びに来てください。
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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