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記事205◆連載「05年衆院選 劇場の外で」渋谷編

05年衆院選を前に、夕刊編集部で企画した連載が「劇場の外で」。それぞれの記者が、若者の渋谷、「勝ち組の街」六本木、おじさんの街新橋などを歩く、という趣向でした。一つ間違うと、ベタな企画になってしまうことが分かっているだけに、みな必死で取材した思い出深い記事です。

■掲載年月日 2005年09月05日
■05衆院選・劇場の外で
■渋谷 若者の街に見た「切実」

 この衆院選、「劇場型」らしい。でもその「劇場」を横目に歩いてみると――。

 空振りが続いていた。
 選挙ルポを書こうとJR渋谷駅のハチ公前にやってきた。目の前はスクランブル交差点。今も昔も選挙演説のメッカである。しかし、なぜか公示の8月30日、選挙演説はなく、たむろする若者からも選挙談議は聞こえてこない。公示日の渋谷は、国会のドタバタ劇とはまるきり無縁に見えるのだった。

 まずは今風の女性を狙って声をかけた。「選挙についてご意見を」。しかし「いいっす」と無視を決め込まれておしまい。おまけに20代と信じて声を掛けた女性は、ことごとく10代なのだ。

 「コギャル」から「コ」だけ取り除いたような容姿の女性2人が目に入った。オレンジ色の大きなイヤリングに、緑色のコンタクトレンズ。20歳の専門学校生という。派手な格好にたじたじになり、「選挙なんて興味ないよねえ」とつい卑屈に尋ねてしまう。ところが緑の瞳の彼女はこういった。「すごく選挙に興味あります。広島6区とか。亀井さんも堀江さんも嫌い。ノリで有名人に投票するのは、いやなんです」。なんだか骨のある答え。それではお目当ての候補は? 「広島6区の伊藤さんって男性」。ところであなたの小選挙区は?

 「うーん。田園調布だから神奈川何区とかかな?」。いえいえ東京3区です。

 終始こんな具合で、テレビのワイドショーの政治ネタをおもしろがっているだけにみえた彼女だったが、政治の何に関心があるかを尋ねた瞬間、真顔になったから驚いた。「私たちの世代に一番切実なのはお金の問題。つまり国の借金。こればかりは友だちともよく話すの。あとは何だっけ? 年取った時にもらうお金……」

 「年金」という言葉もうろ覚えの彼女たちだが、上の世代がこしらえた借金を自分たちが肩代わりさせられることだけはちゃんと知っている。右肩下がりの日本しか知らない世代の切実さに触れた気がした。

 若ければ若いほど投票率が低いかというと、実はそうでもない。
 東京都選管によると、03年衆院選の推定投票率が最も高い世代は60代で77%を超える。一方、20代では35%止まり。30代でも48%に過ぎない。しかし20代を「20歳」「21~24歳」「25~29歳」に分類すると、推定投票率はそれぞれ順に40・22%、33・28%、35・88%。つまり「20歳」が最も高い。

 単に「記念投票」を反映した結果とも思えない。なぜなら80年までは「20歳」より「25~29歳」のほうが投票率が高かったのだ。しかし、80~90年代で逆転が始まり、95年以降は「20歳」が「25~29歳」の投票率を明らかに上回るようになった。同選管も「あくまで推定投票率」と前置きし、「意外とここ数年、新成人の投票率だけは高いんです」と指摘する。

 そういえば緑の瞳の子も20歳。「投票には行く」と言ったっけ。ひとたび「清き一票」を投じた新成人が、投票所から遠のいてしまうのはなぜだろう。

■低投票率のわけ

 今度は男の子に声をかけた。駅前で人目も気にせず口を使ってビート音を出す「ヒューマンビートボックス」に興じている。
 最年少は19歳。「成人したら投票に行く。志を持って政治家になったはずなのに、途中で妥協し、金にまみれているヤツらを選挙でぶっつぶす」と意気込む。一方、21歳の大学4年生は「選挙権を得てからは、小泉改革に期待して自民党に投票してきたけど、今回は投票に行くべきか迷う。郵政民営化がよくわからない。知らないまま一票を投じるのは無責任だから」。

 別のフリーターの青年(21)も成人した直後は投票したが、その後は行っていない。「記念投票?」と尋ねると、ムッとして否定した。「違うよ。政治がわかりづらいんだ。特に郵政民営化は良いのか悪いのかちっとも分からない。だから投票に行くか考え中」

 この「知らないままに投票するのは無責任」論は、何人もの若者から聞かされた。低投票率の背景にあるのは案外、政治的無関心ばかりではないのかもしれない。

■「むかつく!」

 2日後の1日、ハチ公前広場はようやく選挙にわいた。選挙カーの上で地元選挙区候補の演説が始まると、動員組の支持者が人波を築き、足を止める中高年も加わった。渋谷駅前の平均年齢が一気に20歳ほど上がる。見渡せば、ちらほらと若者たちもカメラ付き携帯電話を手に腕を伸ばしている。

 同じ広場では、若者グループが青いのぼりを立てていた。選挙権年齢の引き下げを求める若者主体のNPO法人「Rights(ライツ)」が、10代の子供たちに模擬投票を呼びかけているのだ。04年の参院選時は全国約4800人の未成年が模擬投票に参加した。「20歳になっていきなり『投票を』と呼びかけても遅い。10代での模擬投票体験をきっかけにしてほしい」と林常務理事(29)は期待する。

 ちょうど15歳の女子高生2人組が模擬投票の投票用紙に記入していた。別の新聞記者が取材中だ。「選挙に関心ある?」「ぜんぜん」「成人したら投票する?」「行かなーい。面倒くさいし」

 つい横から割り込んだ。「でもさ」。日本の国や地方には今、750兆円を超える借金があるんだって。国民1人当たりだと約600万円。上の世代の作った借金を、あなたたち若者が背負わされることについてどう思う?

 「むかつく!」。

 2人は反射的に答えた。それならば、政治を変える一つの手段が投票なんだよ。少女たちはボソッとつぶやいた。「そう言われるとなあ。ちょっとは考えちゃう……」

 考えてよ。そして、いつか必ず投票してよ。

 無関心のようでそうでもなく、大人の政治に切実な思いや「わからなさ」を募らせる若者たち。前回の「自民党をぶっ壊す」の代わりに「郵政民営化」を叫ぶ小泉首相の声は、若者たちの胸にどんなふうに届くのだろう

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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