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記事183◆ニート対策最前線 ヤングジョブスポットを訪ねる

■掲載年月日 2005年02月01日
■ニート対策最前線 ヤングジョブスポットを訪ねる
■年間7万人が利用


 「ニート」という言葉に何を連想するだろう。学校にも行かず、仕事もせず、職業訓練中でもない若者たち。「甘えている」という大人も多いが、本当だろうか。ニート対策最前線として注目されている「ヤングジョブスポット」で考えた。

■適性がわからない

 空気が硬く張りつめていた。
 ここは東京・北千住の「ヤングジョブスポット」。独立行政法人「雇用・能力開発機構」が若者向けの就職相談や情報提供を行うため、全国16カ所に設けたうちの一つだ。この日は、地元のケーブルテレビのディレクター、由理さん(36)を招き、トークセッションを行っていた。
 「なぜ参加したのですか?」。由理さんに促され、ようやく11人の参加者が順々に語り始めた。「人と話すのが苦手で、もう少し話せるようになりたくて」「いろいろな人の話が聞きたかった」「カウンセラーに多くの人に会うよう言われたから」。表情はまだ硬い。
 「仕事選びに一番大事なのは何かな?」と再び由理さん。「好きなことを探すこと。でもそれが分からない」「好きな方面に就職口はないし」「自分の適性も分からない」。発言を重ねるうちに、若者たちの肩の力が抜けていく。

 由理さんはカラリと笑って言った。「適性検査より好きなことを大事にしていいんだよ。それが分からなければ、とりあえずやってみて決めたっていいんだよ」

 ■離転職者が6割超

 「ニート」と聞くと、多くの大人たちが「就職意欲もなく、親に寄生している若者たち」をイメージするのではないか。しかし、トークセッションに参加していた11人の若者はだいぶ違った。

 「今は学校事務をしています。でも充実感がない。転職を目指して夜間に大学で社会学を勉強中。何をやりたいかはまだ決まってません」(26歳女性)、「営業職を2年半やって、やりたいことと違うと思い、辞めた。去年はマスコミ各社を受験したがうまくいかなかった」(27歳男性)、「以前は雑誌編集をしていたが、結婚と同時に退職した。今はもう少し融通の利く仕事を探してます」(26歳女性)、「何をしたいのか自分でも分からない。今は短期アルバイト中。とにかく早く自立して、親の仕送りを切らないと申し訳ない」(23歳男性)
 無職の人、仕事中の人、それぞれ事情は違うが、誰もが仕事をしたい、あるいはしなければ、と真剣に考えていたのだった。

 全国16カ所の「ヤングジョブスポット」を年間7万人近い若者が利用する。北千住には03年10月に開かれた。利用者は1日平均15~16人で、男性が66%、女性が34%。就職経験を持たず、アルバイトもしていない人は全体のわずか3・1%に過ぎない。一方、実に67・1%が一度は就職したことのある離転職者だ。さらにフリーターが23・3%、今から熱心に通う学生も6・5%いる。

 「人間関係が苦手」「やりたいことが見つからない」と言う人が目立つ。北千住のヤングジョブスポットで相談を担当する同機構職員、狩野さん(36)によると、「上司とのやりとりで傷つくなど職場の人間関係につまずいて退職し、一度つまずいたゆえに次の一歩を踏み出せずに悩んでいる人が多い」という。

 ヤングジョブスポットはハローワークのように職業あっせんはしない。むしろ仕事探しの前に自分を見つめ、やりたいことを探す場所だ。
 壁には所狭しと利用者のメッセージが張られている。「悩み過ぎず、やりたいことをやるべきだと気付いた」「初対面だとうまく話せないが、ここでは話せた」「行動力が大事と知った」「もっと多くの人に出会いたい」「お互いに不安があることを話せて、安心できました」
 仕事以前の悩みがたくさんつづられていた。しかも、この場に来られる若者はむしろ元気な方だ。この場にも来られない、何倍もの「悩める若者」が今、街には大勢いるのだろう。

 部屋にはパソコンが6台。職業適性診断や500近い種類の仕事情報の検索ができる。個人面談にも乗ってくれる。履歴書の書き方も教えてくれる。

 しかし、ここでの一番人気はトークセッションだ。ゲストから仕事について生の話を聞ける。楽しいこともあればドロドロした嫌なことだってある。特に、仕事を辞めたくなった時にどうするかを、若者たちは聞きたがる。由理さんが「お酒を飲んだり絵本を読んで気分転換します」と語るのを、若者たちは律義にノートに書き留める。なんとまじめな子たちなんだろう。

 この日、セッションが終わっても、若者たちはなかなか帰ろうとしなかった。さっきまで「話すのが苦手」と言っていた彼らが、いつのまにか話し込んでいる。「悩む前に行動してみたい」「私はいつも受け身だったのかも」「人と会って話すことが大事と知った」。そんな感想を口々に語った。

 若者に交じって、ここの職員の狩野さんが熱っぽく語っているのを見つけた。「僕は漫画家になりたかった。でもどうしたらなれるかも分からず、結局、家族に勧められ、今の職場に就職した。だから、その時は何の積極性もなかった。ところが職場で先輩職員が必死で若者に就職先を探す姿を見たり、若者が就職の報告に来るのを見て、なんてすばらしい仕事だと心から思ったんだ」

 へえええ、と周囲の若者が目を丸くする。本当にやりたいことを見つけてから就職するもの、と思い込みがちな今の若者には、新鮮な話だったようだ。

 若者の就職支援がしたくて昨年、仕事のかたわらキャリアコンサルタントの資格も取ったという狩野さん。「世間の人は彼らを『ニート』とひとくくりにするけど、僕はここに来る人を『ニート』とひとくくりには呼びたくない」と強い口調で言った彼の気持ちが、私にも少し分かる気がした。

 「若者は甘えているだけ」と言う前に、大人にできることはまだあるのかもしれない。私たちは仕事の喜びを若者に自分の言葉で語ってきただろうか。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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