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記事173◆リストカット連載「あした、会えたら」6

■掲載年月日 2004年11月22日
■あした、会えたら:リストカットの子どもたち/6

□過去より明日を語ろう
□「夜回り先生」相談4万件


 「死にたい……っていうか今から死にます」
 「頑張って死んだら、ほめてくれますか」

 返信が追いつかない約1万件の電子メールをパソコン画面で開くと、こんな文字が見えた。手首の傷の写真も張り付けられている。
 元横浜市立定時制高教師、水谷修さん(48)は自宅の電話番号を添えて返信する。「水谷です。哀(かな)しいです。045・×××・××××」

 20年以上の教師生活を、非行少年や薬漬けの子供たちとかかわってきた。半生をつづった著書「夜回り先生」(サンクチュアリ出版)を2月に出版したことがリストカットとの出合いだ。
 自傷をテーマにした本でもなかったのに、5万件を超えた電子メールの相談の8割、4万件以上がリストカットやOD(処方薬の過剰摂取)に関するもので、ほとんどが中高生だった。

 「今恐ろしい勢いでリストカットが中高生の間に増えている。学校でも家庭でも理解も評価もしてもらえず、居場所がない。元気のある子は夜の街へ出て行くが、そうでない子は自分を責める。『私なんかが生きてていいの』と」

 行き場のない彼らの居場所になれば、と水谷さんはネット上に掲示板を開いた。一晩に数百件、多い時には1000件以上の書き込みがある。

 「眠れない。涙が出てきちゃうんだ」
 「そばにいるよ」
 「手をつないでてあげる」
 「いい夢を」

 子供たちは毎夜、ネット世界に居場所を求めてやってくる。
 懸念もあった。「『死にたい』と誰かが書くたび、悩みにみんなが共鳴し、負の連鎖が起きてしまう。居心地のよさゆえに、掲示板から現実の世界へと抜け出せない子も増えてきた」。悩んだ末、二つあった掲示板の一つを一時閉鎖した。

 水谷さん自身も中学1年から高校1年まで自傷していた。完ぺき主義で、しかし自信がなく、自分が許せなくなるたびナイフを握った。傷はいつしか「自分は他人とは違う」というアイデンティティーになった。今も前腕には白い傷が何本も残る。

 水谷さんは「切るな」と言わない。「リストカットすることで、パンパンになった心をどうにか抜いて生きている。無造作に『やめろ』というのは『死ね』に等しい。親は子供を抱きしめ、一緒に泣いてやってほしい。ほめてやってほしい。認めてやってほしい」
 相談への返信メールは3行、電話は5分までと決めている。「つらい話を聞いて受け入れてしまうのは危険でもある。過去ではなく、明日を語らせてやりたい」
 そんな水谷さんが返信メールに多用するフレーズがもう一つ。

 「他人に優しさを配ってごらん。変わるよ」

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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