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記事172◆リストカット連載「あした、会えたら」5

■掲載年月日 2004年11月20日
■あした、会えたら:リストカットの子どもたち/5

□親の虐待に深く傷つき
□欠かせない安息の場所

 何度か通った群馬県の赤城高原ホスピタルで、重い自傷に悩む数多くの20~30代の女性たちに出会った。主にアルコール・薬物依存や摂食障害、そのほかにも解離性同一性障害、境界性人格障害などで入院していた。親からの身体的、精神的虐待を受けた人がほとんどだった。「自傷者の約6割は被虐待経験者」という海外の報告に重なる現実がそこにはあった。

 14歳から上腕を切ってきた女性(29)は父親の暴力が絶えない家庭で育った。摂食障害、家庭内暴力、3年間の引きこもりの末、26歳の時ライターで肌を焼き始めた。
 両親から長く虐待を受け、中学生の時には父親から「死ね」「自殺しろ」と言われ続けた女性(26)は13歳でリストカットを始めた。「今も虐待のフラッシュバックが怖い。切ると落ち着く。血を見ると悲しみも怒りも癒やされる。切ることだけが楽しみだもの、やめる気はありません」

 21歳で摂食障害、23歳で自傷が始まったという女性(26)は、夜中に不安で泣いた時、タクシー運転手の父親から「おれは仕事で人の命を預かってんだ。黙れ!」と怒鳴られたことが忘れられない。「食べ吐きより、切って血を出す方が周囲の人も苦しいのを分かってくれる。私にとって痛みは快楽です」
 解離性同一性障害の女性(33)の腕の両面は多数の切り傷で洗濯板のように波打っている。幼いころから父や兄から性的暴力を受けてきた。母は「あんたは汚い」と娘の首を絞めた。優秀な看護師として集中治療室で働いていたが、23歳で自傷が始まった。虐待を再現するように、性器に鋭利なものを押し込んでは、自分を罰そうとした。

 39歳の女性もいた。20代はリストカット、30代で処方薬の一気飲みに移行した。子供ができない体質で、外出先で親子連れを見るたびOD(薬の過剰摂取)衝動が強くなる。母はアルコール依存で死亡。父との確執も大きく、今でも父の電話には出られない。
 年に2~3度、家事が手につかず、引きこもりがちになる。それがSOSの合図。すぐ彼女は病院で入院手続きを取る。年に数度の短期入院は、夫との大切な生活を守るために欠かせない安息の時だ。

 「虐待に限らず過干渉なども加えれば、この病院で自傷に悩む女性たちのほぼ全員が親子関係で深い傷を受けています」と竹村道夫院長は指摘する。怒りや悲しみを自傷以外の方法、つまり言葉で表現できるよう手助けをするには、感じたままを話しても安全な場所と相手を確保してあげないといけない。
 「彼女たちはずっとそれなしに生きてきたんですから」

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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