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記事169◆リストカット連載「あした、会えたら」2

■掲載年月日 2004年11月16日
■あした、会えたら:リストカットの子どもたち/2

□誰も知らない、深夜の私
□傷ついた肌、長袖で隠し

 「あの子、ハブられ(仲間はずれにされ)てる」。
 一人でトイレに行くだけで、そんなうわさが立つような中学校で、自分の腕をカッターで傷つけていることがばれたら……と不安が募る。

 「あー! その腕、リスカ? リストカットちゃうん?」
 「なんでやねん。犬にひっかかれただけ」
 「びっくりしたあ。リスカやったら、そんな人なん?と思うところやったわ」

 親友の言葉が心に刺さって抜けない。だから猛暑の夏にも、長袖のカーディガンを脱げなかった。

 サオリ(14)は大阪市内の中学3年生。クラスでは一番陽気な女子グループに属し、家庭科部では部長も務める。成績もそう悪くない。学校は好きだ。通知表には「誰とも仲良くできる」「正義感がある」と先生に書かれた。

 深夜、カッターで自分を傷つけるもう一人のサオリを誰も知らない。
 サオリと会ったのは、リストカットについて書いた私(記者)の記事を読んでメールをくれたのがきっかけだった。「虐待とか受けたことはないし、いじめられているわけでもない。なんで私は切っちゃうんだろうと悩んでいました」

 中学2年のとき、友達から借りた漫画でリストカットを知った。そのときはかわいそう、と思ったのに、数カ月後、実力テストの結果を母親になじられた夜、衝動的にカッターを腕に押しつけている自分がいた。刃を寝かせて押しつけただけなのに、なぜか、すっと心が静まった。
 中3になったころ、左腕の外側の肌をそっとカッターでひっかいたら、血がにじんだ。
 今は2週間に1度くらい。母親に成績のことで文句を言われたときや、休日に孤独を感じるとカッターナイフに手が伸びる。「お母さんが普通に怒るのはいいけど、わざとらしくため息をつかれるとたまらない。痛いんです。ここが……」。右手でぎゅうっと胸の辺りを握り締める。

 サオリは「死にたい」とも「消えたい」とも思わない。「意味があって生まれてきたんじゃない。意味を作るために生まれてきたんだ」。だから、「こんなに傷ついてる」って言いたいだけなのかなと思うときもある。

 リストカットは特別な子どもたちだけがするのではない。明るく快活に見える子にも確実に広がっている。医師やカウンセラーはもちろん、友達や家族にも相談したことがない、「素顔の見えない」子どもたちが、深夜にカッターを握る。

 最近、サオリは怖い夢を見る。公園を歩いていたら、全身自傷跡だらけの女の人が追いかけてくる夢。逃げようとする背中で、カッターの刃を出す音がカチカチと聞こえた。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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