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記事161◆懐かしい給食を食べに行く、の記事

■2004年09月02日
■「給食」が人気だって? 
■アルマイト製の食器で
■「懐かしさ」売る店、次々と


 「懐かしいもの」が人の心をつかむこの時代、昭和30、40年代の給食が人気らしい。アルマイト製の食器で給食を食べさせる店が増え、昔ながらの揚げパンを売る専門店も登場。給食の「懐かしさ」の正体を見極めたくて、給食を食べに出かけた。

◆鯨竜田揚げ1260円

 小学校時代、給食は苦手だった。鼻をつまんで飲んだ牛乳。カレーシチューに浮いていた肉の脂身。ほとんどトラウマである。「全部食べろ」と居残りを命じた先生の名前は今でもフルネームで言える。許せないし、忘れない。

 大人になっても給食を食べたがる人の気持ちを知りたくて、東京都台東区のレストラン「給食当番」に出かけた。

 驚いた。外は炎天下。平日の昼下がりなのに店内はほぼ満員。客たちはアルマイト製の食器を楽しげに抱えている。意外なことに客のほとんどが20代だ。若い身空で「懐かしーい」を連発している。
 写真入りのメニューを見た。「ソフトめん」は袋入りのまま皿に載っていた。まぼろしの「鯨の竜田揚げ」は1260円。「本当にまずかった脱脂粉乳(だっしふんにゅう)」(210円)まであった。これ、注文する人はいるのだろうか。

 取りあえず「給食セット」なるものを注文した。揚げパン、カレーシチュー、冷凍みかん。子供時代の給食のゴールデントリオだ。
 飲み物は牛乳とミルメークのコーヒー味にした。ミルメークは給食ファンの間では人気商品。主に粉末で、牛乳に混ぜればイチゴミルク味になったり、コーヒー牛乳味になったりする。これなら牛乳嫌いでも大丈夫。

 早速「給食セット」がやってきた。久しぶりに先割れスプーンとご対面だ。カレーシチューには生クリームときざみパセリがかけてある。ウソだ。給食はこんなにおしゃれじゃなかった。思わず動揺しながら、肉の脂身を探してしまった。ない。ほっとしたような、残念なような……。
 カレーシチューはとてもおいしく、それでいてちょっと懐かしい、妙に胸に染みる味だった。

◆脱脂粉乳を飲んだか

 でも実際、最近の給食はとてもおいしいらしい。メニューには郷土料理や国際色豊かな海外の料理が取り入れられ、バイキング方式などの取り組みも進む。
 給食は1889(明治22)年、山形県の小学校で貧しい家庭の子供におにぎりや漬物などを昼食に出したのが最初だとされている。戦後の1947年、米国から無償譲渡された脱脂粉乳で「ミルク給食」がスタートした。54年には学校給食法も制定された。
 地域差はあるが、脱脂粉乳は60年代後半、徐々に牛乳にとって代わられた。君は脱脂粉乳を飲んだことがあるか――が40代の思い出を二分しているわけだ。76年には米飯給食も登場。食器もアルマイト製からプラスチック製や磁器に変わった。

◆「初恋の彼女」のように

 「給食当番」店主の方伊儀(かたいぎ)さん(41)が店を開いたのは13年も前の話だ。コック修業10年の後、「よそで絶対に食べられない味」を模索した結果が給食だった。狙うは昭和30、40年の懐かしの味だ。「ホンモノの給食よりおいし過ぎるって? そりゃそうです。『初恋の彼女』と同じで少々美化させてます。おいしいけど懐かしい、そのギリギリの味を模索してきました」

 客は流行に敏感な20代が中心だが、誘い合わせてやってくる中高年のサラリーマンも多い。同窓会や会社の歓送迎会など団体客も目立つという。

 人気メニューの揚げパンについては、2年前から移動販売車による販売も始めた。フランチャイズ展開し、全国ですでに120台の販売車が走る。「揚げパンはめったに出なかったから、給食の中でも“黄金の味”なのでしょう」と方伊儀さん。

 「懐かしさ」がコンセプトのもんじゃ焼き屋「東京もんじゃ村」(八王子市)も6年前から給食メニューを開始。全国から「自宅に送ってほしい」と要望を受け、1年後にはチルドパックの給食メニューの通販も始めた。また今年春には横浜市に揚げパン専門店「給食のおばさん」も出店した。給食作り担当の田端(たばた)さん(40)は「誕生日や結婚記念日など特別な日のために注文する30~40代が増えています。アルマイト食器をほしがるのは圧倒的に40代の男性ですね」。

 大島食品工業(名古屋市)はミルメークの発売元。発売開始の67年以来、ずっと学校給食用一本でやってきた。ところが約10年前から給食ファンの大人たちの声に押され、ミルメークの市販も開始。今ではスーパーや生協など学校給食以外の販路が売り上げの半分を占めている。「まさかこんなに大人に売れるとは。予想してませんでした」(同社営業本部)という。

◆胸にしみるカレーシチューの味

 さて、給食セットである。
 食べ進むほどに、給食の暗い記憶より、えたいの知れぬ懐かしさのほうが勝ってくるから不思議だ。四半世紀ぶりに冷凍みかんの皮をむく。凍える指先の感覚がよみがえる。その瞬間、遠い記憶があふれだした。

 嫌なことばかりではなかった。
 鯨の竜田揚げもチーズかまぼこも好物だった。
 牛乳を飲む友達を笑わせるのは楽しかった。
 床じゅうを牛乳だらけにして先生に怒られた。
 夏の教室では、いつも誰かがマーガリンの銀紙包みを踏んづけ、転んだ。
 残したパンを持ち帰るせいでランドセルはコッペパンのにおいがした。
 母は硬くなったパンを粉にしてハンバーグをつくってくれた。
 牛乳をこっそり代わりに飲んでくれた男の子もいた。名前だって覚えている。牛乳の早飲みが得意な彼は、給食の時間だけヒーローだったっけ。

 食べ終わった時、何か大切なものを思い出した気がした。給食の記憶が少しだけ温かくなった。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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