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★ホエール・トーク (著 クリス・クラッチャー) 読後評

★ホエール・トーク (著 クリス・クラッチャー)

久しぶりに圧倒的なヤングアダルトを読んだ、という感じです。

主人公のT・Jは、スポーツ万能、成績優秀。ただ黒人と日系と白人の混血で、ドラッグに溺れた母親に捨てられ、白人夫婦に引き取られた過去を持つ。
心に渦巻く怒りと痛みが、人種差別主義者に会うたび、噴出する。
そんな彼が、ひょんなことから水泳チームを作る。集めた部員はそれぞれに色々なものを抱えてる。
そんなチームが……、というような話。

内容はあまりに重く、それなのに物語の勢いもものすごく、一気に読める。

日本で今大流行の「スポーツ青春小説」の一つの王道って、「弱小チームに、あるいは平凡なチームに、すごいヤツが入ってきて、周囲を巻き込み、勝利に向かって突っ走る。途中、キャラクターの際立った仲間たちやライバル同士がぶつかりあう、友情の物語」ってな感じなんですが。

翻って、この小説を見れば、まあ、上記の構図とまったく違うわけじゃあない。だけど、なんか伝わってくるものが、全然違うのでした。
どっちが良いとかじゃなく、ただただ、違うのでした。

この小説を読めば、思春期の子どもたちが自分の感情を持てあましつつも、大人への階段を一つひとつ上るために、何が必要なのかが、しみじみと分かる感じがします。

同世代の仲間。
親以外の、信頼できる大人。
何か打ち込めるもの。

T・Jがギリギリのところで相手を殴らず、こらえ、踏みとどまり、言葉で主張したり、相手に理解してもらえる範囲の行動で自分の主張を前面に押し出していく過程は、感動的です。

水泳部を作り、仲間を得て、チームの隊長のごとく仲間を守るために奔走し、時には、守るべきものを得たことで救われ、時には、守ってやらねばという傲慢さを仲間に指摘されたりもしながら、彼は成長していきます。

たぶんこの小説が、いわゆる日本ではやりの「スポーツ青春小説」と明らかに違うのは、スポーツにおける勝ち負けや成長よりも、人間的な成長のほうに主眼を置いている点でしょう。
スポーツをするためのスポーツではなく、生きていくために必要なものを得るために、それをやっている、といった具合の子どもたち一人ひとりが無性にいとおしくなりました。

翻訳者の金原さんのあとがきに、彼のこの小説への思い入れがこめられていました。

これまでずいぶんいろんな本を訳してきた。どれも好きだし、それぞれに思い入れがある。が、また、それぞれに向き不向きがある。ハードなファンタジーが好きな人に薦めたい本もあれば、一風変わったリアリズム小説が好きな人に薦めたい本も、エスニック文学の好きな人に薦めたい現代小説もある。
しかし、相手の好みなどきくまでもなく、とにかく読んでみてくれと突き付けたくなる本というのもごくまれにある。


120%同感。
この本を手元に持っていたら、誰彼構わず「読んでみて」と突き付けてしまいそうになる。
自分でも怖いくらい。
ぜひ、読んでみてください。


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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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