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★ヤンキース流広報術 (著・広岡勲)

★ヤンキース流広報術 (著・広岡勲)

元報知新聞記者の著者が、松井秀喜選手のメジャー入りにあたり、松井選手本人から乞われてヤンキース球団広報に就任し、大量に押し寄せた日本メディアを交通整理しつつ、信頼関係を築きつつ、松井選手はもとより、ヤンキース球団、さらにはアメリカのメジャーリーグの魅力を演出すべく奮闘する、という体験記。

これを読んで、なぜ松井選手が毎日毎日、試合の後に記者会見に答えているのかがよく分かったのでした。その背景に、「伊良部選手の広報の失敗」があったことも。

大量に押し寄せた日本人記者団に、例えば、「地元米国メディア関係者に積極的に声をかけよう!」と提案をした、なんてエピソードは極めて興味深かった。その必要性を日本メディア関係者に理解させるために、「数年前、韓国から有名選手が来た時のことを思い出してほしい。韓国メディアがどっと押し寄せ、彼らだけで固まり、韓国語でワイワイやっていた時、君たちはどう思った? 今度は君たちがそう思われているかもしれないんだよ」と説明した、なんて話も。

やはり、元記者。
記者の心理をつかむのがうまいのである。
松井選手の地元での浸透を狙って、地元メディア相手に「ゴジラ」のニックネームを勝手に考案し、使いまくった、というあたり、なるほど、あれにも仕掛けがあったのか、という感じ。

松井選手がけがした時も、元記者の経験として、情報操作や情報隠蔽がいかにあとで問題を大きくしてしまうか知っていたから、広報担当として毎日会見を開き、できる限りの情報公開する一方で、常に忘れ去られないようにこまめに話題を提供した、なんて話も。

また、松井選手の存在をかさに来て、記者を見下したりしないよう自分を戒めた、なんて話も、そういう態度が最も記者に嫌がられる、あるいは足元を見られることを熟知しているからなんだろう。

日米の差でいえば、松井選手が腕を故障して、「チームメイトに迷惑をかけて申し訳ない」というコメントを発表した時、球団関係者やマスコミが、「ハッスルプレーの結果のけがなのに、謝るなんて、なんと謙虚な男だ!」と話題になった、というのは、考えさせられた。
日本では誰もが普通に口にするお決まりの謝罪なんだけどなあ。

また、広岡氏のモットーは「こちらから胸を開いて、相手の懐に飛び込む」という手法。やっぱり、最後は人と人なんだなあ、と納得。

ということで、どのエピソードも、特にメディアに属する者として極めて興味深かったし、そうでない人でもすごく楽しく読める本だと思う。

ただし。
この本はたぶん、「記者・広岡勲」ではなく、あくまで「広報・広岡勲」が書いた本であることを心のどこかに留めておいたほうがいい気がした。

つまり、この本もまた、松井選手やヤンキース球団、ひいては米国の野球がいかに魅力的であるか、ということを読者に上手に伝えることを目的とし、持てる「広報技術」を駆使して書かれた本である、ということ。
基本的には、どんな広報術で色々なトラブルを乗り切ってきたか、という体験記の形を取っているし、自身の失敗談や、ネガティブな話もちゃんとバランス良く散りばめているにもかかわらず、結果的には、読者に松井選手とヤンキース球団の素晴らしさが伝わるように書かれている。
一部の読者に、「ただの自画自賛じゃん」と思わせてしまっているのはそのせいだろう。

この本自体が、極めて巧妙な「ヤンキース流広報術」、なのだろうな。
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非公開コメント

「こちらから胸を開いて、相手の懐に飛び込む」
 どきっとしちゃいました。
 
 なので、手帳にメモしたよ。
 

くぼたさん。

思わぬ本の、思わぬ箇所で、著者の思惑とはほとんど無関係に、胸にずしんときちゃって、心に刻んじゃうようなことってありますよね。
読書の醍醐味だよな、とも思います。
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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