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記事148◆犬の温泉で癒やされるのは? ルポ記事

■掲載年月日 2004年05月20日
■犬の専用温泉施設を見に行く


 「ペットは家族」というこの時代。人間を癒やしてくれるモノは愛犬にも与えたいと思うのが飼い主なのかもしれない。温泉あり、エステサロンありで話題の犬専用保養施設「綱吉の湯」(東京都江東区青海)を見に行った。でも、犬って本当に温泉で癒やされるの?

 ■五十肩も
 「綱吉の湯」は、都心の温泉施設「大江戸温泉物語」内に3月にオープンした。温泉のほかにプールやエステ、診療所もある。温泉はヒノキ風呂や岩風呂、五右衛門風呂など四つの湯船があり、それぞれ人間用よりは少々小さめ。サンダルに前掛け姿の飼い主の女性が愛犬に湯を掛けてやっている。「温泉だよ。気持ちいい?」。犬は黙ったままだが、飼い主は実に幸せそうである。

 温泉は毎月、各地の名湯から運んでおり、この日の浴室の壁には「山梨県石和温泉」の看板があった。適応症は「神経痛、筋肉痛、五十肩、疲労回復」。しかし、犬にも五十肩ってあるのだろうか。

 ■お風呂嫌いも

 それにしても犬、犬、犬。週末は大入り満員の盛況だ。コーギーにミニチュアダックス、トイプードル……と、人気犬種が次々に現れる。それでも、しつけができているのだろう、互いにほえ合ったりはしない。

 むしろ騒々しいのは人間の方だ。愛犬の温泉初体験を撮影しようと必死の男性。お湯の中の愛犬の一挙一動に大喜びする家族連れ。せっかく人間用の温泉が隣にあり、犬を預ければ入浴もできるのに、「温泉は犬だけ」という客が意外に多い。「この子を預けて温泉に入ってもつまらない。ここで私も一緒に入れればいいのに」と残念がる人も。

 37度に設定された「石和温泉」でトロンとした目をしていたのは、黒いパピヨンのチップちゃん。千葉から初めて来たという飼い主夫婦も「この子は水嫌いで、普段は絶対に湯船に入らないのに」とうれしそう。その一方で、最後まで湯を怖がる犬もいる。浴槽から抜け出そうと必死で暴れるシーズーを、飼い主の女性が「気持ちいいねー、気持ちいいねー」となだめ、押さえつけている。

 入浴料は犬の大きさで異なり、2625~5250円。ちなみに、隣接する人間用温泉は2827円である。

 8メートルプールでは、スウェーデンの犬用セラピー施設で研修したインストラクターから水泳療法の指導が受けられる。見ると、少々太り気味のチワワ君が水泳に挑戦中。飼い主家族が「上手上手!」と拍手する。プールは愛犬家に人気の施設だ。都会暮らしの犬に多い運動不足の解消や整形外科手術後のリハビリなどに効果があるためだ。
 インストラクターに抱かれてプールの真ん中に連れて行かれたチワワ君は、飼い主が待つプールサイドへ鼻息を荒らげて泳ぎ出す。愛犬の雄姿に感動する飼い主たち。なるほど体には良さそうだが、犬が本当に泳ぎを楽しんでいるのか、早く泳ぎ着きたいだけなのかは今一つよくわからない。

 ほかにもフットケア(1575円~)や、毛並みを良くするモイストジェルパック(3150円~)、泥パック(2100円~)など、人間のエステサロン顔負けのサービスがそろう。アロマテラピーと温泉入浴、モイストジェルパック、ブローを組み合わせた料金は小型犬でも1万円強。犬が癒やしを得るにも随分お金がかかる時代なのだ。

 増殖するペット業界で「癒やし」は一つのキーワードだ。例えば「綱吉の湯」のキャッチコピーは「都会の犬は疲れている」「わんちゃん達の新癒やし空間」だし、宣伝用のチラシは「多くの犬たちが都会で人間と共生しています。しかし、本当に犬たちは幸せなのでしょうか?」と飼い主に語りかける。

 確かに都会の犬は大変そうだ。狭い部屋に閉じこめられ、夏の散歩は熱く焼けたアスファルトの上。リードなしで自由に走り回れるドッグランは数少ない。室内飼いのため、飼い主家族の人間関係のひずみまで犬のストレスになってしまう。

 だからだろうか。飼い主たちは、人が享受するあらゆる「癒やし」を愛する犬にも与えてやりたいと願う。宮崎市には「全国初」をうたった犬専用フィットネスクラブが登場。ペット向けの鍼灸(しんきゅう)や指圧などの東洋医学、音楽CDやアロマテラピーまで人気を集めている。でも、本当に犬は温泉やエステで癒やされるのだろうか。

 犬専用スポーツ温泉施設「ドッグ・スパとみおか」(群馬県富岡市)で温泉療法(ハイドロテラピー)を指導する川瀬獣医科病院(東京都世田谷区)の川瀬清院長は「温泉療法の効果は、犬の方が人間より早く表れる」と語る。特に手術後のリハビリや肥満解消、関節痛や神経痛、皮膚病治療に有効という。

 ■寄生虫や皮膚病にも

 「温泉は毛細血管などを拡張して血流を増やすので、関節痛や筋肉痛の痛みが和らぐ。免疫力も上がって皮膚病にもいい。歩けなかった犬が3度の温泉療法で歩けたり、寄生虫が数度の入浴で消えたこともあります」と話す川瀬院長は「ただ温泉につかればよいのではなく、温泉療法の前に獣医師が検査し、その犬に応じた入浴時間や回数などのプログラムをきちんと組む必要がある」とも念押しする。

 では、癒やし効果の方はどうか。
 多摩動物公園(東京都日野市)の石田〓(おさむ)飼育課長は「野生動物が温泉で体の傷を治したという事例は数多いが、動物は人間のように『心の傷』を癒やしたりはしません」と笑う。
 なるほど犬専用温泉で一番癒やされているのは、温泉につかる愛犬の仕草にうっとりする飼い主なのかもしれない。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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