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★日本人のしつけは衰退したか (著・広田照幸)

★日本人のしつけは衰退したか (著・広田照幸)

比較的、きまじめな子育て中のお母さんに、特にお勧めの本……かな。
最近は、「テレビを観ながらの授乳は、やめよう」とか「お芝居を見に行こう」(だっけ?)とか、国が家庭内のしつけや子育てに随分と提言してくださる時代なのですが。
この本は、「最近、家庭のしつけや教育力が落ちている」という昨今の<常識>に対し、おいおい、本当か? と問い直しているのであります。

大変おもしろく読みました。
内藤朝雄さんのいじめ研究本の中で引用されていて、気になって読み始めたのですが、これもヒットでした。

本書によると、昨今はやりの子育てマニュアル本のようなものが初めてこの国に登場したのは、大正時代なんだそうです。
遊ばせたくない子どもと遊ぶ我が子をどうするか、とか、子どもを叱る時はどういうことを考えるべきかとか、具体的な場面での親の対処法を事細かく説明することに主眼が置かれ、親が読む受験マニュアル的な要素も含まれていたのが最大の特徴だったそうです。

逆に言えば、それまでの日本では、親はそんな本は読まなかったし、学校の学習内容にまで親が関心を寄せることはほとんどなかった、というわけです。

ところが、農村や漁村を中心に、地域が家庭以上に子どものしつけに影響力を持つような社会が高度成長の過程で消え、しつけの担い手として影響力を強めていったのが「家族」と「学校」だと、著者は説きます。
さらに、1970年代からは、学校と家族の力関係において、家族のほうが優勢になってきた、とも。
高度成長期の末ごろには「家庭こそが子どものしつけの中心的な場である」という意識が親の間で浸透していったんだそうです。

だから著者はこう書きます。

要するに、「家族の教育機能が低下している」 のではなく、「子どもの教育に関する最終的な責任を家族という単位が一心に引き受けざるをえなくなっている」 のである。(中略) 70年代以降、「教育する家族」が広がる中で、「学校が(我が子に)余計なことをやりすぎる」という批判にさらされることになった。地域共同体は消え、学校は「教育する家族」に従属させられるようになったのである。

そして、「昔は家庭のしつけがしっかりしていた」「最近の親はしつけを学校まかせにする」という世間でよく言われている<常識>は、ウソだ、と断じます。

ところが、今、しつけを担っている親たちは、自分たちのしつけについて迷いや不安を抱いている。なぜか。著者は次の4つの点を指摘しています。

■しつけへの熱心さこそが不安を生み出している。

自然な成長や地域共同体に依存したかつての子育てと違い、今は親がしつけの中心的な担い手であるという意識が強い。このため、「完璧な母親」を演じようとし、演じきれない自分や、「完璧な子ども」になってくれないわが子に不安が生まれている。

■子どもの情報環境を親が完全にコントロールできない時代になった。

テレビ、インターネットなどを通して、親が期待するのと異なる知識や態度を子どもが身につける時代になってしまった。

■しつけや家庭教育のイデオロギー自体がジレンマを内包している。

児童中心主義(童心主義)・厳格主義・学歴主義の三者間の相克がある。すなわち、子どもの自由や自発性を尊重するべきだ、という考え方と、親や教師の抱く希望や目標との間で、親も子どもも板挟みになってしまう。「自由にしなさい。でもちゃんと必要なことを学びなさい」と言うように。

■親の「個人化」

母親役割以外の自己実現欲求を持った親たちが増えているが、一方で、「親こそが子どものしつけや教育の責任者」というイデオロギーは強化されるばかり。その結果、仕事や個人的な活動を持ち、自立している女性たちにしばしば、後ろめたさや不安が生じる。

などなど。
どれも含蓄の深い指摘でした。

が、一番印象に残った言葉は、これ。
パーフェクト・チャイルド」。

最近のお母さんたちは、単に教育ママと化し、「勉強だけできれば何でもいい」と考えるのではなく、お行儀は良いけれど、無邪気で天真爛漫で、快活だけどよく言うことを聞く、いわば「パーフェクト・チャイルド」を作ろうとしているのではないか、という指摘です。

いやはや、どきっとしたね。
まあ、我が息子は生まれた時からそもそも、「快活」でないし(保育園時代はほぼずっと登園拒否児だった)、「無邪気」でもないし(4歳の誕生日の夜、「母ちゃん、大人になりたくないよー」と泣いた)、「お行儀」もよくない(だって、私も行儀悪いもん)。
早々に、「パーフェクト」はあきらめたけど、でもやっぱり、心のどこかに一番望ましい子ども像として、「パーフェクト・チャイルド」があるかもなあ……と。

上記のように、文字に書いて並べてみると、ぷぷぷっ、と笑っちゃうようなバカげた幻想なのにねえ。まったく。

この本の著者は、あとがきで自身のことに触れている。
二人の子どもを持つ父親であり、「教育学を専攻しています」と言うたび周囲から「さぞ立派な子育てを」と言われたりしつつ、苦労したり失敗したりしながら子育てしているという。
最後の、あとがきから引用を。

そんな私は「完璧な父親」からははるかに遠いが、それはそれでかまわないと思っている。むしろ親として必要なことだと私が心がけているのは、「完璧な親を目指さない」ということである。100点満点の子育てをしようとすると、前述したように、不安が生じるし、ジレンマの中で迷いも生じる。

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凄く良い本です

すごく良い本ですよね。
僕は、子どもができる前に読んだのですが、
『リストカットシンドローム』に影響を与えた本です。
朝生のディレクターに推薦して、
「とても良かった」と言われました。
番組には、反映されてませんけど…。
推測ですけど、眠剤を飲んで、お風呂に入った後に
意識を失って、子どもを窒息死させたお母さんは、
パーフェクト・ペアレントを目指してたのではないでしょうか。
何でも、完璧を目指すとどこかが狂ってしまう人が多いんですよね。

ロブさん。

>僕は、子どもができる前に読んだのですが

なんか同じ親として、尊敬しちゃいます。
子ども前に読んでおくと、確かに、いいですよねー。

パーフェクトチャイルド、パーフェクトペアレント、これらの呪縛って、たぶん、自覚してるよりずっと強い気がしました。
もともと極端な性格がオリジナルな私なんか、常に、自制してないと、あぶないあぶない!

読んでみます!

初めまして!
高度成長以降の子育て・・・なんて、
しかめつらしい検索でたどりつきました(苦笑)
近頃のすさまじいばかりの少年犯罪で、
家庭のあり方に迷ってばかりです。
何が間違っていたんだろう・・・
いつから日本は変わったんだろう。
そんな思いでいっぱいでした。
『日本人のしつけは衰退したか』
ぜひ読んでみたいと思います!

そして、現在の私にすごい問題提起をしている本をご紹介したいです。
『あなたの子どもを加害者にしないために』中尾英司 著
同名のブログも書かれています。
http://nakaosodansitu.blog21.fc2.com/

おぐにさんがどんな感想をもたれるか興味深いです。
初めましてなのに、ずうずうしくてすみません。
また来させてください~^^
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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