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★名もなき毒 (著・宮部みゆき)

★名もなき毒 (著・宮部みゆき)

前作「誰か」の続編。

主人公は探偵ではありません。
日本に名だたる企業グループの創始者会長の娘のところに婿入りした、杉村というまったく欲のない会社員。もともと書籍の編集者だったが、会長が示した結婚する時の条件は「経営権を奪おうなどと欲を出すな/こっちの財産をあてにして起業するな/こっちの一社員となれ」の3つ。ということで、本の編集しかしたことがなかった杉村さん、企業の広報室で広報紙を作る編集員となったわけ。

前作に続き、今作も、この設定の上で、「ただの会社員のはずが、なんだかんだと事件に巻き込まれ、結局、探偵まがいのことをしてしまう」というパターンです。

正直なところ、「欲のない男」という存在自体、あまり身近にいないので(私も含め、私の周囲には、良くも悪くも欲深い男と女がひしめいている気がするのは気のせいだろうか? それとも、新聞社というところが、そういう空間なんだろうか?)、主人公に今一つ、なじめない。
これは前作も同じ。

読んでしまえばおもしろいけど、時間を割いてまで読む本でもなかった。読んだけど、最後まで。

とはいえ、深く考えさせられるシーンが一つありました。
この本には、秋山というフリージャーナリストが登場します。
彼もまた、ひょんなことから、杉村と一緒に行動し、こじれにこじれた事件の「真犯人」の自白に立ち会うことになるんですが。
この「真犯人」だって、色々と切ない事情があるわけで、杉村にしれみれば、つらい話はあまりさせたくはないわけです。
「真犯人」が「ごめんなさい」「私がやりました」と吐露し始めた時、秋山氏は犯行動機はもとより、毒物の入手先やその取り扱い、関係人物とのやりとりなど、事細かに話をさせます。まるで取材のように。
これに耐えられなくなった杉村は、「『私がやりました』だけで十分でしょう? なぜあれこれ尋ねたんです」と秋山を責めるんですね。
この時の秋山のセリフ。

「その必要がありました」
「もしかしたら、警察は、違う筋書きをしゃべらしょうとするかもしれない。もっと通りのいい動機、判り易くて座りのいい犯行の理由を求めて、ね」
「そんなことが起こった時、我々は最初の告白を裏付けてやらなければなりません。(真犯人から)告白を弾きだした以上、その責任があるんです。あなたにも覚悟してもらわないと」

ジャーナリストらしいセリフだなあ、としみじみしてしまいました。
その質問をすれば、目の前の取材相手を傷つけそうで、傷つけるのが嫌で、躊躇する時はたくさんある。
でも、言葉を選んで、最後はやはり質問する。質問を繰り返す。
そんな時に心に念じることに似ているなあ、と。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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