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★小鳥たちが見たもの(著・ソーニャ・ハートネット)

★小鳥たちが見たもの(著・ソーニャ・ハートネット)

ものすごく胸にいたい本です。
9歳のエイドリアンは、両親が離婚し、母親と暮らしていたのだけれど、母親が心を病んだため、父親のもとにいきます。が、父親はエイドリアンを邪魔者扱いし、元妻の家族に押し付けます。
母方の祖母に預けられたエイドリアンですが、おばあちゃんはすでに老いていて、孫を愛してはいるのだけれど、「本当に自分で育てられるのか」という不安を抱え、苛立ち、それを常にエイドリアンにぶつけてしまいます。
誰にも必要とされていない……。それを9歳で痛いほど身に染みているわけです。

そんなある日、街では3人の兄弟が行方不明になります。事件に巻き込まれたらしく、テレビ画面では、3人の子の両親が涙ながらに「子どもを帰して」と訴えます。

それをエイドリアンはとても複雑な思いでながめます。
こんなに必要とされている子もいるんだ、と。

学校でも友達に去られ、いじめられ、ようやく近所に越してきた遊び友だちができたとき、エイドリアンは彼らと遊びながら、
「この1時間のためだけに僕は生きよう」と思うのです。

エイドリアンの哀しみはひたひたととても静かで、それでいて、深い。
父親が自分を元妻の親に押し付けるときに言った一言を彼は忘れていません。「問題を起こさない子です。放っておけばいいんです。あまりしゃべりません。おとなしい子です……退屈な子ですよ。そばにいても気付かないくらいです」

ひどいよね。

彼はこの一言を思い出しながらこんなふうに思います。

あの言葉を耳に入れるべきではなかった。それでも、聞いてよかったのかもしれない。知っておいたほうがいい。
これまで人から人へ、場所から場所へ、たらいまわしにされるような人生を送ってきた。ゲームで次々と渡されていく包みのように、エイドリアンは次に押しやられるたびに、包みを一枚はがされ、小さくなっていった。エイドリアンはいつも、予感にさいなまれていた。いつか自分を包んでいる最後の薄い1枚がはがされてしまう、と。
そうなったとき、自分がどんなふうに見えるのか、知りたくない。そうなったとき、自分がどんなふうにかんじるのか、考えるのも耐えられなかった。


この本の最初から最後まで、ずっと死の予感のようなものが漂っていて、エンディングはひたすら美しいです。
でも私はやはり、彼を救ってほしかったです。
子どもらしさの中に、救ってあげてほしかったです。

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何故?小鳥「達」?なんでしょう

おぐにさんのご紹介文を拝読してとても読みたくなりました
でも、何故複数形なんでしょうね。そういう子供が増えている事への警鐘でしょうか?

TM-Kさん。

複数形の理由、深く考えたこと無かった~。
よかったらぜひぜひ読んでみてください。
訳は、金原瑞人さん。芥川賞取った金原ひとみさんの父上で、児童文学のこの人の訳は私、とても好きです。

こんにちは

こんにちは。
自分もようやく、この本を読みました。
児童文学系を趣味で良く読むのですが、おぐにさんの
文章を読んでいて、ちょっと自分が鈍感になっていた
部分に気づかされました。自分の足元が崩れていく感覚
は前提で、そこからの救いがどうあるか、が妙味なの
ですが、この作品の帰結はちょっと、厳しいですね。
海の怪物、の挿話が、象徴性を持っているのだと思い
ましたが、人生の表裏や、幻想とリアルの相克みたい
なものがあって、結局ところ、リアルが勝ってしまう
のでしょう。それでも、どこかに救いがあれば、とは、
思いますね。
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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