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★「絵本があってよかったな」「ともだちおまじない」(著・内田麟太郎)

★「絵本があってよかったな」
★「ともだちおまじない」(ともに著・内田麟太郎)

息子がナンセンス絵本「うそつきのつき」を借りてきて、我が家は先週、「麟太郎さんウィーク」となりました。図書館から、麟太郎さんの本を一気に借りてきたんですが、その中の2冊。

「絵本があってよかったな」は大人向けエッセイ。
内田さんがなぜ最初、ナンセンスばかり書いておられたかについては、「かあさんのこころ」と、同時期に掲載された新聞インタビューなどで知るにいたったのですが、今回はそんな内田さんの半生をじっくり読ませていただいた、という感じ。

お父様は詩人だったのですね。戦争協力詩を書かず、それでも「天皇を認めます」と一文を書かされ、それを屈辱とし、時代劇の看板書きで食べていた父。息子に、反戦を掲げた文学者武田麟太郎の名前を付けた父。幼くして生母を亡くし、継母から愛してもらえず、小学校のころから家出や万引きを繰り返した話。
とても重い話を、内田さんなりの工夫と気遣いで、軽い文体で書いておられるのだけれど、だからこそ、胸に迫ってきて、たまらない思いがしました。
文中でこんな風に吐露されています。
「恥ずかしいことですが、私はこの仕事をしながら昨日号泣しました。むろん泣いたのは私ではなく少年リンタロウくんです」

継母を許し、「かあさんのこころ」「おかあさんになるってどんなこと」の2冊の絵本を書いた時、麟太郎さんは「おれはこの2冊の絵本を描くために生きてきたのだろうか」と深い感慨にとらわれたといいます。しかし、同時に激しく首を横に振っている子どもがいた、と。

なるほど、私にそのカナシキ少年時代がなかったら、この2冊の絵本はたしかに生まれていなかったでしょう。でもそれがなんだというのでしょうか。神さまが子どもの私の前に現れ「この苦しみ、哀しみは、君が大人になって書く2冊の絵本のために与えられている試練だ」といったら、子どもの私は泣き叫びながら、「絵本なんかいらん、いらんから、いらんから」といったでしょう。
いまでも私は断言できます。一冊の絵本もいらなかった。平凡な幸せがほしかったと。


こんな人が、「ともだちや」シリーズを書いていたんだなあ、と今、しみじみと思う。だから、あんなに寂しい、一人では生きていけない動物たちを描けるんだなあ、とも。
何より驚いたのは、「ともだちや」シリーズが出たのは麟太郎さんが50代の時だということ。それまで何冊も絵本を出しながら、暮らしを立てるために看板書きを続けておられたということ。

この本の中で、麟太郎さんは書いておられます。

私もまたキツネのおかげで、いい友だちに出会えたのでしょう。友の名前はアルガママくん。彼の前だったら少し目が湿ってもいいような。

私なんかまだ40歳。
これからまだまだ、新しい思いに出会い、新しい友だちに出会えるんだと、勇気が出たのでした。

2冊目。
「ともだちおまじない」。
五七調で、友だちと仲直りする時のおまじないが並んでいます。良い本です。
昨日のクリスマスイブに、家族3人で、それぞれに好きな句を選びました。

息子は
「みてほしい きづいてほしい しらんぷり」と、
「バイバイと てをふりながら かえれない」。
(よく考えれば、両方とも、絵本の絵を見て初めて良さがわかる、といった句ですね)。

私は、
「おやぶんも こぶんもなくて いいきぶん」と
「こんにちは こえがかすれる すれちがい」。

夫は、
「けんかして ひとりでいても はなざかり」と
「このほしで であえたことに ありがとう」。

それぞれに性格が出た、という感じです。

そうそう、絵本論についてもう一つ。
麟太郎さんは「意識的に自立していない文章を書く」というのを自身に課しているそうです。
童話作家は、童話に絵を付けさせるだけの絵童話にとどまり、「絵本だからできる、絵本でないとできない表現の世界」へ跳べない、とも。

彼は「絵本に名文は必要ない」という。
「描写は絵に委ねよう」とも。
ああ、すごいな、と思った。
だから麟太郎さんの絵本は、いくつになっても読みたくなるんだ。
確かに、絵がついてるだけの童話だったら、大人になったらもういらない。
麟太郎さんのは、「絵本でないとできない表現の世界」なんだなあ、と。
すごく勉強になりました。

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久々にコメントさせていただきます。
私の中の息子さんは就学前のイメージのままなので、
このブログで垣間見れるその成長っぷりと、
私が知っている「かーちゃーん!」と泣いている
いたいけなお子さんがだんだんマッチしなくなってきております。

私は今年、自分でおはなしを作り、絵をつけるという仕事を毎月させていただきました。
そして、何度も自分に向き合わなければいけなくなり、想像以上に辛かったんです。
『産みの苦しみ』と言えばそれまでなのかもしれませんが、
麟太郎さんの言葉とおぐにさんの言葉がやけに響いたので、
コメントさせていただきました。とりとめなくてスミマセン。良いお年を☆

ノナさん。

そうですよね。息子の「かあちゃーん(涙)」時代を知ってる人には、今の息子は衝撃かも。
何しろ、スポーツ刈りですから。「うるせえ」とか言いますから(涙)。
私はこいつがいつか声変わりしたり、ヒゲが生えると思うだけで卒倒したくなります。
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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