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■ナミイと唄えば (監督・本橋成一)

■ナミイと唄えば (監督・本橋成一)

沖縄発のドキュメンタリー映画。
85歳の「ナミイ」こと新城浪さんが、スナックで、お座敷で、高齢者施設で、台湾で、およそあらゆるところで三線を弾き、うたいまくるという旅のお話。
「ヒャクハタチ(百二十)まで生きてみたいと思います」と毎朝、神棚に頭を下げ、夫の仏壇に「早くお迎えにこないでね。あんたの倍生きようと思ってますから」とのたまう姿は極めてチャーミングです。はい。

ただ、私は正直いって、新城さんの唄や三線には「すごい!」と思いませんでした。
決して上手でもないと思うし。沖縄発の映画となると、はちゃめちゃにスピード感があった「パイナップルツアーズ」とか、唄が本当に本当に良かった「ナビィの恋」とかのほうがずっとずっと魅力的だと思う。
映画としてどうか、という意味でも、強く心に引かれた、とは言い難いかも。

ただ、この作品の主人公、ナミイさんが、これまでの沖縄発映画にないものを持っているとしたら、それは「普通」であるがゆえの懐の広さかもなあ。
沖縄のおばあさんはチャーミングな人が多いから、決して、ナミイさんは特別な人じゃないと思うんです。でも「普通」だからこそ、彼女は島唄に限らず、なんでも唄ってくれちゃうのね。童謡から大和の流行歌まで。沖縄民謡に期待して劇場に行ったら、肩すかしをくらうほどにね。

そもそも冒頭のシーンがすごい。
唄の奉納の神事で、好きな唄が一番良いだろう、とナミイさんが唄ったのは「酒は泪かため息か」。このあたりの俗っぽさが、なんというのだろう、「沖縄」という存在に、「底抜けの明るさ」とか「悲惨な歴史」とか「魂の浄化」とか「唄とともに生きる人々」とか、その手の神話を求めたがる人たちを、見事に裏切ってくれるわけで、その点はおもしろいと感じました。

この映画を離れて、一つ思い出話を。
ナミイさんが台湾に行ったところで、台湾の少数民族のプユマ民族の人たちと一緒に唄って踊るシーンが一瞬、出てくるのです。私、声を上げそうになりました。
大学時代、大阪から船で那覇、そして石垣島へと渡った後、そこからまた船で台湾に渡りました。
台東という街で、いくつかの偶然と必然の末に、プユマ民族の一家と知り合い、そちらのお宅でなんと10日間ぐらい泊めていただいたんです。
本当によく唄ったな。踊ったな。古い日本の曲。プユマの唄もたくさん教えてもらった。親戚一同車座になって一緒に声を合わせて唄った時、「ああこんな風にみんなで唄を唄えるっていいなあ」と思った。日本ではカラオケばっかりで、みんなで楽器もなしに唄うなんて初めてだったから。
お兄ちゃん格の3人の青年が、すぐに私のビールに、甘い缶コーヒーを混ぜてくれたっけ。「あやこ、飲み過ぎ」と。ビールを砂糖入りコーヒーで割るなんて、私は卒倒しそうだったけど。
帰国してそんな話を昭和12年生まれの父にしたら、「何いうてんねん。日本人かてカラオケが登場するまでは、宴会といえばみんなで車座になって一緒に唄うのが普通やってんで。そやから、若い人でも軍歌をいやおうなしに覚えたもんや」と言われたのだった。
その夜は、母親の三味線を持ち出して、黒田節を一晩でマスターし、父とどんちゃん騒ぎしたのだった。
そんなことが、この映画を観ていたら、ぱーーーーーーっとよみがえった。

さらにナミイさんが三線を習いに行った先の大島勇さんのお顔を、画面で初めて拝見。これが懐かしい大島保克さん(むっちゃくちゃ唄が素敵な人です)のお父様なのね。
まだ若かったころ、東京で偶然出会い、わずか10分間、住所を交換しただけの那覇在住のご夫婦に「沖縄にも遊びにおいでー」と言われたのを真に受けて、本当に出かけ、そこのお家に泊めてもらうところから始まったのが、上記の台湾の旅だったわけで。
確か、台湾から帰ってきて再び那覇でこのご夫婦の家に泊めてもらっていた時、大島保克さんと新幸人さん(かつてニュース23のエンディングテーマを唄っていた)と知り合い、飲んだくれて、最後は新さんのアパートで川の字で寝たんだった。
ははは、なつかしー。

ということで、映画自体より、映画によってよみがえった思い出のほうが美しく、鮮やかで、胸を打ってしまった………のでした。ちゃんちゃん。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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