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★新平等社会 (著・山田昌弘)

★新平等社会 (著・山田昌弘)

9月に出た本を今読んでいる。情けなし。
副題が「『希望格差』を超えて」ですから。具体的な対処策も提示されています。

著者はまず、「日本において格差は拡大しているか」という問いが無意味だと説く。なぜなら、格差が拡大した領域もあれば、縮まった領域もあるから。
前者は、いわゆるメディアをにぎわしている「若年男性の収入格差」であり、後者は、まさしく私を含む女性たちが享受することになった「男女の正社員賃金格差」「高齢者の所得格差」というわけ。
確かに。
「昔はよかった。それなりの企業に入れば将来安泰で、部長は無理でも、課長くらいにはなれて……」みたいな男性陣のノスタルジーを聞くとやっぱり、反発を感じちゃいますものね。

そして格差拡大の原因については、これまでメディアが何度も乗っかってきた「小泉内閣のせい」という見解をばっさりと否定する。
今回のような格差出現を示す社会問題指標(経済的理由による中年自殺者の急増、自己破産増加など)が深刻化したのは97-98年であり、そもそも今問題になっている類の格差拡大は北欧を含めた欧米諸国においては世界的な傾向だから、と。
でもって、ほんとうの原因は「グローバル化」や「IT化」や「知識産業化」にあり、その根底に流れているのは「自由の拡大」なのだ、と。

もっと具体的にいうと、ニューエコノミーの浸透によって、これまでのように、低スキルから始め、誰でも一定の努力をすれば比較的高い仕事能力の地位に移行できるような職がどんどんと減っていて、それが中間層を減らす結果となっている、という話。
生産性の高い仕事につき、高給を得る一握りの人がいる一方で、マニュアル通りに働き、生産性の上昇は期待できない仕事、つまり昇進の望めない職の需要がますます大きくなってくる、というわけ。

こういった労働面での格差に拍車をかけるのが、家族形態の変化。つまり、フルタイム共働きの出現、だそうで。著者の山田さんは、この格差拡大について「不当性を強調しようとすると、自由を抑圧してしまう」と指摘するわけです。

この手の議論は、マクロの視点で物を語ることが苦手な私には、やっぱり少々苦手です。個々のケースを前に、ひとつひとつ悩んでしまうほうなので。うむむ。
(何はともあれ、「母子加算」削減はやっぱり問題だと思うし)。

話を本に戻します。
では、現在の格差拡大に対して、どう対処すればいいのか。
例えば最近は「生産性の高い職に就くための職業教育」などが重視されているわけだけれど、これについて山田さんは「重要な方策だが、すべてが解決するわけではないことも明白」と指摘する。
なぜなら、いくら訓練を重ねても、その教育に見合った職の数は限られているから。
非正規雇用者対策として、山田さんが提案するのは

・生産性の低い職に就く期間を短くするため、アルバイト経験者の正社員採用を進める。
・生産性の高い職に就くための教育訓練の機会と「報い」を保証する。どの程度報われる訓練なのか、見通しをはっきりとさせる。
・ワークシェアリングなどで生産性の高い職に就く人数を増やす

です。

さて。タイトルは「新平等社会」ということで、山田さんが「平等」のために強く主張しているのが、累進課税を昔の水準に戻し、相続税を強化し、寄付を促進せよ、という点です。
累進課税については、高所得者のやる気をなくす、とか、海外に逃げてしまう、とか色々言われてますが、山田さんは「北欧は税率が高いが高所得者はやる気もなくさない」「日本は高度成長期からバブル期まで累進税率が高かったが、働く気をなくさなかった」と反論を展開しています。

ところで、ほとんど主題とは離れてしまうのですが、おもしろいなあ、と思ったのはp196の記述。

ドイツの社会学者ウルリッヒ・ベックは自分の将来の仕事の見通しが立たないからこそ、若者は「自分らしさ」にこだわらざるを得なくなることを1990年の時点で指摘している。

そうなのかー。いかにも社会学ちっくな物の見方で、新鮮でした。ふむふむ。

あと、怖いなあと思ったのが7章「結婚格差」。
山田さんは科学社会学者として、未婚化を研究し、以下の3点が根本的理由、と突き止めたそうだ。

1、女性は結婚後、夫に家系を支える責任を求める傾向が強い。
2、若い男性の収入は近年不安定化している。
3、結婚生活に期待する生活水準は戦後一貫して上昇している。

ところが、1は、「フェミニズムや反フェミニズム言説の中でかき消され」てしまい、2については、なんと、これまで延々と公表を制限されてきているという。
つまり「収入の低い男性は結婚しにくい」という明らかにデータに裏打ちされた結論が、自治体などの報告書の中では常に削除されてきた、と。
山田さんらの研究によると、「既婚男性と未婚男性の間には平均して各年代で100~200万円の年収格差があり、恋人がいる男性といない男性間でも100万円程度の年収格差がある」。

山田さんは言うのだ。「女性の職場進出が未婚化、ひいては少子化の原因という説が一般に流布しているが、結婚をあきらめてまでやりがいのある仕事に就いている女性がどのくらいいるのか」「専業主婦指向はそれほど弱まっていない」「若年男性の格差が拡大し、正社員であっても、倒産や失業のリスクと無縁でなくなるなどリスク化と二極化が未婚化に拍車をかけている」と。

身も蓋もないこの結果にも、山田さんは対応策を掲げている。
それは、「女性が夫に家計を支える責任を求める意識」を変えること。少子化対策に成功した先進国は、「育児期の女性が働いて夫婦2人の稼ぎで豊かな生活を支えるというパターンが定着している」。だから「女性が働きやすい環境を作ることは、女性のためであると同時に、収入が不安定化している若い男性を結婚しやすくする切り札だ」と。

(そういえば大学時代、私は「結婚しても働き続ける。一生同じ人と結婚してる自信はないし、いつでも好きな人と一緒にいられるために」と思ってたっけなあ、などと思い出してしまった)。

ただ、労働環境より、「意識」を変革するのには時間がかかりそうな気はしました。
色々とメモしておきたい内容満載の本ではありました。



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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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