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★「ダーウィンの悪夢」(フーベルト・ザウパー監督)

★「ダーウィンの悪夢」(フーベルト・ザウパー監督)

アフリカのヴィクトリア湖を舞台としたドキュメンタリー映画。
極めて、重い内容です。
タンザニアの主要輸出物である白身魚のナイルパーチ。半世紀ほど前に放たれたこの肉食の魚は、湖の生態系を大きく変えた。が、地元では「大金になる魚」ともてはやされ、湖の周辺では加工・輸出の一大魚産業が誕生する。
しかし、冨はすべての人にもたらされたわけじゃない。
魚を空輸する外国のパイロット相手の売春婦。魚の梱包材を溶かし、発生する粗悪なガスを吸い、空腹や身の危険を忘れようとするストリートチルドレン。ウジのわいた魚の残骸から食べ物を得る貧しき人々……。
さらに、魚をEU諸国に空輸する輸送機は、アフリカに空っぽで飛んでくるわけじゃない。どうやらコンゴ、リベリア、スーダンあたりに武器を運び、その帰りに魚を積んで帰るらしいことが判明してくる。
たまらない現実です。

この映画、まず、ドキュメンタリーの映像の力に圧倒されます。
視覚と聴覚のみで情報を受け取っているはずなのに、うだるような暑さや、強烈な腐臭まで、伝わってくるんです。
ものすごい不快な、やりきれない感情を引っ張り出されてしまい、肌感覚で「うわあ、いやだ」と不快感を感じてしまう自分自身に愕然とするわけです。

あと、魚の研究所の夜警を勤める男性が、とても力のある顔をしていて、とても印象的でした。「たいていの奴には戦争はいいことだ。仕事になるから」。軍の給料はとてもいいから。「戦争が怖いかい?」と撮り手に逆に聞き返す時の表情など、ドキリとさせられます。

最後の最後に登場する魚輸送機のロシア人パイロットの存在も印象的でした。
最初、取材に対し、「政治のことは何も話したくない」と頑なに口を閉ざしていた彼が、とうとう、やりきれない表情で、武器をアフリカに運んだことを認めるんですね。
この時、ふと思いました。
正義感に満ちあふれた一部の人は、こういう問題を目の当たりにした時、ナイルパーチという魚の加工や輸送に携わり、武器をアフリカに運ぶことを手助けしている人を非難しがちだけれど。
彼らはまだ、現実を知ってる。現場を見て、わりきれなさを抱えながら働いている。罪深いのは、地球の裏側で、その現実に目を向けようとしない人間のほうだよなあ、と。

ちなみにこのナイルパーチ、EU諸国に継ぐ輸入国は日本だそうで。
外食産業の白身魚のフライなんかに主に使われているそうです。

このドキュメンタリー映画が上映された欧州では、すぐさま「ナイルパーチ不買運動」なるものが起こったそうな。
いかにも、な話。
監督は言ったそうです。「ナイルパーチだけが特別なのではありません。身近なチョコレートにもダイヤモンドにも、背景には深刻な問題がある。最中のボイコットではなく、武器のボイコットを、愚かな行為のボイコットをしてください」と。

どうにもこうにも簡単に解決できそうになく、いったい、どうすればいいんだよー、とものすごく気分が重くなる、そんな問題提起型の映画でした。解決への道も、答も、あえてそぎ落とした意図も、どうやらそのあたりにありそうです。


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プロフィール

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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