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★空白の叫び(著・貫井徳郎)上下巻

★空白の叫び(著・貫井徳郎)上下巻

14歳の三少年、久藤、葛城、神原がそれぞれに殺人を犯し、少年院で出会い、出所後、「生きるため」に破滅への道を転がり落ちていく小説。
上下巻ある長編だけれど、重いテーマ(犯罪少年の更生とか、罪を償うとはどういうことか、とか)のわりには、極端でわかりやすい人物造形と謎解きのお陰で、エンタテインメントとしてはとても成功しています。

3少年の人物造形でいえば、久藤が一番リアリティーがあります。
容姿も運動能力も学力もそこそこで、しかし自分のその「凡庸さ」が許せず、無根拠に肥大化する自意識を心の中で飼い慣せない。
背景にあるのは小学校時代に受けたいじめ体験だけれど、中学校で立場が逆転し、かつてのいじめっ子たちをいじめる側に回ったことで、さらに再びいじめられる側に転落しないために必死になり、それ以外の人間関係のありようなど、許容できなくなっていく。

一方、「使用人がいる」ような大金持ちで、しかし家庭の温かみが一切ないような家に生まれた葛城は最もリアリティーがない気がしました。

神原は、上巻前半では恵まれない生育環境の中で数少ない家族を守ろうとする心優しき少年のように描かれていますが、実際に殺人を犯した後には、3人の中で最も自分の内面と対峙せず、罪の意識すら感じず、特に下巻では、「悪いのはいつも自分ではなく他人」と本気で信じている不気味さが描かれていきます。
これはこれでリアリティーがありました。

この小説を通して読んで、なるほどなあ、と思ったのは、3少年とも、殺人を犯した後、後悔することはあっても、反省することはないという点。
例えば、更正を目的とした少年院で、少年たちは反省する余裕なんかありません。陰湿な、あるいは暴力的ないじめからいかに身を守るか、ということが直面する最大の問題だと描かれています。
また、出所後、「人を殺した」ことで新しく得たアルバイト先などで白い目で見られたり、攻撃されたり、非難されたりしても、少年たちは社会への憤りをためこんでいくだけで、反省には至りません。
読み進めるうちに、そのことに思い至って、ぞっとしてしまいました。

反省だとか、更正だとかは、施設のカリキュラムやら、厳しい指導やら、社会的制裁だけでは生まれないんだ、という著者のメッセージとも読み取れました。

若干違和感があったのは、殺人を犯すまでと、少年院の中とで、久藤を筆頭に3人の人物造形がずれた感じがしたこと。例えば久藤の心情描写は最初とてもリアリティーがあったのに、少年院に入ったら一人で経を読み続ける修行僧のような……、という設定はちょっと無理がないかな、と。
あるいは、この変化は、殺人を犯したゆえなのか、14歳という思春期には数カ月でどんどんと考えも性格も変わっていくということなのかな。
また、久藤と葛城の互いへの感情は、小説的にはとてもおもしろいけど、ちょっとな……という感じでした。




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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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