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★シプリアン・カツァリスのピアノコンサート

★シプリアン・カツァリスのピアノコンサート@浜離宮朝日ホール

今年はこのホールで、「ショパンとリストの夕べ」と「ビバ!アンコール」の2プログラムがあったのですが、グリーグの抒情小曲集を生で聴きたい、とそれだけの理由で「ビバ!アンコール」の方を選びました。
おかげで、短い曲ばかりものすごい曲数です。

プログラムは、前半が、

グリーグの抒情小曲集から5曲。
シューマンは「トロイメライ」など2曲。
ショパンは「雨だれ」と、おなじみの個性派「ワルツ嬰ハ短調作品64-2」。
シューベルト作曲リスト編曲の「セレナーデ」と「アヴェ・マリア」。
ワーグナーの歌劇でリスト編曲の「イゾルデの愛の死」。

後半はさらにあれもこれもで、

ミシェル・ソニーの「追憶」「ハンガリーのスタイルによる3つの練習曲」。
バッハの「トッカータとフーガニ短調」をカツァリス自身が編曲したもの。
モーツァルトの「おもちゃの交響曲」(キャメロン編曲)。
マスネの歌劇「タイス」より「タイスの瞑想曲」。
チャイコフスキーの「四季」から「秋の歌」
プロコフイエフの「10の小品」より「前奏曲ハ長調」作品12。
そしてお馴染みグラナドスの「アンダルーサ」作品37。
アルベニス「タンゴ」(ゴドフスキー編)。
最後に、アンコール曲っぽさナンバーワンの、ゴットシャルク「バンジョー」(もちろんカツァリス編曲)。

ここまでで、22曲。
さらにアンコールが5曲。
計27曲!!!

結論からいうと、魂を奪われるような感動だとか、背筋が寒くなるような壮絶な演奏、とかそういうのとはまるで無縁でしたが、心から楽しめるハッピーなコンサートでした。
前半、実は、「この人、どこまで本気で演奏してるんだろう」と思うような瞬間もありましたが、後半どんどん盛り上がり、最後のアンコールではもう拍手喝采。

アンコール2曲目なんか、日本の「さくら」をモチーフに自身で作曲したいかにもな日本風のメロディーを極めて創造的に展開してくれて、客席も大喜びでした。
アンコールも5曲目になった時、「最後の曲です」と宣言し、弾いたのがメキシコの作曲家アルフレッド・カラスコの「アディオス」。
この茶目っ気というか、サービス精神というか……。

(ご興味のない人もいるだろうから、以下は追記にだらだら書きます)
今回は、小さなホールなので6列目の舞台向かって若干右より。ちょうど最初の数十分間、斜め前の人がずらっと遅刻なさったお陰で、カツァリスの手は見えないけれど、足元がばっちり見えてしまうポジションでした。

最初の抒情小曲集は「小人の行進」に仰天。
あんな忙しく勢いの良い曲なのに、弾き始めからしばらくの間、ずっとウナコルダペダルを踏んでいるのだ!
(足元が完璧に見えたからこそ分かったこの事実)。
柔らかな音色の曲ならともかく、この曲で?

私なんか、ごくたまにウナコルダペダルを使って柔らかな音色を挟み、効果を狙うもんだと思っていたのだけれど、カツァリスのグリーグはほとんどウナコルダペダルに足を乗せっぱなし。ものすごく微妙な動きでウナコルダを武器に音色を変えていると思われ……。
いくつかの曲ではむしろ、ウナコルダを外した時の明瞭な音のほうを、曲の要所要所でつかって効果を上げていた。これには驚いた。

ということで、憧れの「生で聴くカツァリスのグリーグ」は、足元ばっかり見ているだけで終わってしまった。

シューマンの「トロイメライ」は相変わらず内声処理が独特の個性的な演奏。
カツァリス独特の内声処理といえば、これが代表作でしょ、といえるショパンのワルツ(作品64-2)も登場。CD録音当時の演奏より、さらに個性的に進化している感じ。
このあたりは、カツァリスのCDで何度も聴いたので、むしろ昔の友達がちょっと歳を重ね、円熟味を増して帰ってきてくれた、という気持ちにもなった。
ちなみに、このワルツについては、ネット上でおもしろい文章を見つけた。
カツァリスの演奏を聴いたら最後、誰の演奏するこの曲を聴いても、カツァリスの内声旋律が聞こえてしまう、というところに大爆笑してしまった。本当にそうなんだもの!
ハイドシェックのシューベルト即興曲90-4も確かそうだったっけ。

話を戻して、コンサートの話。
お次の、リスト編曲のシューベルト2曲が、私の場合は、ちょっと……。
特に「アヴェ・マリア」はカツァリスの超絶技巧が駆使される代表曲の一つのはずなんだけど、どうも集中力に欠いている気がした。
私、専門家じゃないから、全然詳しくはわからないけれど、カツァリスを見ていると気が散るので、天井を見てずっと聞いてました。

というわけで、前半が終わって休憩に入った時は、どことなしに、違和感が残ったままだった。
例えば、ツィマーマンの身震いするほど壮絶だったショパン「送葬行進曲」。まるで天国にいながら背中に常に地獄を感じるようだった内田光子さんの弾くベートーヴェンの後期ソナタ3曲。どちらも、アンコールすらありえないような、臨界ぎりぎりといった感じのコンサートだった。
あんな真剣味を心のどこかで期待していた私にとっては、カツァリスの「余裕」のようなものが、ちょっと嫌だったんだと思う。
でも、仕方ないよね、
グリーグやショパンのワルツのCDに聞き惚れて以来、カツァリスは憧れの人だったんだもの。

ということで、休憩時間に私がやったこと。
赤ワイン1杯をぐいぐいぐい。
でも、私だけじゃないのよ。
たまたまドリンクコーナーで私の後ろに並んでいた女性2人組が「うーん、今日のコンサートはアルコール、必要よねー」と言っていたもの。
案外、同じようなことを感じた人、多かったのかも。

で、後半。
ミシェル・ソニーって私は名前も知らない作曲家。
いきなりカツァリスがメガネ(きっと老眼鏡だ!)をかけ、譜面立てをつけて、楽譜を見ながら弾きだしたので、へええ、と思った。
でも「ハンガリーのスタイルによる3つの練習曲」はとてもおもしろかった。
弾いてみたいな、と思わせる曲。

次に来たのが、「トッカータとフーガニ短調」(カツァリス編曲)。
これもカツァリスがよく弾く曲です。
これがもう、すごかった。
甘いだけの音じゃないカツァリスが、いきなり登場!の大迫力。
もしかして、この曲を際立たせるために、ここまで「甘く柔らかい音」を強調してきたんじゃないの? とすら思いたくなるような。
時に、燕尾服の裾を飛ばしながら、立ち上がりながら、多彩な音色を繰り出す姿に、大興奮。
興奮をワインが後押しして、もう大変。

客席興奮の最中、次がモーツァルトでしょ。
そもそもこの人、立ち居振る舞いが貴公子っぽくて(禿げてるけど)、茶目っ気があって、特にモーツァルトを弾く時は、モーツァルトの霊が降りてきたみたいな表情になるの。
実に楽しげで、自由で。

このあたりからもう、どんどん楽しい気持ちがこみ上げてきて、チャイコフスキーの「秋の歌」はウナコルダ使いまくりの柔らかな音色をたっぷり満喫し、大好きな「アンダルーサ」でさらにノリまくり、最後のカツァリス編曲の「バンジョー」に至ってはもう、拍手喝采。
あちこちでスタンディング・オベーション。

私は、と言えば、プログラムの余白が真っ黒になるくらい感じたことを書き付けてた。(だからこんなに長文のエントリーになっちゃったわけ)。
内田光子さんやツィマーマンのコンサートで、メモ取るなんてありえない。指1本動かせなかったもの。息するのすら忘れそうだったもの。
でもカツァリスの今回のコンサートは、ただひたすらに楽しかったのでした。

アンコール曲は、5曲。
2曲目は、先に書いたように、「さくら」をモチーフにカツァリスが作曲したもの。日本語で曲について説明してくれたカツァリスは、ピアノに座ると、和音階で思う存分遊んでくださった。

こんな感じ。

ソーーーラ♭シーレー♭シレ♭シラソーーーー
ソーーーラ♭シーラーソー♭ミソレーーーー
ドーーーレ♭ミソラソ♭ミソレーーーー
♭ミーーーソラソ♭ミソレーーーーーーーー

記憶違いもだいぶあるでしょうが、まあ、こんな感じに、和音階をいじって作りました~ってメロディーで、おまけにピアノでお琴みたいな音まで出しちゃうから、驚いた。

4曲目のモーツァルト(ただし偽。「バターブレッド」)は、終わった瞬間、客席からため息が漏れてました。
なんとも肩の凝らない、ハッピーな雰囲気のコンサートでした。
今度は全曲モーツァルト、なんてコンサートも聴きたいかも。


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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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