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★口笛を吹いて(著・重松清)

★口笛を吹いて(著・重松清)

これまた、口笛関連本として読んでみた。短編集。
結局取材にはまったく役に立たないけど、表題作を読んだだけですでにノックアウト。やっぱり重松さんはうまい。腹が立つほど。

幼い日、野球が上手で「ヒーロー」だったお兄ちゃんと26年ぶりに再会。それも職場で。
こちらは、「元ヒーロー」が係長を勤める相手の会社から取引をお願いされる会社の課長。
こちらが懐かしげに故郷の言葉で話しかけても、きっぱりと敬語を使ってくる「元ヒーロー」のよそよそしさ。
とまあ、「あったら怖いけど、ありそうな設定」をよくもまあ、見事に描くもんだわ、と感心。

この主人公の息子が6年生で、少年野球をやっている。
下手で、9番ライトのレギュラー枠を、同級生と争っているところ。
最後の試合に起用してもらえるのはどちらか。ライバルの父親は息子を猛特訓している。
主人公も闘士を燃やす息子の素振り練習に付き合っているのだけれど、ライバルの父親を見るだけですでに勢い負けしちゃうのだ。

そんな時のこの一文がとても好き。

誰だって、自分の子供が負ける姿など見たくはない。けれど、いつまでも勝ちつづける子供は、きっといない。勝ち負けなんてどうでもいいんだ……と言うのは、やはり、なにか偽善のような気がする。まっすぐな悔しさだけですむ、ねじれたり濁ったりしない負け方を、僕は息子に教えてやれるのだろうか。

やはり野球少年を息子に持つ我が身としては、ぐぐっときてしまう文章なのです。
誰に似たのか負けず嫌いで、そのくせプライドが高すぎるせいで「負けず嫌い」を表に出すことすら自分に許せず、あらゆる勝負事から逃げるタイプの我が息子。それが生まれて初めて自分から「やりたい」と言い出したのが少年野球。
人前に立つことは絶対に拒否する性格で、だからこっそり投球練習しているくせに、自分から「ピッチャーをやりたい」とは口が裂けても言えず、「ピッチャーは緊張するから自分には無理」と自分に言い聞かせるようにあきらめたりもするのに、そのくせ「ちょっと投げてみるか?」とコーチ陣に声をかけてもらった時には普段みたいに「いいです」と断ることもできず、マウンドに立つと実に充実した表情で投球を続ける息子の横顔を見ていると、やっぱり母ちゃんとしてはしみじみしてしまうわけで。

下手なプライドなんか空虚に思えるほどに打ち込めるものを見つけて、夢中になってほしい。そこで何かを達成する喜びを知ってほしい。そしてちゃんと、挫折の味も覚えてほしい。
でもその挫折につぶされないでほしい。
ましてや、挫折が原因でねじれたり、すべてのことをあきらめたりしないでほしい……なんて。
なんと私は多くのことを、野球と、息子に、望んでいるのだろう、と気付いて、ちょっと恥じている。


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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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