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■明日へのチケット(監督:ケン・ローチ、アッパス・キアロスタミ、エルマンノ・オルミ)

■明日へのチケット
(監督:ケン・ローチ、アッパス・キアロスタミ、エルマンノ・オルミ)

どうしても見たくて、試写会に走った。
ケン・ローチの「ケス」もキアロスタミの「友だちのうちはどこ?」もオルミの「木靴の樹」も大好きだから。

この作品、キアロスタミが「3人でできないかな」と残り2人に声をかけたのがきっかけらしい。
面識もなかった3人が「やろう!」と意気投合。実はお互いに相手の作品を細部まで覚えているほど思い入れのある同士だったらしい。
列車を舞台にしよう、と発案したのはオルミ。
結局、3人がそれぞれに自由に各パートを監督しつつ、1本の映画としてつながっていく仕立てになっている。

まず、オルミが、年老いた学者を主人公に列車旅を描く。年老いた学者が出張先で出会った美しい女性との短い会話を、列車の中で振り返っているうちに、遠く忘れていた情熱のようなものを取り戻し、ある一つの行動へとつながっていく、というストーリー。
もっとも叙情的で、もっとも列車という設定を上手に使っていた。
映画に映る車窓を見ただけで、旅に出たくて、胸が痛くなったもの。

次がキアロスタミ。
こちらはもう少しユーモアに満ちている。
兵役中の若者が、将校の妻の旅のおともをさせられるのだけれど、この女がとんでもないオバタリアンで……というような話。
さりげなく、本当にさりげなく、この若者の家庭の複雑さがにじみ出ているんだけど、決してその部分は出しゃばらない。
そこが、うまいなあ、と思う。

でも一番心に残ったのは、やっぱり、ケン・ローチが撮った部分。
スコットランドのスーパー店員の若者3人は、なけなしのお金をはたいて、大好きなセルティックというサッカーチームの国際試合を見に、ローマへと旅している。
ところがアルバニアからの難民一家と出会って……。

何を書いてもネタバレになるから書けないけれど、最初、この3人組は騒々しくて、ある部分で傲慢で思慮浅く、気はいいのだろうけれど、できれば列車でご一緒したくないタイプに描かれている。
けれど、彼らが彼らなりに難民一家の現実に触れた時、自分たちも金銭的にまったく余裕がない中で、ギリギリの選択を迫られる。
そこの描き方が、とんでもなくリアリティーがあって魅力的。

列車がローマの駅に到着し、アルバニアからの難民一家が家族との再会を果たすシーンを見たときの、スコットランドの若者の表情は、それはそれは何とも言えないもので、私は思わず涙をこぼしてしまった。
一筋だけ。

世界は、こういうどうしようもない奴等の愛すべき善意に満ちているんだなあ……とそればかり思った。
善意はある時は誰かを助けたり救ったりし、別のある時には、集団となって誰かを追いつめるのだ。

列車映画っていいなあ。
2時間の映画が、わずか1時間くらいに思えた。
10時間くらいの長さだったとしても、十分に楽しめたろうに。
もっともっと列車の行方と、人々の旅をみていたい、と思わずにいられない映画でした。

10月、渋谷シネ・アミューズで。
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ブログ内容とは逸れてしまうのですが、コメントのお返事ありがとうございます。返ってくるとはあまり予期出来なかったので嬉しかったです。わかりました、私はリスカしているのであなたの本を一度読んでみます。

みぃこさん。

半月以上遅れのお返事ですが。遅れてすみません。
最近は自傷についても色々な本が出始めています。色々と手に取って、でも苦しくなったら無理せず、読むのを止めて、自分のペースで読んでみてくださいませ。
プロフィール

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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