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息子の宿題3

最後の難関、読書感想文の後日談であります。
今夜はあまり急かさず、のんびり夜を過ごした後で、さりげなく聞いてみる。

母●「読書感想文、自分でやれるなら、好きな時にやりな。でも手伝いがいるなら今だったら付き合うけど」
息子▲「……。じゃあ、いまやる!」
母●「OK。じゃあ、さくっと終わらせよう」

息子が選んだ本は、自宅にある絵本版のシートン動物記。
「はいいろぐまのワーブ」。
母親や兄弟を人間の鉄砲に殺された子グマ、ワーブの物語。独りぼっちで暮らすうち、誰にも心を開かず、仲間もできず、一時は敵なしの強さを誇ったものの、最後は老いて、母親を思いながら一人死んでいく、という物語。なかなかの難物。

息子によると、先生からは「原稿用紙2枚目の半分以上、4枚目の5行目以下の長さで書くように」と言われたらしい。読書感想文を書いたことがない子どもたちには、なかなか大変な宿題なのだ。

母●「読書感想文って学校で書いたことある?」
息子▲「全然ない」
母●「そっか。じゃあ、とりあえず、原稿用紙に、読んだ本の名前と自分の名前を適当に書いちゃおう」

これで2行が埋まった。
が、次が続かない。

息子▲「何を書いていいのかわかんない」
母●「そうだなあ。とりあえず、物語を説明しようよ。このお話って誰の話?」
息子▲「ワーブ」
母●「ワーブって、何者だったっけ?」
息子▲「くまでしょ。はいいろぐま」
母●「じゃあ、まず、それを書けば?」

かくして本文の一行目が決まる。

ワーブははいいろぐまです。

母●「で、ワーブの母ちゃんや兄弟はどうなるんだっけ?」
息子▲「死ぬ」
母●「どうして?」
息子▲「さあ……。(本を読み直して)人間に鉄砲で撃たれるの」
母●「じゃあ、そう書いたら。独りぼっちのクマの話だ、ってところが大事なんだから」

息子はすでに嫌そうな顔で、ダラダラと書く。

母ぐまも兄弟たちもみんな人間に、てっぽうでころされて、一人ぼっちになってしまいます。

息子▲「まだ、原稿用紙半分もうまらないね。もうだめだ。絶対に2枚目までいくわけない!」
母●「ほれほれ、かんしゃくを起こすな。ワーブは大きくなったらどうなるんだっけ?」
息子▲「強くなるの」
母●「そうだよね。このページには『山の王さま』って言葉も出てくる。王様って普通、家来とか人にいっぱい囲まれてるもんだけど、ワーブはどうだっけ? そういうことも書いてみたら?」

ワーブは山の王さまだけど、そばにはだれもいない。

さて。問題はここからである。
およそ「感想」というものを書くのが大嫌いな息子に、いかに「感想」を書かせるか。

母●「ほら、ここまでで原稿用紙が半分埋まった。読書感想文の一番簡単な書き方は、最初にさくっと物語の説明をする。次に『もしも僕が主人公だったら、どう思うか』とその理由を書く。この場合だと、『もしぼくがワーブだったら……』ってね。想像してごらん。独りぼっちで生きるとしたら?」
息子▲「………わかんない」

だよなあ。
あんたが想像力をめぐらして、ワーブに共感し、思いのたけを母ちゃんに語るはずないよなあ。
この辺りから、息子のかんしゃくが爆発。

息子▲「やっぱり感想文なんてサイテー。もう書かない! 母ちゃんが見てるからもう書かない!」

売り言葉に買い言葉。

母●「上等上等。そもそもあんたの宿題だ。そのまま提出すればいいじゃん」
息子▲「半分しか埋まってないじゃないか!」
母●「じゃあ、一人で書けば? 母ちゃんが見てないほうがいいなら、母ちゃんは向こうにいるから、困ったら呼んでね~」
(と布団に寝転がる私)

さて、どうするか。
ここは根気比べ。
最初は一人でブツブツと悪態をついていた息子も、怒りにまかせて原稿用紙を破ったりはできないらしい。
10分くらいして、座り直したのを見て、ちょっとだけ優しい声でアドバイス。

母●「別に正しい答とかないんだからさ。『僕がワーブなら、一人だと自由でいいなあ』でもいいし『寂しいだろうなあ』でもいいし何でも思いついたことを書けばいいんだよ」

どうやら息子、一人で書き始めた様子。
3分が経過した後、

息子▲「母ちゃんの嘘つき! 書いても書いても2枚目なんかいかないじゃないか!」

と、またかんしゃく。

母●「書いたのを母ちゃんに見せてくれたら、2枚目を埋める一番簡単な方法を一緒に考えてあげてもいいんだけどな~」
息子▲「じゃあ、見てもいいよ」(憮然と)

息子はこう書いていた。

もし、ぼくがワーブでかぞくがぜえいんころされたら、○○くんの家とか△△くんの家に行ってあそぶ。
でもワーブは、ともだちがいないからそれができないからかわいそうに思った。
ぼくはそれができるからいい。


○○や△△には、息子の友だちの実名がしっかり書いてあった。
おもしろい。あまりにおもしろい。
親が殺されたら、友だちの家に行って遊ぶ、というのが最高に笑える。
ちなみに私は子ども時代、こういう場面でついつい、優等生っぽい読書感想文を書いてしまう、という病気を持っていた。
例えば、
「もし、私がワーブだったら、独りぼっちはさびしいだろうな。森でおいしいエサを見つけた時も、夕焼けがきれいな日も、星ふる夜も、一緒にわかちあう仲間がいない、家族がいない。そんなのいやだ。そう思ったら、家族がそばにいることがどんなに大事か分かった。家族や友だちを大切にしよう、と思った」
みたいな。

あーーーーーー、いやだいやだ。
学校の読書感想文教育に見事に取り込まれてたのね、私。
なーんてことを思い出しつつ、とりあえず、息子にアドバイス。

母●「いいじゃーん。いいねえ。母ちゃん、この文章、好きだよー。ところで、感想文を一番簡単に書く方法は、まず簡単に物語りを説明した後、『もしも自分が主人公だったら』と考え、思ったこととその理由を書く。それでも埋まらなかった時、一番簡単なのは、本や本を書いた人を説明しちゃうこと。さて、この本は誰が書いたでしょう?」
息子▲「シートン」
母●「ピンポーン。で、シートンってどの国の人?」

息子は本をあっちこっちひっくり返して、「アメリカの人」という。
厳密には、イギリス生まれで、カナダに移住した後、アメリカで作品を書いていたと思うんだが、ま、いいか。

母●「じゃあ、それを書こう。行数をかせぐため、『はいいぐまワーブ』は、シートンさんというアメリカの作家が書いた、とかなんとか、本のタイトルまで書いちゃえ。字数を稼げる」

息子は一気に書き上げる。

「はいいるぐまワーブ」は、シートンさんというアメリカのさっかが書いた本です。
どうぶつがだいすきな人で、「シートンどうぶつき」を書きました。


母●「よし。あと2行だ! あんた、シートン動物記が大好きでしょ? 一番好きな物語は何だっけ?」
息子▲「うーんとね。名犬ビンゴ」
母●「それで決まり。シートン動物記が好きで、一番好きな本のタイトル書いたら、原稿用紙の2枚目の半分を超えるぞ」

で、息子が書いた最後の部分がこれ。

ぼくは「シートンどうぶつき」が大すきです。その中で一ばんすきなのが「名犬ビンゴ」です。

かくして、宿題、終わり。
危うく口述筆記になりかけたけど。

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すごい。すごい!
感想文の書き方、ためになる実況中継!

息子くんの「かぞくぜんいんころされたら…」にも大笑い。

で、作文の部分だけをつなげて読んでみたら、すごく立派な感想文です。

さすがの構成力ですわ、お母様。

読書の大敵、感想文

子供のころは小国さんと違って感想文が下手で、したがって読書もそんなに好きではありませんでした。大人になって感想文を書かなくてすむようになると、本を読むのが大好きになりました。感想文を書かせるというのは、多くのこどもを本嫌いにしているのではと思います。ただ、本を読む楽しさを体得してもらえばいいのに、文章まで書かせるからいけないのよねー。

manaさん。

息子がもしも文章を書くのが好きな子だったらなあ。
最初の一文から凝りまくるテクニックを教えまくったと思う。
(いやあねえ。職業病!)
でも、
「かぞくぜえいんがころされたら」に匹敵するパワフルではちゃめちゃな作文は、私には無理だものねえ。

冷奴さん。

そうそう。
詩人、作家さんの中でも、読書感想文教育は、評判悪いのです。
私自身、あれのせいで、高校生ぐらいまで、すっごくかっこつけた文章を書くくせが抜けなかったもの。今でも思い出すと、冷や汗でますよ。
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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