★終末のフール(著・井坂幸太郎)地球に小惑星が落ち、8年後には地球は滅ぶ、と予言されてから5年が経った仙台市北部の造成住宅地「ヒルズタウン」が舞台の短編連作8作。
設定は突拍子もないとはいっても、なんだかどこかありがちなわけで、おまけに登場する人物も
・世界が滅ぶのが分かってから妊娠し、生むか生まないか悩む夫婦
とか
・深い確執を、世界が滅んでしまう前に歩み寄り、解きほぐした親子
とか、
やっぱり案外とありがちなわけで、
最初はあまり気持ちが入りませんでした。
300ページぐらいのこの本の本当に訴えたかったことがびんびんに響いてきたのは、290ページあたりから。
「ああ、私はこの最後の10ページに出会うためにこれまでの290ページを読んできたんだ」と思い至り、それで納得できる小説でもありました。
8つの短編を少しずつリンクさせるとか、
8つのタイトルを「終末のフール」「太陽のシール」「籠城のビール」「冬眠のガール」「鋼鉄のウール」「天体のヨール」「演劇のオール」「深海のポール」と韻を踏ませるとか、
それをオシャレと見るか、うまいとみるか、無理矢理と思うか。
そこもちょいと微妙に思いましたが。
井坂さん自身も確か、去年あたりにお子さんが生まれてお父さんになったんじゃなかったっけ。
子を思う親の心がとても深く描かれていて、その箇所だけどっしりと太く、力強く描かれている感じがして、好感が持てました。
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