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☆クリスチャン・ツィメルマンのコンサート(@サントリーホール)

☆クリスチャン・ツィメルマンのコンサート(@サントリーホール)

18歳でショパンコンクールで優勝したのが約30年前。
ショパンを生んだポーランドの国に生まれたピアニスト。
私のイメージだと、「何を弾いてもすごい人」。
例えば、「シューベルトなら内田光子さんが好き」とか「カツァリスは絶対にグリーグかショパンがいい」とか普通はそういうのがあるものなんだけど、ツィメルマンに関してそういうことを思ったことは一度もないんですよね。

で、行ってまいりました。

そもそも、今回のコンサート、会場のあっちこっちで「先生お久しぶりです!」とか「あーら、○○ちゃん、どうしていらした? え? 桐朋に決まったの。よかったわねー」とか、こういう会話が飛び交っていたわけで。
中学生の男の子が制服なんかじゃなく、きちんと黒のスーツを着こなして、会場で目を閉じながら指を動かし、聞き入ってるのを見たときにはもう、うちの野球少年と同じ人種とは思えなかったわ。
家族4人で来てる人とかね。全員でチケット代6万円だぞ。
悪いが私は、子連れで気を遣うより、一人で来るほうがいいな。家計にもあまり響かないし。
とまあこんな具合で。以下がプログラム。

*モーツァルト ピアノソナタ第10番k.330
*ラヴェル 高雅で感傷的なワルツ
*ショパン バラード第4番 op.52
*ショパン マズルカ 0p.24-1、24-2、24-3、24-4
*ショパン ピアノソナタ第二番op.35「葬送」

一曲目ですっかりノックアウト。
子供時代、ピアノを辞める前に弾いた記憶があるんだけど、そうかモーツァルトってこんなに幸せでカッコイイのか、という感じ。
それでいて、不思議な陰影もあったりして。ああ、素敵。

でもラヴェルからショパンのバラードあたりで段々と「もう、わかったよ。あなたが素晴らしい演奏家であることはわかったよ。なんかもうわかったよ」な気分になってきて、ショパンは集中して聞けず、なぜか妙にブルーな気分になっていったのでした。
このあたり、自分でも意味不明。
「もしかして私、ツィメルマンのショパンと相性悪いのかも……」

休憩の後、ツィメルマンは自らマイクを持ち、日本語で戦争反対の思いをとつとつと語りました。
そんな緊張感が残る中で、再びショパン。マズルカ。
こちらはどれも響きが美しく、気持ちよく聞けました。

こちらの気持ちが完全復活したのは、最後のソナタop.35。
第一楽章からして、実は好きなのだ。荒々しくて激しくてドラマチックで……。ツィメルマンが鍵盤を叩くと、うそだろ? と思うようなフォルテが出るのよね。
第一楽章が終わったあたりですでにもう、うっとり。

第二楽章は「ダダダダダン」の例のあれ。実はあまり好きじゃないのですが、ツィメルマンが弾くと緊張感がずっと維持される感じがしました。

そして、とうとう第三楽章。葬送行進曲、です。
今回のコンサートではやっぱり、三楽章から四楽章までが本当にすごかったんです。
これまで一度も聴いたことがないような葬送行進曲でした。
あの音がピアノならば、私が弾いてる楽器はきっとピアノじゃないんだ……と泣きたくなるような、とんでもない音でした。

深いホールの底から高い高い天井まで、重厚な音が充ち満ちて、その圧迫感に飲み込まれて、ただただ呆然としているところに、突然、あの、柔らかい中間部のメロディが流れてきたときはもう、心が震えました。
ピアノの音は柔らかいのに、大きなサントリーホールの静寂が逆に尖って体に刺さってくるような、不思議な感じ。
トリルの後の「シ」の音の美しさはもう、天にも昇る感じで、完全に体が惚けてしまったところに、再び始まるのです、あの重厚な主題が……。

重厚な音が重なり、ふくらみ、ホールに満ちて、「こんなところでめいっぱい音を出しちゃったら、次が続かなくなるんじゃないの?」と心配になっちゃうくらい一気に膨らませていくのに、全然限界が来ない。どんどん音が膨らんでいくの。ピアノのどこをどう叩けば、あんな音が出るんだろう?
全然知らなかったショパンと出会った気がしました。

アンコールもなく、葬送行進曲に圧倒されたまま、ぼーっとした観客がホールからユラユラと出て行く波に乗って、私も帰ってきました。

実は、恐ろしいことに、私の座っていた席の2列真ん前に、我がピアノ教師木曽センセが座っていたのには最初から気付いていたのだけれど、手を伸ばせば届くその距離の近さにひるみ、逆に声をかけられませんでした。

話したいことはいっぱいあったけど、感動はすぐに人にしゃべっちゃうと身体から抜けていきそうで。
今夜はもったいなくて、ほかの一切の音を聞きたくありません。
ピアノ練習も明日までお預け。
記憶の中の音に抱かれて、眠ることにします。


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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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