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幻のカニ、ならぬ幻の原稿「セイコガニ」

年末年始の紙面のドタバタで、掲載が立ち消えになった「セイコガニ」の原稿。
ほんとは来週14日の夕刊に載るはずだったんだけどなー。

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冬の風物詩、ズワイガニの季節である。越前ガニや松葉ガニといった主役の陰で、まだあまり知られていない小さなカニがいる。ズワイのメス、セイコガニである。開高健がこよなく愛したというこのカニを、とびきりおいしく食べる方法を探った。

ズワイガニは水揚げされる地域によって呼称が違う。北陸地方では「越前ガニ」、山陰地方では「松葉ガニ」と呼ぶ。これらはいずれもオスのズワイカニを指す。ちなみにタラバガニは本当はカニの仲間ではなく、ヤドカリの仲間だ。
さて、セイコガニである。オスよりはるかに小さく、甲幅も10㌢足らずのこのカニは、福井県ではセイコガニやセコガニ、石川県ではコウバコガニなどと呼ばれる。ズワイやタラバが足のカニ肉とカニ味噌を楽しむものなら、セイコガニで一番うまいのは卵(外子)とオレンジ色の卵巣(内子)だ。
オスに比べ、値段もずっと安い。福井県の卸業「福井中央魚市」のカニ担当者によると、「オスのズワイガニは浜値でも1㌔もので1ぱい2万~2万5000円。ところがメスのセイコガニは大きいものでもせいぜい1500~2000円。小さいのなら400円くらい」。これなら庶民の口にも入りそうだ。

■海の宝石箱
このカニを愛したのが開高健さん。こんな文章を残している。

<雄のカニは足を食べるが、雌のほうは甲羅の中身を食べる。それはさながら海の宝石箱である。丹念にほぐしていくと、赤くてモチモチしたのや、白くてベロベロしたのや、暗赤色の卵や、緑色の“味噌”や、なおあれがあり、なおこれがある。モチモチやベロベロをひとくちやるたびに辛口をひとくちやるのである。脆美、繊鋭、豊満、精微。この雌が雄にくらべるとバカみたいに値が安いのはどういうわけかと怪しみ、かつ、よろこびたくなる>(「サントリー・グルメ」第1号より)

開高さんが通い詰めたことで知られる福井県越前町の老舗旅館「こばせ」の主人、長谷政志さんは懐かしそうに語る。「1965年でしたか。ベトナム戦争から命からがら帰国した開高先生がどこか漁師宿を、と探してこちらに来られました。先生はセイコガニを『海の宝石箱』と呼んでおられましたので、私、『先生、今夜は手元が狂って宝石箱をひっくり返してしまいました』と差し上げたのが今の『開高丼』でした」
炊きたての白いご飯にセイコガニの味噌や卵をたっぷりのせて、しょう油をかけて食べる。長谷さんが開高さんに差し出した丼には、なんと25はい分のカニを使ったという。今でもこの宿では約7はいのセイコガニで作った4~5人用の「開高丼」(1万円)が人気。11~1月の2月余の間に毎年数百人が食べに来る。「中には日帰りでそれだけを一人で召し上がるお客様もおられます」と長谷さんはいう。

■バブルの後遺症
ズワイガニを水揚げする日本海以外で、このセイコガニを味わうにはどうすれば良いのだろう。福井県の卸業「福井中央魚市」のカニ担当者に問い合わせると、「私も上京した時に東京の市場を見て回りましたが全然流通してませんねえ。ズワイといえば高価なオスばかりで……」という。
おまけに「最近は福井の地元でもセイコガニの食べ方を知らない人が増えている。バブルの後遺症でしょうか。カニの値段が暴騰し、一時、越前ガニは1ぱい5万、10万、セイコガニですら4000円まで跳ね上がった。それ以来、セイコガニを食べる人が地元でも減ってしまった」という。なんともったいない話だろう。
東京で、この「海の宝石箱」を食べるには主に2つの道がある。
一つは、越前料理を食べさせる店を探すこと。
もう一つは、通信販売である。最近はインターネットを使って1ぱい1000円前後で取り寄せられるようになった。試しに記者も、6ぱい5800円(送料込み)でネット注文してみた。

…………とここまで。
なぜなら、カニは10日の夕方まで届かないから。
自腹切ってカニを注文してまで、原稿を書こうとしたのになあ。
ま、いいか。カニ食べられるんだし。
原稿では、この後、カニの卵を外し、殻を外して食べる順序を書く予定でした。
読者が、よだれたらして身もだえするような原稿を目指してたんだけど、その前に、開高さんの名文を引用しちゃったら、もう、あとは全部「蛇足」みたいよねー。

ちなみに、ネットでセイコガニを取り寄せるならあと2週間。
来年1月10日を過ぎると、また禁漁期が始まります。わずか2カ月の冬の日本海の味なのです

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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