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カレッジ授業報告2010秋3

授業第二日目も、Sember 先生は新聞記事を2枚使った。
実は、カレッジのウェブサイトにすでにアップしてくれてあった記事なので、今回は私も若干予習などしておいた。
できれば、発言してみよう、という意気込みで。
しかし、今回は逆の意味でなかなか難しかったのだった。

最初の記事は、affection alienation (愛情離反、とでも言うのか?)の法律上の取り扱いについて。
妻の浮気が分かったとき、夫が妻の浮気相手を相手取って賠償を求め、実際に認められた、という話。
その賠償金たるや、2億円以上!!! ひええええ、なのである。
こんなことが起こったのは、ノースカロライナ州。
実は、アメリカでは、愛情が離れた結果の浮気が、離婚訴訟などの慰謝料の根拠にならない州のほうが圧倒的なんだって。DVとか、そういう理由の離婚ならともかく、「別の人を好きになる」 というのは、過失にならない、ってことなのかしらん。
このあたりの専門的なことは、すみません、よくわかりません。
いずれにしても、日本では、浮気による離婚の場合、浮気した側に300万円程度(専門じゃないのでよく分からないけれど、確かこれくらいでしたっけ?)の慰謝料が認められる、はず。
ところが、アメリカでは、affection alienation が慰謝料支払いの対象になる州は、たった7つしかないらしい。それが、ノースカロライナ、ミシシッピー、サウスダコタ、ユタ、ハワイ、イリノイとあともう一つ(聞き逃した)。
結婚したカップルのモラル維持を目的にした決まりごとだそうだ。

「さあ、君たちに問題。夫が妻の浮気相手から200万ドル(約2億円)を得られるって結末をどう思う?」
「君がもしも浮気されたなら。さあ、相手にいくらの慰謝料を求めるかね」

この質問に対する学生たちの答えは、比較的、若者らしかった。

「冗談じゃないよ。彼女に値段をつけられるわけ、ないじゃないか」 と憮然とする青年とか (かわいい)。
「2億円? もっとふんだくってやるわ」 という勇ましい女の子とか。
「愛情が離れるには、その前にそれだけの理由があると思うんだ。だから、愛情の離反って、どちらか片一方の責任とはいえないんじゃないかな」 なーんてまじめそうに語っちゃう青年とか。(これも、かわいい)。

なんか、結婚十数年、の私には出る幕なし、という感じなのだった。

で、先生からの結論がどんなだったかというと……。

「つまり、何が正しくて、何が間違ってるか、なんて州ごとに違うんだ。君たちも、既婚の異性をナンパするときは、相手がノースカロライナ州やミシシッピー州の出身じゃないかどうか、確認したほうがいいよ。浮気するなら、ここ、メリーランド州の州内におさめておいたほうが身の安全だよ」

ははは。
身もふたもないな。

で、2本目の新聞記事。
こちらはオレゴン州の刑務所の話。
オレゴン州で、3人の殺人容疑で男が逮捕された。彼は刑務所で、カトリックの司祭を相手に、3人を殺したことを告白した。ところが刑務所が設置してあったカメラで、映像も音声も記録されてしまった。これを証拠に、この男を裁けるか?

というような問題。

日本人としては、当然、「被疑者の同意なしに、盗聴したテープに、証拠能力はあるのか」 というような議論になると思うんだけど。
なんと、議論はそっちには行かなかった。

曰く、カトリックにおける「告解」は、秘密にされるべきで、公にされるべきではない、というルールが破られることは、信教の自由、つまりアメリカ合衆国憲法の修正第一条の侵害ではないか。

さて、ここで問題。
この教室には25人くらいの主に18、19歳の学生たちがいたのだけれど。
Sember先生が 「さあ、この男は、この告解をもとに殺人犯として裁かれるべきか」 と問うた時、生徒たちはいったい、どう答えたでしょうか?

答。
わずか3人を除いて、全員が、「信教の自由が守られるべき。3人の被害者がいようと、たとえ殺人犯が無罪になろうと、司祭への告解が証拠採用されることは、信教の自由の侵害であり、あってはならないこと」 と答えた。
この結果には、ほんと、打ちのめされた。

これまで、アメリカという国は、日本から見ていては絶対に分からないくらいに、「神の国」 なんだと理解してたつもりだったけど。
あらためて、こういう結果を見せられると、愕然としちゃう。
(ちなみに、私は手すら挙げられなかった。そもそも、カトリックにおける告解とそれの取り扱いについての考え方すら、よく分からず、発言どころか、判断のしようがなかったからだ)。

でも。
ここからの Sember 先生流どんでん返しは、なかなかすごかった。

「そうか。君たちは、3人殺した男を裁くことができなかったとしても、司祭への告解は秘匿されるべきだ、と言うわけだな? ならば、これでどうだい? この男は、実は、カトリック教徒ではなかった!」

えええええええーーーーーーーーーっ!

教室がどよめいた。

「さらに。この男は、あちこちに刺青をいれた、ナチ信奉者だった」


ひええええええーーーーーーーーーっ!

さらに教室がどよめいた。


「おまけに、この男は27歳だったのだが、18歳の少年とホモセクシュアルな性関係を持ち、この少年に女のガールフレンドができたことに腹を立て、この少年と、ガールフレンドと、親友の3人の未成年を、なんと野球の金属バットで殴り殺したんだ。さあ、どうだ? これでも君たちは、彼が裁かれるべきではない、と言うのか?」

再度挙手を求める Sember先生。
果たして結果は……。
「告解を証拠採用してでも、この男を裁くべき」が、最初の2人から、18人に増えた。
(逆に言えば、それでもなお、告解は守られるべき、という生徒が5人程度いたってわけだ)。

生徒たちからは、ブーイングの嵐。

「先生、ひどいよ。そういう事実を隠しておくなんて」
「おや、そうかい? 法の前ではみな平等、なんじゃなかったっけ?」
「でも、先生、いくらなんでも、ナチ信奉男なんて……話が全然違うじゃん」

ってなわけで、授業の最後の最後まで大騒ぎなのだった。
先生は一言、こう結論付けて、授業を終わった。

「まあ、つまりだな。このアメリカって国では、自由と、秩序と、平等という3つの大切な価値観が、日々ぶつかりあってるってわけだ」

ちゃんちゃん。
本日もまた、Sember 劇場の面白さに、すっかり脱帽してしまったのだった。


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おもしろ~い。さすが、人気者の先生だね。若い脳をどこかの政党ひとつに仕向けるのではなく、柔軟で広い視野を持って問題解決できるように育てようとしている、、残念ながら政治のクラスだと自分の政党に洗脳しようとする教授が多いところ、やっぱりおぐにの前調査(MyEdu検索は大事よ!学生の意見は極端な感情的なものはFilterされてるし妥当な評価が多い)した甲斐があったね。いま勉強してること、本当に大事なことだと思うよ、政治って本当黒白つけらるのが人間の能力では不可能なところをつけないといけないことが多い。またレポート待ってます。

告解はカソリックにしかない儀式なんで、一概に「神の国」だから、といえないと思うんだけど、その先生はグランドゼロの近くにイスラム教のセンターを建設することについての議論しないかしら?アメリカの信仰の自由を揺るがす時事だと思うよ。

>うる
いや、この先生は、学生の思考を柔軟化するために、どんな宗教がバックにある人でも白黒つけられないトピックを選んでいるんだと思う。いちおう教授っていうのは教室では中立の立場をとる*べき*なので、どっちかの宗教だと必ずスタンスが決まってしまうようなのは、宗教論議に白熱してしまうからねえ、それは避けたいんじゃないかな。

ポポンさん、うるさん、コメント感謝です。

>ポポンさん。

そっか。政治のクラスだと、自分の支持政党に肩入れした授業になるのねえ。おもしろい!
むしろそっちのほうが私にしてみれば新鮮だったかも……。日本じゃなかなか、そういうの、ないものね。「不偏不党」が常に建前になってしまう。そんなこと、ほんとはありえないのに。

>うるさん。

告解の取り扱いについて、クラスの子どもたちが理解し、信教の自由を重んじることに何より驚いたんですよね。実際、このクラスの後、私も、ユダヤ教徒とか色々な他宗教宗派の人にもこの話をしてるんだけど、若い人もお年寄りもみんな「宗教活動の自由を守るべき。証拠採用してはだめ」と即答するんで、びっくりしてます。
日本で同じ授業をやったら、誓っていいけど、「宗教活動の自由」なんて問題意識で意見を言う子はほぼ皆無だと思うもの。せいぜい、「秘密裏に録音されたテープには証拠能力はなし」みたいな主張が出てくる程度で、宗教の話にはそもそもならないでしょうね。それくらい日本では、宗教やら信教の自由、って問題が遠い気がします。

グランドゼロの話はね、ある生徒さんがある時先生に質問したんです。「どう考えればよいんですか」と。先生のそのときの答えは、「ある人は言う。『モスクを建築する権利が彼らにはある。グランドゼロの2ブロック先であろうと、グランドゼロの真上であろうと』。法的にはこれはまったく正しい。でも、ある人は言う。『でも被害者感情を考えると、その場所はどうかしら』と。法的な判断だけで白黒つけられないから議論になってるんだろうね」でした。

Some say....って言い方で、ご自分の意見はあえて言わなかった、という印象を持ちました。

そういう意味では、ポポンの指摘してるように、かなり巧妙に素材を選んでいるのかもしれませんねえ。

実は私、アメリカの基本的な政治制度の知識すらなくて。三権分立とか、連邦政府と州政府との関係とか、小学生や中学生でも知ってるはずの基礎知識がないままで、この手の授業を受けるのって、かなり恥ずかしい話で、今になって、あわてふためきながら辞書引いてます……とほほ。

告解がされたのは刑務所の中だよね?ということはパブリックなエリアで録音されたということになって、盗聴とか密録にはあたらないと思います。パブリックなエリアで録画、録音されたものは本人の承諾を得なくても刑事事件の証拠に使えるということです。

グリー

手軽に出 会うのって最近はSNS系サイトですが、手当たり次第では大変ですよね?ですが長年してるとある種の法則が有るのに気づいたんですよ、今回は特別にコツを伝授します、グリーは特に簡単に出来ますよ。色々コツは有るので興味のある方はコチラに
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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