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カレッジ授業報告 期末レポートのテーマは・中編

まずは、選んだ記事について簡単に説明。

2009年3月に掲載された記事なんだけれど。
若い人の恋人探しのトレンドについて書いた記事。とある社会学者Qian氏の研究を引用し、過去10年間(1990-2000年)で、自分の民族と異なる相手と結婚した人の割合が、ラティーノで27%から20%に、アジア人で42%から33%に、それぞれ減少した、って話。
記事の中では、その理由について、2つの視点が提供されている。
一つは、別の社会学者のLichter氏のコメントで、「ラティーノとアジア人の移民が急に増えたことで、同じ民族グループの中に潜在的な結婚相手が増えたのだろう」 というもの。
いわゆる demographic availability ですな。
もう一つは、「アメリカ人の男性に、私たちの価値観なんて分かってもらえないだろうから」 とか 「(同じ民族の相手と一緒にいると)feel at home」 みたいなコメントが掲載されている。
自分のことを、より分かってくれる相手だから、みたいな話。

さてさて。
取りあえず、レポートの中では、昨今のアメリカの若者が結婚相手を選ぶ決め手となっている3つの要素(授業でやった話なもので)を挙げ、

1) Marriage resources,
2) Third-party normalization
3) Demographic Availability

この記事と、どう絡んでいるか、あれこれ論じてみた。
まあ、このあたりは、定石なので、英語で考えていても、なんら問題はない。
問題は、ここからなのよね。

概して新聞記事というのは、話を面白く、分かりやすくするために、物事を単純化したり、新しいトレンドばかりに光を当てようとする。その結果、意図しなかったとしても、読者に誤った印象を与えることだって起こりうる。
元新聞記者が、自戒と反省を込めて言うんだけどね。
スペースに限りがあるから、「もっとも、○○という考え方もあるし、▽▽という要素もあるし、□□という視点も必要なわけだけど……」みたいな注釈まで書ききれないのが、つらいところなのだ。

そんなわけで、レポートの中で、こんな風に話しを展開してみた。

「では本当に、ラティーノとアジア人の間で、同族婚傾向が強まっている、と簡単に言い切って良いのだろうか」。

そして、考慮すべき点として以下の4つを挙げてみた。

1、アメリカにおける同棲の急増が、何らかの影響を与えている可能性がある
2、一言でアジア人、ラティーノといっても、実は、出身国や男女別で大きく傾向が違う。たとえば、アジア人の中でも中国人の同族婚の割合は40%を超えるが、韓国人、日本人、フィリピン人ではずっと低い。また、アジア人では男性のほうが同族婚の割合が高いが、ラティーノの間では逆に、女性の間に同族婚の割合が高い、という研究もある。
3、アメリカに来て何年になるか、という年数について、より考察が必要ではないか。

そして、これが一番書きたかったんだけど、

4、記事だけ読むと、まるで 「ラティーノとアジア人って、同族婚志向が強いんだー」 という印象を読者に与える。記事は、アメリカ全体の民族・人種を越えた結婚の状況に一切触れていないが、実は、ラティーノとアジア人が別の民族と結婚する割合は、白人や黒人が他人種・民族の相手と結婚する割合よりずっと高いのだ。

ちなみに、2000年に20-34歳の白人の結婚のうち、他の人種・民族と結婚した割合はわずか2.7%。黒人では、女性でわずか3%、男性でも14%だ。(実は、この男女差も、とても深いジェンダーの問題をはらんでいると思う)。
実際の話、周囲のアメリカ人の友人に話しても、こういうデータを聞くと驚く人が多い。

「ラティーノとアジア人は、同じ民族で固まってばかりいる」という印象がよほど強いんだろうなぁ。
この記事を書いた記者さんは、別に誤った認識を固定化するつもりは全然なかったと思う。むしろ、これまで民族を超えた結婚がどんどん増えていたラティーノやアジア人の間で、「民族回帰」みたいな揺り戻しがあると考え、実に面白いニュースだ、と思ったに違いない。

「新しいことはニュースになるが、新しくないことはニュースにならない」

これが新聞の弱点の一つだなあ、としみじみ思ってしまったのだった。

実は、我らがサントール先生だって、案外、このあたりは、印象が先走ってた感がある。
ある時授業で、「白人、黒人、アジア人、ラティーノ、さて、どの人種・民族がもっとも、他人種・民族と結構すると思う?」 みたいな質問を出した。
色々と意見が出た後で、サントール先生は物知り顔に言ったのだ。
「実は、白人なんだよね」
それから、「highly educated な人は、他の人種・民族と結婚する割合が高い」と。

この時、生徒の中では、黒人の男の子たちが、どうも腑に落ちないという顔で、首を傾げていたのが印象的だった。

今回レポートを書くにあたって、私が見つけたデータとどうしても整合性があまりにないので、「どこからの引用ですか」 とあらためて質問した。
そしたら返事がこれ。

「実は、間違ったデータでした。君が探し出したデータのほうが正しい。僕のはどうやら、他人種・民族と結婚した人数の実数で得た印象でしゃべってしまっていたらしい」

実数で勝負したら、人数の一番多い白人が圧倒的に有利だわな、そりゃ。
ちなみに、先生の言った 「highly educated な人は他の人種・民族と結婚する割合が高い」 も、もう少し詳細な説明が必要な項目だったといえる。

実は、学歴が上がるほど、白人と結婚する比率が上がる、というデータはある。
興味深いことに、アジア人やラティーノの間では、カレッジまで進学した人の間で白人と結婚する比率がぐっと高まる。一方、黒人の間では、たとえカレッジまで進学しようと、白人と結婚する比率にそれほど大きく影響しない、という。
これもまた、根深い話だと思った。
また、マイノリティーの社会経済的なステータスと 「白人と結婚する比率」 との関係というデータもある。
概して、ステータスが上がれば上がるほど、白人と結婚する比率は上がる。学歴との関連性と同様、白人との 「出会い」 が増える、ということが一番の理由とされている。
ところが。
アジア人の間では、この社会経済的なステータスが 「白人と結婚するか」 を大きく左右するのに比べ、比較的、裕福でない家庭も多いラティーノの間では、これらのステータスが 「白人と結婚するか」 にそれほど影響しない、という。
身も蓋もないが、これについては、「肌がどの程度白いか」が主な原因だろう、と多くの学者が指摘しており……。

とまあ、調べれば調べるほど、3枚のレポートになんか収まりきれない、重たい現実がボロボロと見えてきたのだった。
結局レポートって、書くことより、書くために調べてる時のほうが、おもしろいよなあ。

そんなわけで、「この記事の内容だけを持ってして、ラティーノやアジア人の間で、同族婚傾向が強まっている、というようなことを簡単に言い切ることはできない」 という結論を書いたところまでは、結構簡単に済んだのだった。
で、私が行き詰まってしまったのは、実はここからなのだった。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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