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懺悔の朝

いつものように、「母ちゃん起きて!」の息子の声で起こされた。
いそいで朝ご飯を作っている間に、息子は最近、さっさと先に着換え始める。ところが今日はかんしゃくを起こした。「もう! ズボンも長袖もない!」

……まずい! 今週は超忙しくて、洗濯機を1度も回していないのだった。
普段は週に2~3回洗濯機を回すんだけど、朝に余裕がない日が続くと、ついつい後回しにしてしまうもので。
どうにかタンスの奥からズボンと長袖を探してやったが、気に入らなかったらしく、いったん洗濯かごにいれた服を取り出している。
おまけに「時間なんか止まれ。時間なんかなくなれ。時間なんか死ね!」と呪詛の言葉を吐き散らしながら。

朝のスタートがこんなだと、ついついお互いにイライラしてしまう。
「死ね!」の言葉だけは看過できず、「母ちゃんは『死ね』って言葉だけは許せない、って言ってきたよね」とついさとしてしまう。
そこへ、朝からシャワーを浴びて上がってきた夫が息子をみて私に、「あいつの髪の毛べったべたじゃねーか。どうして昨日、風呂に入らなかったんだ!」といきなり前夜のもめごとを蒸し返すようなことを言う。

私、一瞬にしてぶち切れ。

実は前夜、風呂をめぐって夫婦ゲンカをしたばかり。野球中継をみたり、野球ごっこを親子でやったり、馬跳びをやったり、親子で遊べる時間がほんの数時間しかないゆえに、やりたいことがたくさんあって、本当に夜は忙しい。ついつい、「死ぬわけじゃなし」と風呂が後回しになってしまう。
そんなこんなで3日間、風呂に入れなかったことに夫が先にぶち切れ、
「おまえなあ。それって児童虐待だぞ。耳の後ろとか黒くなってないか? 学校の先生は児童虐待の有無をチェックする時に耳の後ろを見るって聞いたぞ」とか言う。
うるさいなー、だったらあんたが平日1日でもいいから息子が起きている時間に帰宅し、風呂に入れてみろよ! とまあ、話はいつもの展開へ。
「喧嘩しない夫婦より、本音でぶつかれる夫婦のほうが美しい」がモットーの我が家では、こんな昨夜の出来事なんか夫婦ゲンカのうちにも入らないような、ただの言い合いだったんだけどね。

「時間なんか死ね!」と呪詛の言葉を吐きながら、洗濯かごから探し出したお気に入りの服に袖を通している息子に「髪ベタベタ」発言はあまりにバッドタイミング。
小声で「このタイミングでそれを言うなよ!」と夫に文句を言ったが、事情を知らない夫はのんきに「何を怒ってるの?」

ぶち切れた私は、とりあえず、冷静にならねば、と洗面所へ。

後悔しながら洗濯機を回し始める。大量にたまっていたので、まずは息子の洋服から。
ありゃりゃ、先週末の野球のユニフォームもまだ洗ってなかったか。
ってなわけで、当然、息子の服を優先すれば、夫の下着類は排除されるわけで。
ところがこれを見つけた夫が今度は激怒。
実力行使に出た。自分の服を入れ、私のを排除しようと洗濯機を止め、探し始める。
おいおい、やめてくれよ、時間がないんだよ、今朝も。

そんなこんなで険悪なムードの朝。
息子がとうとう、本音を言った。
「学校も学童も行きたくない」
出た出た。

「時間なんて死ね」発言を聞いたあたりで、今朝はこう来るな、と予感していた。
実は本日は、「6年生を送り出す会」とかいうのがあって、そこで1年生は物語を順番に暗誦する予定。ところが息子の次のパートを読む予定だった女の子が昨日は欠席したため、場合によっては急遽、息子が2パート読むことになってしまったらしい。
これが心配で心配で不安で不安でしかたなかった息子は、実は昨夜からかなり嫌がっていたのだ。
なにしろ、行事という行事の前に「あしたが来なきゃいいのに」とか言うタイプですから。

だから、今朝だけは万全の態勢で、和やかに、息子の気持ちを受け止めようと昨夜は思っていたはずなのになあ。
蓋を開けてみれば、ギスギスした雰囲気の朝。
あああああああああ、反省。

すでに腕の中にすっぽり入りきらないほどでかくなった息子を膝に抱く。
「学校、行かない。行きたくない」という息子の背中をなでながら、「そうかそうか、行きたくないか。そうかそうか、行きたくないか」と、ただただくっついている。
背中をなでたり、たたいたりしているうちに、それは音楽になっていく。

「いーーーーーーーーーきたくない、いきたくない」「そりゃ、どうした」「いきたくないった、いきたくない」「そりゃそうだ」「いーーーーーーーーーーーーーーーーーきたくない、いーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」「あ、そりゃ!」

気付けば、背中をなでる私の手は、太鼓代わりの息子の背中をポンポンと調子に合わせてたたいており、息子もいつものことなので、「いーーーーーー」と声を伸ばしては、太鼓に揺れる音色を楽しむ。しばらくやってるうちに、ちらりちらりと時計を見始めた息子は、出発5分前になったらひとたび私の膝を降り、ランドセルの中に今日の教科書を突っ込むのだ。

準備が終わるとまた私のひざの上。私は今日のスケジュールを確認し、とりあえず、いつもより30分早く退社し、学童にスペシャルでお迎えに行ってあげる、と約束を交わす。少し息子の表情が緩む。
さらに「行きたくない」音頭を5フレーズほど繰り返した後、息子はやはり自分から私のひざを降り、ランドセルを背負い、あきらめたように自分から学校に出かけていった。

そのあとの夫婦の会話。
「やっぱりストレスがたまってるのかなあ」と私。
「たぶん、単に今日の行事が不安で、そうなるとすべてがいやになってるだけだよ。行事がうまく終わったら、それで全部忘れるから大丈夫。おれなんか、今でもよくそんなことがあるぜ」と夫。
「そんなもんかなあ。私、そんなに単純じゃないから、全然わからん……」と私。

不思議だなあ、夫への怒りはものすごい加速度を付けて頂点を極めるわりには、数分後には消えてしまう。
一方、息子を案じる思いや、「学校に行きたくない」発言を聞くたびに私の中に広がる、名付けようのない重たーい感情は、半日ぐらい消えない。

今日は、かくも懺悔の朝で始まりました。
洗濯したし。学童にお迎え、というやつを今日はやってやらねばならないし。
そうだそうだ、今夜は風呂にも入ろう。
あさっての学童の遠足のお弁当の材料の買い物もまだだったわ。
ああああ、時間がない。
と思っているうちに出勤時間。
今日も良い日になりますように。


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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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