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息子、初のお泊まりキャンプ・上

息子が、カルリプケンというメリーランド州では大英雄の元大リーガーらが主宰する5泊6日のサマーキャンプに参加した。
ということで、不良母ちゃんの私は、毎晩飲み歩いているわけである。
鉄人カル・リプケン、と呼ばれるのは、「2632試合連続出場」 という記録のためらしい。

そもそもの始まりは数週間前。
そういえば、カルリプケンが主宰するサマーキャンプがあったな~なんて、ウェブ検索したのがきっかけ。
そしたら、こんなページが出てきた。
日本の旅行代理店が、日本の野球少年を募って、カルリプケンのキャンプに参加させよう、というページ。
そのお値段たるや、おお、なんと、交通費別で約30万円!

実はこのカルリプケンの5泊6日のキャンプは、お値段も1500ドルほどして、ひええええ、とひるんでいたのだけれど、日本から参加させたら、倍以上かかるわけである。
ならば……と思わず、カルリプケン・アカデミーにメールしてみたのであった。

そもそも、息子が参加できるのは8月上旬の1週だけであり、でもそこはすでに満杯で、募集を締め切っていた。そこをあえて、「空きはありませんか?」と聞いてみた。
そしたら案の定、「その週はもう、いっぱいなんです。でも、その前の週なら空きはあります。どうですか?」 と来た。
ここで引き下がらないのは、アメリカで得た生活の知恵だ。
2つほどエサを撒いてみた。
曰く、

「その前の週は、息子は、スミスバーグのトーナメントに出ているので参加できそうにありません。というのも火曜日に決勝戦が予定されているからです。息子のチームは、すでにエルクリッジ、RBBA、Cove Creek Park といったトーナメントですべて優勝しており、スミスバーグのトーナメントでも決勝戦進出は固いと思われます。それゆえ、空きのある週には参加は不可能です」

さらに、

「息子は1年半前にアメリカに来ました。アメリカという国になじみ、この国を好きになれたのは、すべて野球のお陰です。だからこそ、ぜひ、アメリカにいるうちに、カルリプケンのキャンプに参加させたいと思ったのです。息子は来年夏、アメリカにいるかどうか分かりません。ぜひ、今年中に、アメリカならではの体験をさせたいのですが……」

と。
そしたら、びっくり。
わずか5分後に返事が来た。
「息子さんを、ご希望の週で受け入れます」

さて。
私の撒いた2つのエサのどっちが功を奏したんだろうか?
いまだに不明。
もしかしたら、それなりに強いトラベルチームに所属する少年であれば、カルリプケンのサマーキャンプだけでなく、今後もプライベートレッスンなど色々な局面で、「おいしいお客さん」 になるだろう、という読みをされたのかもしれないし。
あるいは、全米、というより、諸外国からも野球少年がやってくる、というのがこのキャンプのウリでもあるので、こういう毛色の違う子どもを受け入れたい、ということだったのか。
いまだもって不明。
しかし、はっきりしたことは、「すでに売り切れ」とか、「応募締め切り」とか書いてあっても、ああでもない、こうでもない、とアプローチすれば、結構、門が開いちゃうのがアメリカなのだ。
まさに 「言ったもん勝ち」 の世界。
というか、きちんと自己主張や自己アピールできないと、なかなか門は開かない。

日本だとこうはいかないと思う。
どっちが良いかは別にしても、ね。

ということで、「受け入れます」のメールをもらった段階で息子に相談した。
「あんた、行ってみない?」と。
たぶん嫌がると思った。
息子は、ものすごく引っ込み思案で、こういう普通のサマーキャンプでも、チームメートやクラスメートがいないと参加したがらない。それが今回は、チームメートもクラスメートも誰も知り合いのいないキャンプに、それも、息子としては初めてのオーバーナイトキャンプだ。おまけに5泊6日。
ちょっと初心者にはキツイかな~、という感じでもある。

ところが息子はみょうなところに関心を示した。
「ここすごいね。キャンプに参加したら、ジャージーにベースボールパンツにスパイク、おまけにカルリプケンのサイン入りの写真までもらえるんだって! ほしいなあ。行く! 俺、行くよ!」
驚いた。
まさか、自分から行きたがるとは思ってなかったから。
物欲とは、こうも人間を変えるのか?

それで申し込んでしまった。
1500ドルだよ。
おまけにリファンド不可。
ひええええ、なのだ。

キャンプが近づくにつれ、案の定、息子が怖がり始めた。
いよいよ、彼の本領発揮、と言うべきか。
「母ちゃん、やっぱりいやになってきた」 と朝も夜もなく口にし、
「ああ、どうして、調子に乗って、『行きたい』なんて言っちゃったんだろー。あの時、行きたくない、と言っていれば人生変わっていたのに!」
と、あれこれ言った挙げ句は、泣きべそをかき、
「母ちゃんと一緒にいたいよー。父ちゃんと一緒にいたいよー」。
ああ、もう、へなへなへな~。
なんちゅう、軟弱な!

それでも、母親とは弱いもので、ついつい、「ここまで嫌がるんじゃ、無理かも」 なーんて一瞬、思ってしまった。
そしたら、夫が、あきれた顔で言う。
「おまえ、そりゃ問題だぞ。なにかって、君のほうの問題。こういうのは、パーンと突き放して、無理やりでも行かせる選択肢しかないだろ?」
そう言われて、あらためて、気を引き締めたのだった。
泣かれようと、何と言われようと、たたき込んでやる!

キャンプの前の2週間は、親としてはなかなかスリリングだった。
スムーズにキャンプに行けるか、前日あたりから不安が高じて熱を出さないか。
おまけに、数日前に、猫のいるお宅に遊びにいったら、猫アレルギーだったらしく、夜中に喘息発作のような状態になったりもして、あわてて医者に行き、いざという時のための薬を用意したり、むちゃくちゃ忙しい日々だった。

息子はといえば、
ある夜は泣き、
ある夜は諦観し、
そのくせ、この夏最後のトーナメント試合の後、チームメートのブランドンのパパから 「とうとう1カ月のオフだね。野球は全然やらないのかい?」 と聞かれた時は、平然と、「あ、僕、カルリプケンのキャンプに行くんです」 なーんて答えちゃっていた。
ブランドンのパパから、「そうか! ブランドンを来年行かせたいと思っていたところだから、ぜひぜひ、どんなだったか報告してくれよ」 なーんて肩をたたかれ、ますます後戻りできないのだった。
ははは、ざまーみろ。

さらに、いよいよ出発日の前日にあたる土曜日は、夫婦して、名付けて 「不安になる余裕すら与えないで、ぐったりと疲れさせて、眠らせてしまおう」 計画を実行。
すなわち、お友達の日本人家族と一緒にデイキャンプ。炎天下、ボートを漕ぎまくった上、バーベキューをし、雨の中テントに避難したり、草っぱらで子ども同士で走り回ったり……。
結局、親子でヘロヘロになるまで遊び倒したお陰で、出発前夜の土曜日、息子は、「怖いよー」 と言う余裕すらなく、爆睡した。
翌日の証言によると、さすがの息子も、「俺、一瞬にして寝ちゃったよ」 だったそうである。
作戦成功!

というわけで、日曜日、息子を車で1時間ちょっとの所にあるキャンプ会場まで連れて行った。
息子は完全に緊張しまくっており、ほとんど、親の話す言葉さえ、耳に入らない様子。
じゃあね、と言うと、あっさり、「うん」 と手を振った。
さすがに情けなさそうな顔一つしなかった。
見栄があったのか、あるいは、緊張のあまり、無表情になるしかなかったのか。
どっちにしても、まあ、不安なこと、怖いこと、嫌なこと、全部ひっくるめて良い経験となるだろう。

部屋は4人部屋。
2段ベッド2つだったんだけど、すでに下段は2つとも先客で埋まっていて、「ひえええ、これじゃ息子、落ちちゃうわ。とにかくとんでもなく寝相が悪いのよー」 などと言ってみたら、ルームメートの子どものパパが機転を利かせて、ベッドをあっさり解体し、下のベッドの隣に上のベッドを並べてくれた。
こういうところの行動力は、本当に、アメリカ人はすごい、といつも思う。
日本だったら、「まずキャンプのスタッフに、上のベッドを移動させていいか、相談してから」 となるし、その作業も、スタッフの人と相談して……となるだろう。
でも、こっちじゃ、「あ、このベッド、はずせるよ。解体して、2つ並べたらどうだろ」 と言いながら、すでにベッドを下ろしてるもの。

今回のキャンプ、息子が一番不安がっているのは次の3つ。

・日本食が食べられない。アメリカの食事を5泊6日も食べ続けられるか?
・ウォシュレットがない。自宅のウォシュレットに慣れきったお尻が、それなしに排便できるか?
・友だちがいない。

親としては、一番心配なのは3番目なんだけど、息子はむしろ、1番目と2番目を本気で心配している。あいかわらず、変なヤツだ。

親がなぜ、3番目が心配かというと、息子の性格のせいだ。
自分から誰かに話しかけて友だちを作っていく、というのが、とても苦手なヤツだ。
そういうソーシャルスキルを段々と身につけていくべき小学校中学年で、アメリカにやって来て、言葉の壁にひるみ、おまけに 「外国人で言葉ができないんだから仕方ない」 という言い訳まで自分で身につけて、結局、自分から話しかけて友だちを作る、ということがいまだにできずにいる。
もはやこの性格は変わらないかのようにも見える。

でも、短期決戦には弱くても、長期戦になれば、なんとなく、いつも友だちに恵まれるヤツでもある。
2泊3日のキャンプじゃ無理でも、5泊6日もすれば、どこかに自分の居場所を見つけるだろう。
……というのが親の希望的観測。
ああ、どうなることやら。
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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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