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★死刑 (著・森達也)

★死刑 (著・森達也)

アメリカに来て、読んだ本の感想なり、心に残ったことを、すぐに書き留めるという習慣が途絶えてしまっているのだけれど、それをものすごく後悔するような時があって、例えばこの本なんかがまさにそれ。
あんなに色々なことを感じたのに、その時の生々しさをもはや思い出せない。それはとても悔しい。

覚えてるふりして書いても仕方ないので、心に残ったと記憶している箇所について列挙しておく。まさに私の私だけのための備忘録。

■死刑反対の活動をしているグループと一緒にいる時の、「居場所のなさ」「引け目」について書いた箇所。(p.16)。

僕は何だろう。少なくともボランティアではない。本を書くために、つまり死刑がらみで何かネタはないかと思ってここにいる。思想や信条はない。淡いものはあるけれど、それは思想や信条ではなくて情緒だ。さらに好奇心。」

「淡いもの」「情緒」「好奇心」。どれもとてもよく分かる。こういうのをきちんと言葉で言い表すのが苦手な私は、もっと漠然としたフワフワした言葉に逃げがちなんだよなあ、とちょっと自分を戒めた。

■教誨士T氏へのインタビュー。(p.222~)。

もしも、イエス・キリストが執行のその場にいたとしたら……という森氏の質問へのT氏の答は、「……暴れるかもしれないね」 だった、ということに、衝撃を受けた。こんな言葉が出るからには、きっとT氏はそれまでにも、何度も、死刑と宗教に絡む具体的なイメージと対峙してきたんだろうな、と。

■情緒を見極めるプロセス。(p.243~)。

えん罪や誤判が多かろうと、社会防衛の効果がなかろうと、死刑制度がなくならない理由を、著者は 「論理ではなく、情緒だ」 とする。そして、情緒、のほうをさらに探っていこうと方向を定める。
森さんのことだから、この取材を始めた時には、ある程度、そういう方向に最後は向かうだろう、ということは見通していただろうに。
本書は「死刑をめぐる3年間のロードムービー」といううたい文句でよく表現されるわけだけれど、「ロードムービー」には、ここまでの240ページの「過程」が必要なんだ。

■藤井誠二さんと著者との対話。(p.265~)

「僕と藤井とは、(中略)入口も途中も近いのに、出口が違う」と思いながら、著者は、ものすごく丁寧に言葉を選びつつ、藤井氏にインタビューする。また自分の思いを吐露する。何度も何度も、「自分で自分が何を言おうとしているのか分からない」 と思いつつ、言葉にする。
それが妙にリアリティーがあって、たまらないのだった。

■犯罪被害者と著者との対話。(p.284~)

文京区音羽であった幼女殺人事件の被害者の祖父へのインタビュー。この祖父の言葉の重さにまずうたれるが、このあたりでようやく、著者が 「情緒を見極める」 ために何をしようとしているかが明確に見えてくる。

僕は第三者だ。非当事者だ。でも思うことはできる。

だから、「多くの人に触れることで、揺れ動く自分の情緒をみつめよう」と考えたのだ。著者のこれらのプロセスを読むことによって、読者もまた、「自分はどうなのか」 と常に突きつけられていく。

最後の最後まで、死刑制度をどう考えれば良いのかに安易な結論を出さず、人に会い、目をそらさず、自分のほうを揺らしてみる。
相手を知ったから、会ったから、その人を 「殺したくない」「救いたい」 と考える。

結局、この本を読んだ読者が突きつけられていることは、たった一つなんだろう。
この本は出版当初から大きな話題を呼んだ本で、「最初から死刑反対を訴えるつもりで書いたんだろう」とか「情緒に流れたところが限界だ」などと著者を批判する声もあれば、「これまでにない非常に説得力のある本だった」とか「死刑賛成・反対の両方のスタンスの人に訴えるものがある本だ」などと著者を絶賛する声もあった。

でも、森さんが読者である私に求めていることは、たぶん、全然違う。
彼が私に言いたかったのは、

僕やあなたが同意しているからこそ、死刑制度は存続している。
僕やあなたは罪人を殺すことに荷担している。
死刑囚については第三者なのに、死刑制度については当事者なのだ。


という部分で、もっと言ってしまうならば、

「当事者なのだ」

という一文だけなのかもしれない。
何度かお目にかかったことのある森さんの顔を思い出しつつ。
それから、2007年にインタビューした原田さん、お元気かしら、と案じつつ。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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