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★翻弄者 (著・藤原章生)

★翻弄者 (著・藤原章生)

元職場の先輩が新しい本を書いた。わざわざ著者献本の1冊を割いて、アメリカまで届けてくださったことにまず感謝。

3部構成で、著者が海外赴任中に出会った人物3人を取り上げている。バグダッドの預言者、ケープタウンの運転手と娼婦、キューバの詩人といった具合。
バグダッドの予言者は、サダム・フセインのお抱え予言者として十数年間も宮殿に軟禁されていた人物。となればもう、新聞にしろ、テレビにしろ、雑誌にしろ、メディア的にも取り上げてみたくなる人物で、この本の編集者としても彼の話を最初に持ってきたくなるのは当たり前、と思う。

文章も、私が著者の本を読んだ範囲内では、一番 「日本の新聞文体に近い」 気がした。どうしてかな。これはよく分からない。
著者が数年前に出した本「絵はがきにされた少年」を読んだ時の最初の感想は、「文体が、英語か何か外国語で書かれた本の上手な翻訳書みたいなリズムだ」 というもので、それが妙に心地よかった記憶があるのだけれど、それは今回は特に感じなかった。
その分、読みやすくて、私には馴染みやすかったけれど。

一方、3つめの物語、キューバの詩人のほうは、これまた弱冠文体が違う。個人的にはこの文体が一番好き。相手の詩人との出会いの中で生み出されたものなのか、単に書いた時期の違いによるものなのか、よくわからないけれど。
それにしても、目の前の人間の中に段々とのめり込んでいき、気づけば、その人物の心のありようのまま、世界が見つめられるようなことが、実はあったりするんだろうか、なんてことをふと考えた。

でも、本当の話、たぶん、一番読んでいておもしろかったのは、2つめの物語かも。ヤクチュウの娼婦に夢中になる運転手の話。これは、なかなか、こたえた。
メディアの人間はふつう、こういう相手にのめり込んで取材することはない。やっぱり、有名人であったり、ニュースの渦中にいる人物を選んでしまうし、そのほうが書くのも楽だし、発表の場も多いから。でも、確かにいるのよね、そういうのとは無関係に、むちゃくちゃ気になる、どうしようもない相手って。

著者がこの運転手のどんな風にくっついて回ったのか、もうちょっと知りたい。ほとんどストーカー状態だったんじゃないか、と想像してみる。
そこまで書いちゃっていいのか。
そこまで他人の心のうちが本当に分かったと思えるのか。
何がその人にとっての真実かなんて、分からないのに。
いったいどこまでが、その人のことで、どこからが自分自身のことなのか、それを隔てるのは何なんだろう。
色々なことを思いながら、読んだ。

作家塩野七生さんのメッセージが帯にあった。
世界のそこここで生きる人々の「低き声」に耳を傾けた作品、というような言葉があった。「まるで、人々のほんとうの想いは低い声にしか表れない、と言いたいかのように。」とも。
「低き声」という言葉は好きだけれど。
「ほんとうの想い」という言葉は、できれば好きになりたくない。

一番好きな文章を一つ。
233ページ。

イラムはレイナルドの本を数冊しかない書棚に戻した。そして、しばらく本の背表紙を眺めながら、祈るような気持ちで言葉を待った。詩の一部を。
何も現れなかった。でも、特に気にしなかった。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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