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ジャパン・クラブに呼ばれて/後編

ほんとは、着物でも着て登場したかったんだけど。
ジャパンクラブに呼ばれていた時間帯が、私のカレッジの授業の直後で、おまけに、カレッジの直前には、合唱の練習もあったりして、とうてい着物を着る時間的余裕はなかったのだった。

かつて、日本文化紹介といえば、

・書道の実演や体験
・華道の実演や体験
・茶道の実演や体験

などなど。
つまり 「道」 の紹介が多かったと思うんだけれど、なにしろ、このジャパンクラブ、何かといえば、日本のマンガとアニメ好きが集まって、学校に部活として認めてもらって、学校の施設を使って、正々堂々とマンガやアニメを楽しもうぜ、というようなクラブなのだ。
前もって届いた質問といえば……

「あなたの好きな shojo manga は何ですか?」
「あなたの好きな shonen manga は何ですか?」
「あなたはどんなキャラクターのマンガが描けますか?」

だって。
描けないよ~、ってば。
せいぜい、ドラえもんくらいなら描けるかな、と調べてみれば、なんとなんと、世界各国で翻訳され、特にアジアや中東では大人気で、外務省の「アニメ文化大使」 にも任命されたドラえもんなのに、実はアメリカではほとんど知られてない。漫画の英語版も出ていない。最近、映画が弱冠紹介された程度なのだ。
まあ、未来から来たロボットに、「ドラえもん~」と泣きついてばかりの主人公、なんて、アメリカじゃあ、受けようがないよなあ。

それ以外には、ゼポリアが私を子どもたちに紹介する時に、私の著書なんかについても触れてくれたらしく、日本とアメリカのいじめの違いについて教えてほしい、というような質問もたくさんあった。
思った以上に、「いじめ」 に関する質問が多かったあたり、この国でも、いじめ問題は、子どもたちにとってとても身近なのだろう。
まあ、日本のマンガ好きなら、学園モノマンガには必ず出てくるテーマだしねえ。

そんなわけで、あれこれ悩んだ末、以下のようなコンテンツで攻めてみることにした。

まずは自己紹介。
そのあと、日本の中学や高校ライフを写したビデオクリップをyoutubeで選んで紹介。
(制服、弁当、ラッシュアワーの通学、など)
「いじめ」の日米比較。
着物を軽く着せてやる (というか、はおらせてやる、がせいぜいだけど)
日本語の説明。
私の持ってる日本のマンガについての説明と、その回覧。
折り紙教室。
お箸の使い方……。

あとは反応を見ながら、テキトーに、と。
一番時間がかかった準備は、私の持ってるマンガについて、英文の説明を作ることだった。案外、それぞれのマンガがこの国で翻訳されているのか、どのように世界で受け止められているのか、って私自身が知らなかったから。
すごーく勉強になったわ。

私が持っていったマンガリストは以下の通り。

ドラえもん。
ライフ(小中学生に人気だった少女漫画)
Monster(浦沢マンガ)
20th Century Boys (浦沢マンガ)
Major (満田拓也)
そして、これは外せない、
リバーズエッジ (岡崎京子)

……って、「むちゃくちゃなセレクションだな」 とか責めないで。
そもそも、蔵書に偏りがあるし、そんなにマンガ持ちじゃないし、こんなもんしかなかったのよ~。

さて。
当日はまず自己紹介から。

「日本の東京から来ました~」

と言ったら、それだけで拍手喝采された。
「Tokyo?! COOOOOOOOOOOOOOOOOL!!!!」
と言われた時には、度肝を抜かれた。
あんた、トウキョウ、って聞いただけで、感動していいのか?
というか、彼らにとって、トウキョウって、そこまであこがれの場所なのか……うーむ。

それから、さっさと興味関心が途切れないうちに、ビデオクリップに。
ラッシュアワーとか、結構、彼らには見慣れない映像を選んだつもりだったんだけどな。

「東京のラッシュアワーがどんなにすごいか聞いたことある?」
「もちろん」
「ほら、これ。駅員さんがドアごとに並んで、電車からあふれだした人を詰め込むのよね」
「ひえええ」 (ここはさすがに、驚いてくれた)

「ではお次は、高校のランチタイム。こっちみたいにカフェテリアではなく……」
「知ってる知ってる! みんな自分の教室で食べるんでしょ?」
「……あら、よく知ってるね」
「あーーーーーっ、あれ、Bento-Box。いいなあ。Kawaii!! 制服、着てみたい~」

あとはもう、大騒ぎ。
こっちでは、Shonen Jump や Shojo Beat という日本のマンガを集めた月刊誌が売っていて、図書館にもきちんと並んでいて、この中で、日本の文化紹介を相当にやってくれている。この前、ちらりと立ち読みしたら、東京のファッション情報はもちろん、焼き鳥の作り方なんかを書いてあったりして、「おお、渋い~」と感動した。
まあ、そんなわけで、妙に日本通の中学生たちなのだ。

この後、日本語の説明を簡単にした。
平仮名、カタカナ、漢字があってね、と言った後、そのまま、いっきに名前の説明。
「だから日本人の名前って、たいてい何かしら、意味が込められてるのよ。例えば、みんなの好きなNarutoだけどさ。あれは……」

「知ってる~、Ramen の具でしょ~」

ちぇっ。
また知ってるやつがいた。
しかし、ここからが大変。
Narutoの登場人物がいったい何人いるのか知らないが、次々に
「じゃあ、Harunoってどういう意味?」
「Mitarashi Anko は?」
などと、主人公の名前の意味を問う質問があっちこっちから挙がりまくり、私はもう、てんてこ舞い。
この日ばかりは、Narutoの作者を恨んだ。もうちっと、説明しやすい名前にしてください~。

その後、「いじめ」の話を少し。

「いじめについてはね。こっちで色々な人に話を聞いてみて、実は、周囲が思ってるほど、いじめが日本で特に陰湿なわけじゃないと分かってきました。こっちにも、色々大変なことがあるよね。ただ、想像してみてほしい。あなたたち中学生は、毎時間、違う教室に移動して、そのたびに、別々の人と授業を受けるよね。日本では、ずーーーーーーーーっと同じ教室に、ずーーーーーーーーーーーっと同じメンバーで座ってるの。1年間、ずっと。だから、力関係もすごく固定化されちゃう。想像してみてほしい。そのクラスで、うまく友だちが作れなかったら、あるいは、仲良しグループにうまく居場所をみつけられなかったら、日本だったらあなたは、その教室に1年間、ずーーーーーーっといなきゃいけない。こりゃ、結構ツライよ」

「もう一つの日本の特質はね。傍観者が多いこと。これはアメリカの調査ではなく、ヨーロッパの数カ国と日本との間で行われたいじめ調査なんだけどね。欧州の国では、小学生から中学生に子どもが成長する中で、いじめに対して、『傍観者』が減り、『止めようと介入する者』 が増えていくんだって。日本は逆。中学生になると逆に、傍観者が増えるんだよね。アメリカだと、その場で、止められなくても、たいていみんな、スクールカウンセラーにこっそり報告に行くくらいのことをするよね。アメリカのスクールカウンセラーさんによると、やっぱりいじめの当事者からの相談より、『あの子がいじめられてる。でも絶対に私から聞いたって言わないでね』 という相談が圧倒的に多いんだって。いじめられてる子って、いじめる側の価値観を internalize しがちだから、なかなか、自分から相談できないのね。だから、周囲の子の行動が一番大事なんだ。この点で、日本の子は、スクールカウンセラーなどの大人に滅多に相談しないんだって。どうしてだろうね。大人は信用されてないのかな。それとも、誰もが 『これはいじめじゃない』 って思うことで、少しずつ荷担しちゃってるからかな」

みたいな話。
かなり真剣に聞いてくれた。
「クラスルーム制度」の違いについては、その場にいた先生方も知らなかったみたいで、後からそこのミドルスクールの校長に、「本当におもしろい話を聞かせてもらった」 と感謝された。
いじめ問題は、どこでもやっぱり、関心が高い。

とまあ、話が暗くなっちゃったので、さっさとマンガ閲覧会に入らせてもらった。

まずは、ドラえもん。
なぜ、ドラえもんが、アメリカだけで翻訳されなかったのか、というような話を一席ぶった。いわゆる日米文化論まがいの話。

で、その後、「ライフ」 に。
いじめに、自傷に、自殺に……。
そういうテーマがいっぱいつまったこのマンガを、日本では小中学生の女の子たちが夢中になって読んだ。それだけ、リアルな世界だったのか、それとも、違和感がなかった、というべきなのか。
「ともかくね。このマンガはこの国で発売される時、まずは『16歳以上』の rating で出たの。その後、『18歳以上』 に引き上げられたって聞いたこともある。でも日本では、そういう規制は一つもないので、みんなよりずっと幼い子がフツーに読んでる。ちなみに、このマンガは、私が、リストカットなどの自傷について大人に講演する時に、よく持参して大人たちに見てもらってたんだよ」。

その次は浦沢マンガ2冊について。
浦沢さんの存在は、ほとんどの部員がすでに知っていた。

「Monster は、すでにこっちでも出てるよね。rating は確か、16歳以上。ガンバイオレンスも入ってるしね。でもうちの10歳息子は、フツーに読んじゃってる。ハリウッド映画の制作会社が、アニメじゃなくて、live action で映画を撮る権利を入手したらしいから、案外、そろそろ、登場するかもね」

「20th Century Boys は、もうすぐアメリカで翻訳が出るって聞いてます。このマンガには、大人のほうがファンが多くてね。なにしろ、1970年代に子どもたった私たち世代には、たまらないマンガなの。こういうの、アメリカでウケるのか、よくわかんないけど」。

で、さらにさらに、野球マンガから、「Major」を紹介。
実は、アメリカには、スポーツマンガ、というジャンルが存在しない。それでも、スラムダンクとか、キャプテン翼とかは、こっちでも翻訳書が出たらしい。ところが、野球の国アメリカなのに、なぜか野球マンガだけはまったく翻訳されてない、と噂を聞いたことがある。
なぜなんだろう。
野球なんて、アメリカとか一部の国しか人気がないから、当然、欧州でも翻訳は出ていないはず。かくして、キャプテン翼は世界にファンがいるのに、日本のスポーツ漫画界に大きく君臨している 「野球漫画」 というジャンルだけが、世界デビューを果たしてない、ってわけ?
うーむ。不思議だ。
それとも、私の事実誤認かしらん。

我が家には、古くはドカベンから、最近の「大きく振りかぶって」まであるけれど、アメリカ人に分かりやすいのは、やっぱり、Major だろう、と思って一応見せてみた。
「これは、高校卒業した後、単身でアメリカに渡って、大リーグに挑戦する少年が主人公の漫画だよ~」 と。
だめだな。この漫画を語り始めたら、1時間あっても足りないんだけれど、その熱さは、とても私の英語力では伝わりそうにないわ。おまけに、相手は、野球少年たちではなく、漫画少年たちなのだもの。
私は早々にあきらめたのだった。

そして、最後が、「リバーズエッジ」。
私の大好きな岡崎京子さんの作品は、もちろん、登場が早過ぎたから、まだ一冊もアメリカで発売されていない。
「ちょっと簡単にストーリーを説明するね。3人の高校生が、河原に屍体を見つけるの。でも警察に言わない。なぜなら、それは、彼らにとって大事な存在になったから。たとえばある子は、屍体を見ることで、自分がまだ生きてる、って確認するの。学校でいじめを受けている男の子は、こう言うの。『この屍体をみるたび、僕は安心して、勇気が出る』って」

こんな話に、その場にいた大人たちは、全然理解できない風に頭を振るのだけれど、案の定、中学生たちは、すごく真剣に聞き入ってくれた。たぶん、私の下手な英語でも、伝わるものはあったと思う。それだけの作品だしね。
しっかし、このジャパンクラブの前夜に調べ直して気づいたけれど、もう、リバーズエッジがこの世に出されてから15年が経つのねえ。
この作品に最初に出会ったころの記憶は、まだまだリアルなのに。
私はもうあの時、20代後半だったけれど、ああいうのに10代で出会ってしまうと、どんな感じなんだろう。今でもふと、そんなことを思ってしまう。

とまあ、ここまで説明しちゃってから、今度は折り紙教室。
どうせだから、手裏剣にした。
「Narutoの武器、Shurikenを折り紙で作ろう!」と言うと、中学生だけど、すっかり乗ってきた。
回覧させた日本語の漫画を読みふけっている1~2人はそのままにしておいてあげて、残り全員に手裏剣の折り方を教えた。これが一苦労。
まっすぐに折る、とか。
半分に折る、とか。
なぜ、そういうのができないんじゃーーーーーーーーーーっ、と叫びたくなったけど、ぐっと堪えた。

さらに、小さなプラスチックのお箸を出して、「これが、日本の中学生や高校生がお弁当を食べる時に使うお箸だよ」 と前振りしてから、そのお箸で、大豆とお米 (どっちも乾燥した生のもの) をつまめるか、挑戦させてみた。
みんな大喜び。
お米一粒をようやくつまめるようになった子は、大急ぎで先生に報告に行って、ビデオで記念撮影してもらっていた。
案外、単純な奴らなのだ。

着物を着てみたい、という女の子には、簡単にはおらせてやった。
もうちょっと時間と余裕があれば、きちんと帯まで使って着せてあげられたんだろうけれど、まあ、それは仕方なし。

最後は感謝状なんかもらっちゃったりして、「アリガト」「サヨナラ」 と日本語でさんざ挨拶されて、私は私で随分と楽しい思いをして帰ってきたのだった。
なにしろ、「I'm from Tokyo」 でセレブ扱い、ですから。
わっはっは。いいのか、こんなことで?

でもまあ、日本が地球儀のどこにあるのか知らない子のほうが多いアメリカで、アニメや漫画で日本語を覚え、日本文化に興味を持ち、トレーシングペーパーに日本のマンガキャラを大事そうに複写しては、色鉛筆で塗ったのを、持ち歩いているような子たちを、日本のおばさんとしては、大事に大事にしていかなきゃ、と思う。
日本のマンガやアニメをとっかかりに、日本のことを少しでも伝えられたらいいなあ、と思った1日なのだった。


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クラスルーム制度

興味深いなぁと思いました。
ずっと同じ場所でいることで逃げ場がなくなる可能性・・・ありますね。
ただ、毎時間、誰と座るか?
座ろうとして、拒否されたら?みたいな恐怖感みたいなのも
あるのかしら・・・。
カフェテリアで誰と食べるか?場所取りは?
なんてのも、結構ストレスにはなりそう。

思春期ってとっても辛い時期でもあるなぁ・・・と
中年になった私は思います。

大長編

1ヵ月の休載を惜しむようなモーレツな分量に圧倒されるとともに外国で自国のことがよく見えることもあるのだとの感を深くしました。こういうの、全部英語でやったんですか。それだけでもすごいなと思います。
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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