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オバマ大統領就任式・パレードを見にいく・最終編

3本仕立てにするつもりだったのに。
だらだら書いているうちに、4本目に入ってしまった。ごめんなさい。

毎日小学生新聞連載は、15字90行、というシビアな字数制限があって、ばっさばっさと削り落としたので、その分、盛り込めなかった出来事とか、ささいだけれどなかなか心から消えない光景なんかを、ついつい書き込んでしまうというわけ。

たとえば、地下鉄の駅で、物珍しそうに大の大人が本当に熱心に、うれしそうに、地下鉄の車両を何枚も写真に撮っていた光景とかね。思えば、地下鉄のない街からやってきた人もいっぱいいるだろうし、中には、生まれてこのかた地下鉄を見たことがない人だって当然いるんだもんね。

アメリカって、本当に、実に広いなあ、と。
DCの中にいてそれを感じることができたのも、この就任式だったんだよね。

そんなわけで最終回ですので、しばしお付き合いください。

********************

さて、パレード会場をぐるり完全包囲したセキュリティーのフェンスの中に無事入り込めたところまでは、後編に書いた通り。
やった~、やった~、と一緒に待っていた人たちと小躍りしたところで、私はふと思い出したのだった。

あ、息子が外にいるんだっけ。
どうしよ……。


とりあえず、ゲートが開いたことや、そういった情報を一切合切、妻友たちに知らせた。「うまくいけば、まだ入れるかも」 とも。
でも、たぶん、あのゲートだって、すぐに閉鎖されるだろう。
今から入ってこられるかどうか、かなり微妙だ。
とにかく、パレードの出発点のほうに行き、パレードの最初の部分だけ見たら、混雑に巻き込まれる前にここを抜けだし、すぐに外に出て、息子たちに合流しよう……と、心に決めた。

母ちゃんは走る。
一路、パレードスタート地点へ……。

ところが、ちょっと走ったところですぐに警備員に止められた。
これ以上はむこうへは移動できないという。
「息子が外にいるのよ。だったら外に出て息子を連れてきたいんだけど」
そしたら警備員はこういうのだ。

「そりゃ無理だ。セキュリティーの関係上、俺等は、いったん入った人間はそこから動かすな、と命令されている。外には出してやれない。つまり君は、中に閉じこめられた状態ってわけだ。パレードが終わるまで、ゲートは開かないよ」

がぁあああああん。
そうこうするうちに、職場の夫から電話が来た。
「おまえ、どうなってんだよ、息子を残して、どこにいるんだよ」
妻友たちとともに夫の職場に到着した息子だが、私が戻ってこないので、相当に不安そうな顔をしているらしい。
ああ、この場面で、夫婦仲までサイアク状態かよ……とほほ。

それでも、こうなったら仕事優先。
どうにか記事が書ける程度に取材しよう、と心に決める。
しっかし寒い。
こんなところに1時間もいたら絶対に倒れる。
パレード開始まで、どこかで暖まれないかしらん。
と、ペンシルベニアアベニューに面したCVS(大手薬局チェーン)が開いてるじゃないか。あそこで、寒さをしのごう……、と中に入って、びっくり仰天!

そこは、なんというか、野戦病院? それとも難民キャンプ?
入口に子どもが寝ていた。寒くて立てないらしい。売り場の通路には若い子たちが靴を脱いで座り込んでいる。疲れてもう、立っていられないのだ。
買い物客の4倍か5倍はいたよなあ、寒さしのぎに薬局で倒れ込んでる人。
お店のほうも大らかで、これをとがめたりもしない。
なんか、本当にこういうところ、アメリカって寛大だよなあ、と思う。
そもそも、本屋さんで「立ち読み」どころか、「座り込み読み」を許してくれる国なんだもんなあ。

そんなわけで、薬局にしばし避難したあと、再び沿道に出た。
どこかパレードを見られる場所はないかしらん。
でも、ないわよねえ、今さら。
どこもかしこも人だらけ。
沿道には三重にも四重にも、人がいる。

もっとも、いくら 「混雑」 といったところで、東京ディズニーランドのパレードほどの混雑じゃなかったことだけは書いておきたい。
今回の就任式の混雑だって、ラッシュ時の地下鉄大手町駅を知っている日本人ならば、「まあ、こんなもんでしょ」 だったと思うなぁ。
それに、結局のところ、安全第一ということで、セキュリティーゲートの中にそれほどの人を入れてないのだ。
外にはあんなに人があふれていたというのに、中は、ゆうゆうと人が歩けるのだから。

最後の最後に、私の救ってくれたのは、なんと長年日本の会社員生活でつちかった 「混雑の中での場所取り」 という能力だった。
こういう場所では、ちょっと頭を働かせると、思わぬ良い場所が見つかるものだ。
そして、私は、見つけてしまったのだ。
セキュリティー用の私の腰の高さほどのフェンス。
あそこの上に座ったら、たぶん、パレードも見えるんじゃないかな。

フェンスの隣に場所を取り、おもむろに、ひたすらよじ登った。
寒いし、手袋だし、靴はごつくてフェンスの柵の間に入らないし、なんかもう、かなりみっともない格好だったと思うけど、日本のおばさんはネバーギブアップ。
フェンスによじのぼって座ってみたら、あああ、見える~。
ペンシルベニアアベニューの路面が見えるよ~!

ごめんよ、息子。
ごめんよ、妻友のみなさま。
でもこうなったら、見て帰ります、私。
絶対に、何かを見て帰ります。

私が見たいのは何? 生オバマ?
たぶん違う。
生オバマは実は、1年くらい前に、メリーランド大学の巨大アリーナで大演説会をやったのを見てる。

今の私が見たいのは、
そうだな、「歴史的瞬間」 に立ち会いたい一心で、
幾重もの障害物を乗り越え、
セキュリティーゲートを越え、
ここまでたどりついた人たちのほうだ。

彼らが、実際に、待ちに待った 「歴史的瞬間」 に立ち会った時、どんな風になるのか、
それを見てみたい。

フェンスの上にちょこんと座ったアジア人おばさん(私のことね)を見て、なーるほど、とみな思ったらしい。次から次へと、私の座っているフェンスに人が集まってきた。
まずは、太った黒人おばさん。
私が鞄を支えてあげているうちに、どうにかフェンスの上に座ったが、「だめ、お尻が痛くて死にそう……」とあきらめて降りてしまった。
あなたのお尻、私のよりずっとクッションがきいてそうなのに、とは、もちろん、口にださない。
次にやってきたのは、黒人の青年。
彼は私の手助けなんか借りずに、あっさりとフェンスの上によじ登った。
それも、座るのではなく、フェンスの上に立ち上がった。
ひえええ。
驚くほどの運動能力。
ちくしょー、こりゃ、真似できないや。

そうこうするうちに、遠くでどよめきが聞こえた。
おおっ、いよいよパレードかっ?!

気の早い観客が、「オバマ、オバマ」 と例のコールを唱え始める。
目の前を通過するのは、白バイが、
1台、2台、3台、4台……
結局十数台の白バイ隊が通り過ぎただけ。
ちぇっ、ご本人じゃあありませんでしたか~、と苦笑いしながら周囲を見回した私はびっくり。
みんな、この白バイ隊を必死で写真に撮ってるじゃないか。
ビデオを回してる人もいるぞ。
ただの白バイ……撮るか?

かく言う私は、白バイすら撮れなかった。
何かというと、がああああん、こんな時に限って、デジカメの電池切れ。
何だよ、いったい~。
はい、プロ失格でございます。
と、ふと思い出した。
こういうトラブル、昔あったぞ。
思えば15年以上も前、駆け出しの記者時代、長野支局でカメラが動かなくなった。カメラの電池は入れ替えたばかりだったのに……と思ったら、寒さで電池がダメになってたんだっけ。
もしかしたら、とデジカメの充電式電池を取り出し、ひたすら手の中で暖めてみた。
数分後、カメラに戻したら、おおお、ばっちり。
長野支局の寒い寒い経験が、まさか、アメリカで役に立つとは!

そんなわけで、私もパレードの写真を撮ってみた。
それがこれ。

blog5.jpg

ね、一応パレードが映ってるんだけど、わかるかしらん。
向こうに見える建物が、オールドポストオフィス。なかなか素敵な歴史的建造物でございます。

ちなみに、黄色い毛糸の帽子をかぶったひときわ背の高い女性は、実は、カレシに最初から最後まで肩車されていた若い女の子でした。
テレビカメラに取材なんかされちゃって、カレシの頭を抑えつけながら、ピースサインしてたぞ。
おばさん心に思わず、「あんた、こういう男を大事にしなさいよ。あとで捨てたら、一生うらまれるわよー」と思ったのだった。
「歴史的瞬間」 を眼に焼き付けるカノジョと、そのカノジョのために、「歴史的瞬間」 に延々と肩車をし続けるカレシの図。
男と女って、ああ、なんて不条理……。

そんなわけで、
こんな感じで、
みんなでただひたすらに、その時を待った。
新たにこの国の大統領になったその人を待った。

こんなに押し合いへし合いしているのに、なんとなくギスギスしないのが不思議。
「ねえ、写真、とってくれないかしら」
幾重もの人の波の後ろで、何も見えないと悟った黒人の女性が、カメラを差し出した。
私の隣で、フェンスに立っていた青年が、自分自身も落っこちそうになりながら、一生懸命に良いカットの写真を撮ろうと、頑張ってやっていた。
こんな小さな 「助け合い」 がこの日、街のあちこちで見られたんだ。

遠くで海鳴りみたいな響きが聞こえた。
いよいよ、オバマ大統領の乗ったリムジンが近づいてくるらしい。
遠くの方で歓声が聞こえる。
歓声が大きくなってくる。

その時だ。
私の隣でフェンスに立っていた、その場の誰よりも遠くを見とおせる青年が、一声叫んだ。

Here he comes! He's .....
..... hes's..... walking!!!


彼の言葉が、あまりの興奮でわやわやになった。
WALKING !
の一言だけが、周囲に伝染していく。
みんながあちこちで叫んでいる。
「彼が歩いてるって!」
「車を降りて歩いてるんだって!」
「今、こっちに歩いてくるって!」

見上げれば、隣で青年はホロホロと泣いていた。
彼の眼には、今、車を降りて、歩いている人の姿が映っているんだろう。

日本のオバサン、体力ないくせに、負けずにフェンスに立ち上がろうとしたのだけどね。
そのたびに、転げ落ちそうになって、どうしても立ち上がれなかった。
今思えば、これが運命の分かれ道。

数十秒後、私の目の前を、戦車みたいに巨大で真新しいキャデラックのリムジンが、音もなく通り過ぎた。
オバマ大統領は?
え? どこにいるの?
見えないじゃん……。

なんと、私の目に見える場所に来る直前に、車に乗り込んでしまったという。
歩いてるオバマ大統領を捜すのに必死で、写真を撮ることさえ忘れてたわよ。まったく。
なんてあっけない瞬間。
この瞬間のために、みんな、全米中からどうにかこの街にたどりつき、朝から大騒ぎして、ひたすら行列に並んだり、厳しいセキュリティーチェックを受けたりしたんだよなあ。

不思議なことに、「あーあ、見えなかったね」 なんて言う人は誰もいなかった。
むしろ、すっかりと満足した表情で、笑い合いながら、その場を去っていく。

なんだかあっけない展開に、私も少し1人で笑ってしまった。
それから、ふと、思い至った。
ずっと 「歴史的瞬間」 に立ち会いたい、見たい、と思ってきたし、
そうやって 「歴史的瞬間」 に立ち会うためにやってきた人たちを見たい、と思ってた私だけれど、
実は、私も、彼らも、あの人も、この人も、ここにいない誰かも、みーんな、歴史の傍観者なんかじゃなくって、私たちみんなが、歴史のひとかけらなんだなあ、って。

「オバマ就任式やパレードの写真は、将来、あんたの世界史の教科書に載っちゃうかもしれないよ」 なんて息子に言ったものだけれど、そうやって教科書で学ぶ歴史だって、実はたくさんの人たちの思いやら、人生の一こま一こまなんかが集まってできてるんだなあ、って。

ものすごく当たり前のことなんだけど、たぶん、自分も歴史のひとかけらとしてこの世に在るんだ、なんてことを、初めて、妙に実感してしまったのだった。
40代で、こういうことを口にするかよ、と思うけど、でも、正直なところ、お祭り騒ぎのパレードを見終わった最後の最後に言葉になったのは、そんなことなのだった。
まいった、まいった。

空前のオバマ熱については、それはそれで冷静な眼差しが必要だと思う。
就任式のスピーチをテレビで聴いて、聴衆の興奮ぶりをテレビ画面で見た時、最初に思わず口にしちゃったのは、「彼が 『戦争だっ!』 と言ったら、一発だろうなあ」 だったし。
でも、私は評論家にはなれないし、第三者に徹するジャーナリストというのも得意じゃないし。
だから、結局はこれからもこんなふうに、その場の興奮に思い切りどっぷりと巻き込まれながら、でも、いつもどこかで冷静に、もう少しこの国と、自分たちの作っていく歴史を、見つめていければなあ、と思ったのだった。
おしまい。

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私が歴史の中にいるっ!と最初に感じたのは、
ブラックマンデーの日でしたねぇ。
丁度、投資顧問会社のシステムを担当してて、その場にいたのよね。
あの電光ボードがすべてゼロになって暗くなっちゃったの・・。
あれ、忘れられない。

それと、昭和から平成のシステム切り替え。

2000年問題の大みそかから新年かな~。

私たちも歴史の中に生きているのよね。


そういえば、小泉フィーバーの時、父が言った言葉を思い出しました。
「人気のある、口のうまい政治家は、一歩間違えるとヒトラーになる。」
ってね。
オバマさんがそうならないように、見守っていくのも私たちだよね。

お疲れ様です。私も息子と二人で行ってきましたよ。就任式だけど、、、感動しました。大変だったけど、やっぱり連れて行ってよかったと思ってま~す!!
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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