スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

オバマ大統領就任式・パレードを見にいく・後編

「就任式、見にいったんだって?」 と言われたら、
答えは、Yes and No だったりする。
厳密にいうと、就任式はテレビで見た。私が街に出掛けたのは、就任式のあと。パレードの前だから。

見事な妻友ネットワークのお陰で、オバマ就任式前にDC入りできたまでは前編で書いた通り。しかし、妻友ネットワークは、就任式前夜にそのまま盛り上がりすぎて、その夜、さんざおしゃべり大会となってしまい、おまけに子どもたちは夜中まで、大騒ぎで遊びまくり、朝起きてみたらすでに、テレビ画面の中の就任式会場は人でび~っしり。
おまけに子どもたちはなかなか起きない。
うちの息子なんて、10時くらいまで寝てたんじゃないだろうか。
ゆっくり朝ご飯なんて食べちゃっていたら、もう、就任式開始のお時間となっていたのだった。

「まあいいよね~。どうせ就任式に行っても、オバマ大統領なんて豆粒ほどにも見えないんだから」
自分で自分を納得させる私。
「取材は……まあ、パレード見物で記事書けるから大丈夫だもん」
強がる私。
大丈夫だったかどうかは、あとでお話するとして……。

まあそれでも、個人的には、テレビで就任式を見られて良かった気がする。
どんな風に儀式が進行するのか、細部にわたるまでじっくりと見られたし、テレビのお陰で、1人ひとりの主役達の表情までばっちり見られたわけだから。
おまけに、私の英語力じゃあ、オバマのスピーチを理解するのもなかなか難しいわけで、でもテレビを見てる限り、字幕がでるから、ずーっと楽チンなのだ。

そんなわけで就任式が終わった正午過ぎ。
いよいよ、我々 「妻友ネットワーク隊」(妻4人+子ども3人)は地下鉄に乗って街に繰り出したのだった。
とりあえず、パレードの行われるペンシルベニアアベニューまで歩いて行けそうな、それでいて、閉鎖されていない最寄り駅を選んで降りてみた。
うわっ、すごい人。

ペンシルベニアアベニューを目指し、ずんずん、歩く。
と……あれれ。
なんじゃ、これ。
背の高い黒いフェンスで道路が封鎖されてるー。

確かにね、これまでの情報からも、就任式やらパレードを見るためには、セキュリティーゲートに入らねばならず、そこがかなり混雑するだろう、というような話は聞いていた。でも、実際にこの目で見るまで、セキュリティーゲートってのが、どんなものなのか予想もつかなかったのだ。
しかし、すごいなあ
本当に、パレードの道の外側2ブロックを、見事に完全封鎖しちゃってる。
東京なんか、レインボーブリッジ一つ封鎖できないのにねえ。(って映画の話か……)
アメリカは、首都DCと他州を結ぶ橋をいくつも封鎖した上、ペンシルベニアアベニューという目抜き通りやらホワイトハウスやらを、完璧にフェンスで封鎖しちゃったのだ。
す、すごすぎる。
やるときはやるんだなあ、アメリカ。
まあ、東京と違って、政府機関ばかりが並ぶ首都だからできる芸当か。
東京でこんなことをやったら、あっちこっちの民間企業やら流通やら人の流れに支障が出て、大パニックになるところだ。

とにかく、そのフェンスの外側からうらめしそうに中を見ている人がやたらいる。
こんな感じ。

blog3.jpg

とにかく、この中に入らないと話にもならない。
歩いているうちに、ようやくゲートが見つかった。が……ものすごい列。
警備のおじさんに聞いたら、
「チャイナタウンのほうのゲートはすでに閉鎖された。それで閉鎖されたゲートからも、こっちに人が流れて来てるんだ。今の感じだと、1人がゲートをくぐるのに、セキュリティーチェックに1分くらいかかってる感じだなぁ」

1人1分?
でもこの列、300人くらいは軽くいそうよ。
ってことは、300分? 5時間?
とっくにパレード、終わってんじゃん。
呆然と立ちすくむ私。

警備のおじさんの話を、みんなに報告したら、一気に 「中に入ってパレードを見よう」 という熱がスルスルとしぼんでゆくのが見えた。
息子なんかもう、「お腹空いた。ファイブガイズのハンバーガー、食べたい」 とかいうし。
ちょうどそのすぐ近所に、我々妻友ネットワークの夫陣の職場がある。
「いざとなったら避難場所として使っていいよ」 と理解ある上司さんからありがたいお言葉もいただいていた。
「こうなったら、会社でテレビでも見せてもらうか」
そんな雰囲気になっていく。

困った。
私は、「仕方ないから、テレビで見ようか」 ではもう済まない立場なのだ。
毎日小学生新聞の連載も頼まれている。
日本でも就任式やパレードの様子をテレビで見られるこの時代に、「私もアメリカでテレビを見ました~」では済まない。
同じ、「セキュリティーゲートの中に入れない」 のであれば、せめてゲートの前に3時間とか並んで、無念の人々の様子をルポしてごまかすくらいは頑張らないと、かなり恥ずかしいわけである。

そんなわけで、私は 「ごめん! 私、このままじゃ記事書けないから、ちょっと街を歩いてきます」 と、妻友たちに息子を預け、1人で街をふらふらすることになったのだった。

さて、すぐ近くにJWマリオットというホテルがある。
ここにもゲートがあったらしいのだが、やはり閉鎖中だ。
うらめしそうな人にインタビューしようか、とふとホテルを見上げると、客室の窓からのんびりとペンシルベニアアベニューを見下ろしお金持ちたち。
ちくしょー。
ちくしょー。
あの日の、あの部屋は、数百万円したらしい。
どんな人が、そんなお金を出せたのか。
寒い風に吹かれることも、警備員ににらまれることもなく、押し合いへし合う蟻ん子のような私たちを、どんな気持ちで見下ろしているんだか……。
さらにそのホテルの屋上を見ると、ものすごい装備と思われるセキュリティーガードの黒い人影。
不審なことしたら、あそこから、狙われて撃たれるのかしらん、と思わせる迫力に、ぞくり。

しばし、途方にくれていた時だった。
頼りなさそうな警備員が1人出てきて、ぽつんと言う。
「もしかしたら、ゲートがまた開くかも。あっちに並んでいたらいいかもよ」
ああ、なんと確実性のなさそうな情報。
でも、一か八かで人々がぞろぞろと並び始めた。
「開くかなあ、ゲート」
みんなに聞いてみるけれど、誰も、気弱な笑いを浮かべながら、「さあねえ。誰にもわかんないわよ」 というばかり。
すでに一度、中に入るのをあきらめた人たちだ。その表情の、なんと達観していること!

そうこうするうちに、行列が長く伸びてきた。
段々と混んできた。
もう、今さらそこから抜け出せない感じ。
覚悟を決めた。
これから何があろうと、ゲートが開こうとこのまま閉まっていようと、私はここで取材して、記事を書くしかもうないのだ。

「うげっ」。
隣で、にぶそうな男性が悲鳴をあげた。
見ると、彼がテイクアウトしたらしいチリビーンズがこぼれ、自分の目の前にいた息子の服やら、お隣の人の高価そうなコートが、真っ茶色に汚れている。
ぎゅうぎゅう詰めの中の惨事。
思わず、自分の服につかないように身体をよじる人々。
それでも、コートを汚された男性は怒らない。声を荒げたりしない。
なぜならば、何度も何度も警備員がこう叫んでいるのだ。

「押したり、叫んだり、何か一つでも騒ぎが起きたら、絶対にゲートを開けませんからねっ!」

こうなりゃ運命共同体。
みんなして大人しく待つしかない。
……と、もう一人、困ったちゃんが現れた。

猛烈なオバマファンらしい黒人男性の彼は、しかし、ものすごーく酒臭い。
開くかもしれないゲートの前で待っているうちに、段々と感極まってきたらしく、
「オバーマ、オバーマ、オバーマ」 と叫び始めたのだ。
最初は苦笑いしていた周囲の人も、さすがにうるさくてたまらない。
まして、これを原因にゲートが開かなかったらいい迷惑だ。

「静かにしましょーよ」
「ね、もうすぐきっとゲートは開くから」

近くの黒人女性が優しくなだめる。
そのたび、酔っ払いは、こういうのだ。

「わかったよ。俺、絶対に静かにする」

ところが数秒後には、また、「オバーマオバーマ」 が始まる。
これの繰り返し。
ちょっと、周囲の雰囲気がぴりぴりし始めたところに、別の女性が、

「仕方ないわよね。Changeはタフだって、オバマ大統領だって言ってるもの。そう人間、簡単に変われないわよね」

と絶妙な冗談を言って、みなを笑わせる。

そのあとも、酔っ払いの「オバーマオバーマ」 は続く。
「押さないで」 と言っているのに、もの悲しくなってきたんだろうか、酔っ払いはあっちこっちの人に体重をかけ、きゃあきゃあ言わせてはうれしそうなのだ。
困ったちゃんである。
最初はなだめていた黒人女性も、彼を黙らせようと、わざと、「警察の方、いませんか~!」 なんて言い出した。

ところが、である。
十数分したころ、本当に警察官が来た。
「オバーマオバーマ」と叫ぶ酔っ払いを指さし、「ちょっと、そいつ、こっちに寄越してくれ」 と並んでる私たちに言う。
その時の光景、私はちょっと忘れられないと思うな。
なんと、さっきまでこの酔っ払いを叱り、警察を呼ぶそぶりすら見せた女性が、こう言ったのだ。

「大丈夫だから。彼は、本当のところでは私たちに迷惑なんか掛けてないから。本当にこのままで大丈夫だから」 と。

これに異議を唱える人もいなかった。
なんとなく、しみじみとした雰囲気の中で、「全員でこのゲートを通過しよう」 という思いが高まっていく。
背の高い男性たちが、
「もうすぐだっ!」
「ゲートが見えるぞ!」
「頑張ろうぜ」
と私達背の低い者を励ましてくれた。

なんかもう、それだけで、心が温まった。
前のほうで、警備員の指示が飛ぶ。
何? 何っていったの?

後ろにいる者にみなが伝えてくれる。
「コートの前ボタンを全部開けろって」
「マフラーなど首にかけたものは全部取れ、って」
「カメラの電源を切れ、だって」

コートを開いたら、一気にからだが冷えた。
こんな状態で何分も我慢できないだろう。
そう思った途端、目の前に警備員が立っていた。
指示されるままに両手を上げる。
身体のあちこちを金属探知器がはう。
鞄の中もがさごそと金属探知器が動き回る。
それでも、1分もかからないうちに、ゲートを出られた。

「本当に中に入れたんだ!」
妙な感動とともに後ろを振り返ったら、次々に後ろにいた人がゲートを抜け出てくるところだった。

blog4.jpg

奥に見える白いテントが、セキュリティーゲートね。
こうして無事に私は、パレード会場を完全に封鎖した高いフェンスの中に、どうにか入り込んだのだった。
ほんのちょっとした偶然の積み重ねのお陰で。
チケットを持っていても、中に入れなかった人だっていたというのに。

(さらにつづく。ちょっと長すぎ。反省)

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
RSSリンクの表示
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。