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オバマ大統領就任式・パレードを見にいく 中編

就任式前日の会場周辺は、人出はそれほどでもなかったが、すっかりお祭り気分に満ちていた。普段と一番違ったのはたぶん、人種の多様さだろう。
「モール」と呼ばれる大きな芝生広場の周囲には、スミソニアン協会の博物館や美術館がずらりと並んでいて、すべて入場無料というのが、DC観光の最大の目玉だ。
けれど、博物館や美術館にやってくる人は、やっぱり白人が多い。
例えば、2年の改修期間を経て昨年秋にオープンしたアメリカ歴史博物館。一般客向けグランドオープンの式典に行った友人が、ぽつんと言ったことがある。

「ほんと、白人ばっかりなんだよ。あとは、せいぜい教育熱心そうなアジア人。黒人の姿はほとんど見なかった。無料だし、一般開放された空間なんだし、これは経済格差ゆえじゃないよね。差別、と誤解されるギリギリの部分であえていうなら、文化格差なんだろうか。こういう場面を見るたび、アメリカの『多様性』って何なのか、と思うね。多様な人種・民族が溶け合っているのではなく、実はモザイクみたいに同じ国でバラバラに暮らしてるだけなんじゃないか、ってね」

だけど。
就任式を1日後に控えたこの日、アメリカ歴史博物館に行ってみたら、間違いなく、白人と同じかそれ以上に、非白人客がいた。
歴代大統領の名を記した年表のコーナーがあって、そこにはもう、ちゃんと、オバマ大統領の名前と写真も掲載されていた。
着飾った黒人女性が、順番に、オバマ大統領の写真に頬を寄せて、記念撮影をしている。
これがもう、子どもみたいにはしゃいじゃって、何とも言えない素敵な光景なのだった。

blog1.jpg

それを、じーっと白人の少女が見つめ、その場から動かずにいるのも印象的だった。

しかし、アメリカ歴史博物館は、別の意味で妙に面白い場所だ。
なんというか、歴史の短い、若い国の歴史博物館って、こうなるのか~、という感じ。
日本だったら、縄文式土器とか弥生式土器とかから始まっちゃうのだろうけれど、考古学的な展示はほとんどないもんね。
逆に、どこかのバーのカウンターとイスの一部が大事そうに展示されているから何かと思ったら、かつて白人専用だったこのイスに1人の黒人学生が座ったことから黒人解放運動が始まった……みたいな展示だったりとか、スターウォーズに出てくる C-3PO が展示されていたり (いや、確かにこれだって、アメリカの大事な歴史なんだろうけどさ)、なるほど、こういうものが展示されるのかあ……、という感じなのだった。

そうそう。
日本の友人から、「ところで、ああいう場所ではトイレってどうなるの?」 というご質問をいただいたので、ちょっと写真を。
会場となる場所には、こんな風に、ポータブルトイレがずらり。

blog22



なんというか、「カメラの砲列」 ならぬ、こういうの、何て言うのかなあ。
トイレをずらり並べることで、外側の道路から芝生広場へ出入りできる場所をある程度管理しているような側面もあるわけで、セキュリティー管理の役目まで負っちゃってるトイレの列というわけでした。
何百と用意したらしい。
大混雑の当日も、トイレに並んだ人はほとんどいなかったと思います。
おまけに、トイレットペーパーが切れることもほとんどなかった。
ここはすごい。
当日はボランティアの方々もたくさん働いていたから、彼らがペーパーを何度も替えてくださったんだと思う。

さて。
アメリカ歴史博物館に続いて、この日どうしても行ってみたかったのが、アナコスティア・コミュニティー博物館。ワシントンDCの南東地区のアナコスティアといえば、DCの殺人事件の3分の1が集中する犯罪多発地域とか何だかんだ言われて、普段は旅行者なんて寄りつかないところ。
ずっと気になってたのよね。
ワシントン・ナショナルズの球場に試合を見にいく時、DCの中心部からグリーンラインという地下鉄の路線に乗るのだけれど、球場前の駅を降りて、ふと地下鉄の車両の中をのぞき見れば、本当に驚くくらい、車両に残っているのは黒人ばかりになるの。
球場前の駅から先、このグリーンラインはどんな街を走るのか。
きちんと自分の目で確かめなきゃなあ、と思いつつ、その機会を逸してきた私だった。
グリーンラインが通る街、アナコスティアを見に行くならば、

黒人初の大統領が誕生する日の前日で、
マーティンルーサーキング牧師の誕生日でもあるこの日しかないだろう、と。

おまけにその週末には、スミソニアン協会の前から、アナコスティア・コミュニティー博物館までの直通バスが出ていた。
お祭り騒ぎの就任式会場から、バスに乗って、いったい、どんな人たちが、どんな表情で、アナコスティアにある小さな博物館に向かうのか、どうしても見てみたかったのだ。

息子が聞く。
「それってどんな博物館? おもしろいの?」
うーん。おもしろいかと聞かれると苦しい。
自然史博物館みたいに動物のはく製もないし、国立航空宇宙博物館みたいにライト兄弟の飛行機やら月の石があるわけでもない。
一言でいえば、「アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を、地域社会的な観点から、専門的に文書化、所蔵、解釈している研究博物館」 なわけで、子どもが見ておもしろいかというと……うーむ。

それでもだまくらかし、土産の一つも買ってやると約束し、連れて行く。
バスの中は、アジア人が2人、つまり私たち。白人が4人。あとは全員黒人という構成。
1人の黒人男性がバスに乗っているみんなに見せびらかしているものは……なんと就任式のチケットだった。
クリーム色の紙に、銀色や金色の字で式次第が書かれており、おまけにオバマ大統領の写真やサインも。
25万枚のチケットは、上下院議員の事務所から無料配布されたわけだけど、もう、ネットオークションでは数千、数万ドルの値がついたといわれている。
「おお、これが、あの話題のチケットか……」 と、みなで感動しながら回覧させていただいたのだった。
この男性に、「ねえ、どこから来たの?」 と聞いたら、
「テキサスさ」 という。
「そんなあったかいところから、こんな寒いところに……」 と感心していたら、彼は、はははと笑ってこう言った。
「俺はさ、テキサスから、ブッシュを連れ帰るために来たってわけさ。俺に任しておきな。 あのブッシュの野郎は、俺がしっかりテキサスに連れ帰ってやるからさ」
これには、みんなで大爆笑したのだった。

さて、バスはアナコスタ川を越え、黒人の多く暮らす街を走る。
決して荒廃した街じゃない。ボルティモアの本当に荒廃した街なんかに比べたら、割れた窓ガラスもなければ、出入り口に板を打ち付けたような空き家もほとんどない。
目につくことといえば、住宅サイズが小さいのと、ゴミが道に落ちていることくらいか。
それでも、道を歩く人は100%黒人。
比較的、民族・人種の多様性が大きい街に暮らしている私なんか、これにはさすがに驚いた。
アジア人もいなければ、ヒスパニックもいない。
就任式の会場から車でわずか10分のところに、こんな街があって、DCで国や世界機関を動かすような仕事をしている人たちは、足元のこんな小さな街に足を踏み入れることなど、ほとんどないのだ。

それでも。
博物館について、ちょっとだけほっとした。
アジア人は私と息子の2人だけだったけれど、白人の若いカップルとか老夫婦なんかは結構いたから。みんなきちんきちんと展示物を観察していた。
あとは黒人の家族連れが多かった。
小さい子たちに一生懸命、自分たちの歴史や文化を説明している姿が印象的だった。
クリスチャンにとってのクリスマスのお祝いが終わった日から始まる「クワンザ」というお祭りについて、息子に説明してやった。
そんな私たちの姿を、若い黒人女性が興味深げにじっと眺めていた。
きっと、「あらあら、アジア人もクワンザに興味を持つのかしらん」 などと思われたのかもなぁ。
ここはお祭り騒ぎとは無縁で、もっと静かで、真摯な時間が流れている気がした。
そして案の定、「ぜーんぜんおもしろくないーっ」 と息子はふてくされまくったのだった。

まあ、そんなわけで就任式前日は、全米からやってきた観光客に混じって、DC観光というか、「観光客」観光をしてみた1日だった。

就任式を明日に備えて、芝生広場には巨大スクリーンがたくさん建ち並んでいた。
前日にリンカーンメモリアルで行われたコンサートの映像が流れていた。
その音楽に合わせて、身体を揺すり、踊りながら、モールを歩く。
いつの間にか息子が、オバマの顔写真入りのスウェットに着替えていた。胸には、買ったばかりのオバマバッジが2つ。
かくいう私も、毛糸の帽子にオバマバッジをつけていたりする。
まったく、乗せられやすい親子なのだ。
あっちこっちに人の輪ができていて、ちょっとしたイベントがあり、それを撮影しにくるテレビクルーがいて、吸い寄せられるように人が集まって、ワクワクとドキドキが増殖していく。
主役のいない舞台で、観客だけでこうも盛り上がれるというのも、なかなか良いもんだな。

(後編につづく)



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ネイティブの考古学って無いの?

> しかし、アメリカ歴史博物館は、別の意味で妙に面白い場所だ。
  (中略)
> 考古学的な展示はほとんどないもんね。

ネイティブアメリカン関連の考古学って、無いのかなぁ....!?
展示すべき「物」は少なくって「出来事、風習」が多い、ってことなのかしらん?
それでも文章や再現映像ベースの展示はできそうなものだけれど。

P.S.ハンドル間違えちゃった

あ、しまった!!!
私、大学でお世話になった「U子」です。ついデフォルトのハンドルのまま送信しちゃいました(^^ゞ

書いてあることみんなへぇええ!なんだけれど、

へぇええ。トイレ!
しかし、ボランティアが紙を切らすことがないって
凄いわ。

ブッシュさんはやっぱりそういう感じで見られてるのね。

息子君もおぐにもいいなぁ!
まさに、歴史的な場に居合わせたんだから。

つまらなかったかもしれないけれど、彼の人生にとって
将来宝になるんじゃない?

アメリカ歴史博物館って、スミソニアンの中にあるココだよね

http://americanhistory.si.edu/

こんな視点の展示評って読んだことないので
さすがおぐにだなぁ
楽しく拝読しました
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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