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母ちゃんはしば刈りに……

寒い。
真っ昼間でも、霜柱が立ちまくっている。
最高気温が零下2度ってんだもの。
仕方ないか。

そんな日、息子の友人ケビンが遊びに来た。
あの、息子の初のお泊まり相手、例のボリビア少年だ。
2人して、ダウンの上着を脱ぎ捨てたかと思うと、バスケットボールを持って、
「公園に行ってくる!」

とりあえず、横断歩道もなく、裏道を歩いて2分程度で行ける公園だから、と気楽に送り出したものの、息子とケビンじゃあ、傍目にも 「移民の子同士」。あまり放置してると、ネグレクトだといって通報されそうだったので、とりあえず、マフラーをぐるぐるまきにして、追いかけた。

上着なしで、走り回ってバスケットボールに興じる子ども2人と。
顔が隠れるほど、マフラーを巻いたぐるぐる人間のアジア人おばさん1人。

だいたい、こんな寒い日に、公園で遊んでいる人など、だーれもいないのだった。
ふと公園の隅の林の地面を眺めたら、そこに、よく燃えそうな細い枝をいっぱい見つけた。
うん、こりゃ、我が家の暖炉の火付けにちょうどいいわ~。
気づけば、薪拾いに夢中になっていた私なのだった。

薪拾いの法則というのがあって、最初は細いのを丁寧に長さもそろえて折って、積み重ねていたりするのだけれど、なぜか、より太いもの、太いものに目がいって、段々と拾う薪は太くなっていき、いつのまにかずんずん林に踏み込んでいるのだ。
気づけば、とうてい家まで持ち帰れないような薪の束ができていた。
おまけに、剪定したらしい直径20~30センチくらいの、薪にいかにもちょうど良い枝まで転がっているじゃあないか!
いいなあ。薪代5ドルくらいもうかったぞ。
ああ、悲しき、ケチケチ大阪人!

思わず、自宅に走る私。
何かって、自転車を取りに戻ったのだ。
日本で買ったママチャリは、かなりアメリカの郊外では異様だ。
なにしろ、大都市ならまだしも、郊外で自転車といえば、あくまでスポーツであって、移動手段に使う人などいないから。
自転車に乗るからには、流線型の目もさめるような色のヘルメットを被って、身体にぴたりと張り付く蛍光色のウェアを着なきゃあね……みたな国なのだ。

そんな街を、前カゴからにょきにょきと突き出る薪を詰め込んで、走る、走る、アジア人のおばちゃん。
内心、「どーか、近所の人に見つかりませんように」 と祈る。
やっぱりどう考えたって、傍目には、こんな風に映るんじゃあないだろーか……。

気の毒にねえ。
この経済危機だものねえ。
薪も買えないのねえ。
車がないのねえ。
電気代が払えず、暖房もなかなかつけられないのかも。
こんなに寒い日にねえ。


だから、「どーか、近所の人に見つかりませんように」 と祈りながら、自転車をこぐ。
1往復し、2往復目のところで、ひええええ、と思う光景を見てしまった。

私の意図を理解したらしい息子が、ケビンを誘って拾ったのだろう。
歩道を堂々と、自分たちの身長より長い枯れ木をズルズルと引きずって歩いている。
それも、傍目にあきらかなことに、
1人はアジアン。
1人はヒスパニック。

やっぱり、これ、傍目にはこう映るんじゃーないだろうか。

気の毒にねえ。
あの子たち、薪を拾ってるわ……。
そういえば、ママもさっき、自転車で走ってたわよ。
ひどい母親だねえ。
息子と、さらにヒスパニック移民の子まで使って、働かせるなんて。
児童労働させるなんて。
こりゃ虐待だわよ。
でも、100年に1度の経済危機だものねえ。


もっとも、私のこんな心配なんぞ、まったく気にしてない子どもたち2人は、実に実に誇らしげに、長い薪を引きずって歩いていたのだった。
彼らの獲物は、玄関先で私がポキポキ踏み折り、さっそく暖炉に火をつけた。
ああ、やっぱりカラカラに乾燥してるからね。
よく燃えるわ。

なめこ酢、温泉、透明なイカの刺身、肩までつかれる風呂、路地裏……。
こちらになくて、日本が懐かしいものは、いっぱいあるんだけどね。
たぶん、日本に帰ったら、一番恋しくなるのはこれだと思う。
暖炉。
だって私、無類のたき火好き。
キャンプ大好き。
それが、キャンプにいかずとも、毎晩毎晩、家でたき火ができるんだもん。
はまるわー。
もう逃れられないって感じ。
暖炉アディクション、ってある気がする……。

炎を上げて燃える火を見ながら、今週末にワシントンポスト紙に載ってた記事を思い出した。
「いやだわ、あのアジア移民の母親ったら、子どもを学校に行かさず、労働させちゃって」 と思われるのではないかしらん、と私が思ったのにだって、理由があるのだ。

隣のカウンティー(郡)の話なのだけれど、経済危機のあおりをうけて、両親あるいは保護者が働いている間、家に放置される子どもが増えている、という話。
アパートメントを調べたら、親のいない家に子どもだけで留守番させられていた子どもが次々見つかったらしい。私たちの住むカウンティーでも、これまでずっと長い長い待機者がいた保育園入園希望者リストに、空きが出たんだとか。
保育料が払えず、保育園を退園させる親もいるという。
仕方なしに、親戚や近所の人に預けたりしているのではないか、と記事に談話が載っていた。
記事に添えてあった保育料一覧表に、あらためて溜め息が出た。

例えばメリーランド州の保育料は、0歳児で年間1万1329ドル、4歳児で8224ドル。
日本ならば、まず親の収入によっても違うし、よほど高収入な家庭でも、ここまでとられないんじゃなかったっけ (すでに、記憶は遠く、制度としてもよく覚えてないけど、東京都はもっとずっと安かったと思う)。
保育料が払えず、退園させる気持ちも、これじゃ、分かるよ……。
そのあおりを受けて、学童期の子どもたちが幼い弟や妹の面倒を見るため、学校に行かず、留守番を強いられている、とも書いてあった。
私が暮らしているほんの近くの現実なんだもんなぁ。

たき火番をしながら、なんかよくわからないけれど、
また薪を拾いに行こう、と思ったのだった。

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プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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