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初めてのスリープオーバー

スクールバスから帰ってくるはずの時間に、いきなり電話が来た。
「母ちゃん? スクールバスに乗り遅れちゃった」
あわてて学校に迎えにいってやると、ESOL (母国語が英語ではない子どものための授業)で友だちになったボリビア出身のケビンと一緒に遊んでいた。
「ねえ母ちゃん、ケビンの家でスリープオーバーしてもいい?」
息子が元気良く聞いてきたので、なかば、唖然……。

スリープオーバー、とは、いわば お泊まりですな。
息子は日本ではお友達の家に泊まったこともあるし、そもそも、1年生の時から新幹線に一人で乗って仙台に行き、2週間くらい私と離れて暮らすことも平気だったから、家で寝ない、ということ自体にはなんら抵抗はないわけだけど。
問題は、

「アメリカ初のスリープオーバー」

ってところにあるわけで。
くどいようだけど、ほんの2カ月前まで、自分から英語でしゃべろうとしなかった息子ですから。
日本人の生徒さんとばかりくっついて、それ以外のお友達が去年はほとんどできなかった息子ですから。
それが、いきなり、プレイデートもしたことない相手と、スリープオーバー????

あんた、一晩中、英語に囲まれてても平気か?
母ちゃんはまだまだ自信ないぞ。


そう思えども、これが成功すれば、息子の大きな自信になることは間違いない。
特に深く考えず、よし、行ってこい、行ってこい、と送り出した。
その場で、迎えに来ていたケビンのママに挨拶し、住所と電話番号を交換。
とりあえず、ママのクローディアは、私とトントンの英語力らしく、お互いの意思疎通もラクチンでラッキー。

あとで着替えと歯ブラシを届ける約束だけして、息子をその場で預けた。
1時間後。
荷物を持って、ケビンの家にゴー。

実はケビン一家は、2週間前まで学校の近くのアパートに暮らしていたのだけれど、最近、隣の隣の町に引っ越したらしい。で、ハイウェイをがんがん飛ばして、車で25分。ちと遠い。
ピンポーンと呼び鈴をならしたら、子ども2人が出てきた。
ママはシャワーを浴びているという。
まあいいか、と着替えと、歯ブラシと、息子ご所望のニンテンドーDSを手渡し、ちょっとしたお菓子などをケビンに渡し、ママに挨拶するのはあきらめて、自宅に戻ってきたのだった。

大丈夫かなあ。
大丈夫かなあ。
夜になると、やっぱり不安になるのは相変わらず。

英語、分からなくて困ってないだろーか。
ボリビア料理、食べられなくて困ってないだろーか。

とりあえず、シャワー中でママとしゃべれなかったことだし、と夜7時ごろ、ママの携帯電話に電話してみた。

「ハロー」

おっと、男の声だぜ。
びびるアタシ。
「あのー、クローディアの携帯電話ですよね?」
「イエス」
「クローディアと話したいんだけど……」
「ワーキング」

カタコトの彼の英語の後、息子が電話口に出た。
息子によると、今のはケビンのパパ。
パパは英語をほとんど話せないらしい。
そして、ママは? と聞くと、お仕事に出てしまって夜は遅くまで帰らないという。
ひええええ。
そうだったのか。

アメリカはとても共働き家庭が多い。
一方で、保育園も決して充実しているといえないし、保育の質を求めれば、大変高くつく。
おまけにあちこちの送り迎えも必ず大人が同行しなければならない。
そうなると、ベビーシッターを雇う余裕のない家はどうするか。
パパとママとで仕事のシフトをずらし、パパは昼、ママは夜、あるいはその逆パターンで夫婦で働いて稼いでいる家庭がとっても多いのだ。
とっても多いのだ、と新聞記事で読んだことはあっても、実際に知り合ったのは初めてだった。
息子の野球のチームメートの家庭は、どこも我が家より裕福だし。
中南米からの「ヒスパニック」と呼ばれる移民たちの子どもは、やっぱり野球よりサッカーが好きだからね。

そっかー。
夜は、男3人で寝るのかぁ。
それはそれでちょっぴり心配なのだった。

土曜日には、息子は朝から日本語の補習校があるので、「朝9時に迎えに行くね」と息子に伝え、電話を切った。
だいたい、どういうご家庭なのかまったく知らないで、息子をぽーんと預けちゃって良かったのかしらん。
不安になると、むくむくと沸いてくる妄想。
もしかして、麻薬取引の巣窟だったら……。
もしもケビンのパパが、実は義父で、夜な夜なケビンを虐待していたら。
なーんて、大変、相手に失礼な妄想なんかも沸いてきちゃうわけです。
いかんせん、アメリカで自傷の本なんかを読んでいると、スリープオーバーやらサマーキャンプに行った先で性的な虐待を受けた、なんてケース、ごろごろしてますから。

いかんいかん。
妄想よ、引っ込め。

そんな感じで朝になり、息子をいそいそと迎えに行ったのだった。

ぴんぽーん。
今度も子ども2人で玄関に出てきた。
息子もケビンも、まだパジャマ姿。
「まだパパもママも寝てるの」
そっか、お仕事、大変だもんね。

ケビンにだけ、たーーーっくさんのお礼を言って、息子を連れ帰った。
結局、パパにもママにも会えなかった。ははは(汗)。
車中での会話。

私  「どうだった? 楽しかった?」
息子 「うんっ!」

そっか。
もうそれで十分。

私も勉強になったわー。
スリープオーバーっていうと、「アメリカの子に夕飯を食わせるって、何を食わせりゃいいんだ? どこで寝かせるの? 風邪ひかしたらまずいよね」 とか考え込んじゃいそうだけど、そっか、もっと気楽に預かっちゃってもいいわけね。
(って家庭によるんだろうなあ。あるご家庭でプレイデートさせてもらった時なんか、「うちは、家の前の道路であっても私か夫がいない限り、外で遊ばせたりしません」 なーんてわざわざとメールをくださったような、きっちりしたお宅もあったし。日本じゃ、どこでも子どもだけで遊んでるっていうのにねえ!)

息子は息子で良い勉強をしてきたと思う。
その日、ケビンのママが働きに出た後、パパとケビンと息子とで夕飯を食べに行ったらしい。
夜10時過ぎに。
マクドナルドに。
ママがいないから、毎日夕飯は外食なんだって、と息子は行った。
毎日、そんな時間に、ファーストフード食べてたのかなあ、ケビン。

二人で映画のDVDなんかを見て、DSもやって、結局1時まで起きてたんだそうだ。
寝る前に、ケビンのママが帰ってきたけど、息子によると、「いつもはもっと遅いんだって」。
彼女は昼間、地元のコミュニティーカレッジで英語の勉強をしているという。
息子によると、パパのほうも、これからカレッジで英語を習おうかと言っているんだそうだ。
勉強して、仕事して、子育てして、お金ためて、学校からうんと遠いけど、このタウンハウスを渡米1年で買ったんだなあ。(ネットで住所を検索して地図を見ようとしたら、たまたま不動産ページが開き、最近まで売り出されていたお値段まで知ってしまった……)。
すごい努力だよなあ。

「この国には、両親が働いていて、夕飯を食べられない子だっているからねえ。だから、学校の給食って、すごいカロリーでしょ。あれ、夕飯を食べられない子でも大丈夫なように、予算の範囲で、安い食材で、必要なカロリーをちゃんと摂取できるように考案されてるんだって。母ちゃんも、最近まで知らなかったんだけどさ」

息子は、学校のランチがあまりにまずくて、つらくて、この1年、体重が1キロも増えなかった。
(弁当作ってやれよ>じぶん)。
先日なんか、決して好きでもなかったはずの日本の学校給食を思い出して、思わず布団を被って泣いたようなヤツである。
アメリカの小学校のランチについて、「あんなまずいモノ、喉を通らない。あんなの食べてたら、いつか死ぬ」 とまで言ったヤツである。
でも、息子にはどうしようもなくつらい味のこの国の給食にも、やっぱり、理由があるのだ。

睡眠時間5時間、宿題もほとんど手つかず状態の息子を、日本語補習校にたたき込んだ。
今頃、学校で寝てるかな。
まあいいか。

息子は初のスリープオーバーでちょっぴり自信をつけ、
そしてたぶん、ちょっぴり大人になっただろう。
この国には、世界のあちこちから人がやってきて、色々な暮らし方をしていて、食べるものも、考え方も、生活環境も全然違うけど、でも、hard-working な人が一番エライんだ。

ところで。
息子が一つ、告白してくれた。
「実はさ、スリープオーバーしたくて、スクールバスをわざと乗り遅れたんだ~」
なんか、笑っちゃった。
一緒に、そういう悪巧みができるようなお友達もできたのねえ。
叱る気もせず、「なーんだ」 と笑ってしまったのだった。

ところで、一晩中、英語に囲まれていて平気だったのだろうか。
息子は答えはこれ。
「英語っていうかさあ。ケビンは家ではパパともママともスペイン語だから」
なーるほど。
一晩中、スペイン語に囲まれていたのねえ!

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すごい。
一晩中スペイン語に囲まれても平気になったんだねー!!>息子くん

なんか、もう、いろいろ心配する時期は過ぎたんじゃーないでしょうか? 子どもにとっての1年て、本当に大きいねー。

そうそう、ハロウィンの振り袖も素敵でした!!

子ども同士って面白いね!
楽しかったんだろうなぁ。

アメリカの共働き家庭の現実か・・・。
うちの近所のファミレスの深夜勤務は、主婦が多い=夫が
帰宅してから働く、というのは聞いたことがあります。

どんどん息子くんの世界が広がっているのが頼もしいです!


理由まですごい☆

お久しぶり。某所のチャットに出現してたと聞き、急におぐにシックになっちゃったよ。「劇場」だけ拝見しました(笑)
息子さん、成長したねぇ。
ちゃんと居場所作れるようになったんだね。
いやぁ、すごいなぁ、ほんと。
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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