とっても緊張している。
帰国後、以前暮らしていた小学生のクラスメートのお宅に2泊ほどお世話になることになっている。仙台のじいちゃんばあちゃんと落ち合うのは3日後だ。
今回泊めてくれるお友達2人は、息子が今なお、「親友」 と呼ぶ相手だ。
アメリカではきっと、○○君や▽▽君みたいな親友はできないよ……とこの前もつぶやいていたっけ。
息子にとっては、大事な野球のチームメートでもある。
大好きな相手だから、きっと緊張するんだろうな。
「ずっと親友だよ」 と半年前に交わした約束。
そんなことを、あれこれ思い出すのだろう。
おまけに、この週末、息子にとってはビッグイベントが待ち受けている。
なんとなんと。
去年までお世話になっていた野球チームの皆さんが、うちの息子の一時帰国を聞いて機転を利かせ、なんとなんと、夏の大会に選手登録しておいてくれたらしい。
そんなもんで、日曜日には、元いた野球チームのユニフォームを着て、公式戦にも出してもらえるという。
相手がこれまた、なんというか因縁の相手。
それまで一勝もまともにできたことのなかった息子たちのチームが、息子にとっては日本最後の公式大会となった去年の秋の大会で勝ち進み、最後の最後に闘って破れた相手なんだよな。
この時はもう、息子以外のチームメートたちはわんわんと大泣きしたんだっけ。
ああ、宿命の相手との因縁の対決!
そこになぜか息子が出してもらえるという、このスゴイ運命!
そもそも、先週末に行われるはずだったこの試合が雨で流れ、息子の一時帰国と重なったのだという。あーん、運命の神様、野球の神様ってやっぱりいるんだわ。
(とかいって、息子の一時帰国の時も雨で試合が流れちゃったりして……ちゃんちゃん)。
そんなわけで、いきなり昨日、息子が、「母ちゃん、キャッチボールしよー!」と言い出すから、裏庭の芝生の上でグローブを構えたら、なんとなんと久しぶりに軟球が飛んできた。
おおお、硬球ではなく、軟球で練習かい。
みれば、硬球用グローブではなく、軟球用グローブをはめている。
その几帳面さが……君らしくて、笑えるぞ。
軟球のバウンドを忘れてないか。
チームメートがぐんぐんと上手になっていて、自分だけ置いていかれてたらどうしよう。
時差ぼけなのに、ちゃんと試合でプレイできるかな……。
エラーしたらどうしよう。
などなど。
これは勝手な母ちゃんの想像だが、息子はそうとうに緊張しているし、そしてそうとうに、楽しみにもしているんだと思う。
夜になると、「怖いよー」 と正直に口にする。
「怖いのは当たり前だよ。母ちゃんだって3年後、毎日新聞に戻る日を考えたら、今から怖いもん」 と、
正直に私も言ってみる。
口にしてみたら、想像して、もっと怖くなる。
親子して、ぶるぶるっと身震いしちゃう、変な光景。
ほんと、怖いよなあ。
「たぶん、嫌な思いもする。でもその何倍も楽しいこともあるさ。たぶん嫌なことを言う人もいるかもしれない。でもその何倍も、素敵な出会いがあるさ。日本を思い切り楽しんでおいで。でも必ず帰っておいで」
万感の思いを込めた母ちゃんの旅立ちにむけた言葉だったのだけど、「帰っておいで」 の一言に反応した息子の答はこれ。
「は? あたりまえじゃん」
へなへなへな。
そ、そうだよな……。
わくわくしながら、心配しながら、彼の帰りを待とうと思う。
(へへへ、私は行かないのだった……。少年よ、大志を抱け)。
