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★脳内汚染(著・岡田尊司)

★脳内汚染(著・岡田尊司)

あちこちの書評を見て、「少年犯罪はゲームのせいだ!」みたいな本なんだろうと思っていた。「ゲーム脳」の胡散臭さに通じるものを感じたため、批判対象というつもりで図書館で借りたわけ。
大学時代にスーパーファミコンが登場し、社会人になってからゲームを手にし、一時は結構はまった私としては、途中でゲームをやめられない子どもたちの気持ち、よーくわかったりする。
だから、「ゲーム脳」関連の意見を聞くと、内心、「けっ」とか思うくせに、でも実は、息子にはできるだけゲームを与えないでいたいと思ってたりもする。
だって。
それ自体はおもしろくても、失う時間が膨大すぎるんだもの。
(そのくらい私ははまったのさ。息子も絶対にはまると思う)。

で、この本について。
京都医療少年院に勤務し、大学院では脳科学を研究、という経歴がそのまま反映した本。実際の現場で子どもたちに日々向きあって感じることがベースにあるんだろうけど、主に依拠している調査が、魚住絹代さんという元法務官の女性が行った通称「寝屋川調査」(対象は4762人の中学生とその保護者)。
この調査がどの程度信憑性があるものなのか、それが分からないだけに、迷いながら読むしかない。
もっとも、調査内容は最近出版されたみたいだから、今度、読んでみるかな。

この調査から導き出される結論は結構すごい。
なるほど、と思うものから、オカルトちっくなものまで。
以下、順不同。

・「生まれてきてよかったし自分のことが好き、と思う?」の質問に「いいえ」と堪えた子どもの割合が、1日4時間以上ゲームする子では、あまりしない子に比べ、約5倍。(以下、「4時間以上ゲーム」グループをA、「あまりしない」グループをBと略します)
・「人付き合いや集団が苦手」は、AがBの4倍。
・「人は敵か味方かのどちらかと思う」はAがBの2.5倍。
・「人を信じられないことがある」はAがBの2倍。
・「傷つけられるとこだわり、仕返ししたくなる」はAがBの2倍強。
・「小さな動物をいじめたり傷つけたことがある」はAがBの3倍強。
・「自分には人と違う特別なところがある」はAがBの1.5倍。
・「何事にも気力がなく、興味ややる気がわかない」はAがBの4倍。
・「気が散りやすく、よそ見、忘れ物、ミスが多い」はAがBの2.5倍。
・「怒ったり泣いたり感情の波が激しい」は、3時間以上ゲームやネットをする子が、あまりしない子の4倍(ただし保護者の回答による)。

もう、これでもか! これでもか! って感じ。
当然、これを読んでいるとある一つの疑問がわく。「そもそも、そういう傾向の子がゲームに夢中になっちゃうってだけで、ゲームをしたせいでこうなった、って話ではないんじゃないの?」と。
その点について、岡田氏は章の最後で言及し、「さらに究明していきたいが、どちらか一方が先というより、相互に悪循環を形作っているというのが事実に近いと思う」と説明している。

この後、岡田氏は、ゲームやネットのアディクションとしての側面について書き起こしていく。
薬物だって、アルコールだって、依存症を形成しやすい人がいて、その背景には幼児期の虐待など心的外傷がある、というのはいわば定説なんだけど、岡田氏はそこであえて「心的外傷などなくても、こういう子はゲームにはまりやすい」と列挙していく。
曰く、

・開始年齢が低い子
・男の子、年上の兄弟がいる子、一人っ子
・過保護、愛情不足、いじめ
・否定的養育、低い自己評価
・好奇心旺盛で注意が散りやすく、落ち着きのない子
・偏食の子は要注意?

はっきりいって、これを全部読んで、「うちの子はどれ一つあてはまらないわー」とのんきに笑える親は一人もいないだろうな。
この本はここから話がますますエスカレートしていき、

「ゲームをすると前頭前野機能が低下する。寝屋川調査で導き出されたゲームする子の前頭前野に関わる行動や性格の特徴は、サイコパスの診断基準に酷似している」ってところまで行ってしまう。
ひええええ、サイコパスかよ、という感じ。
さすがにこのあたりから、とばし読みを始めてしまった。

発達障害も、ボーダーラインの増加も、すべてゲーム依存と関連づけられるとし、DVも虐待も、自傷なんかも、ゲームの隆盛を背景に増えている、と言う。
情報やメディアの「毒素」が子どもの脳を変えていく、という点で、「現代の水俣病」だ、とすらいう。

なにもそこまで言わなくても……と最後は苦笑い。

ただし。
いくつかおもしろい調査を引用していて、心にとまった。
例えば、

・真面目な子の突発型非行では、全部が全部といっていいほど、現実感が乏しく、空想が主役で現実が脇役という「ファンタジー優位」の傾向が見られた。

・米軍は軍事訓練にシミュレーションゲームを採用。ゲームで訓練された兵士は敵に対して発砲することに躊躇しない、という「効果」を得ている。

・子どもにテレビで野球の試合を見せた場合と、暴力的なシーンを見せた場合とのその後の子どもの様子をマジックミラー越しに観察。暴力シーンを見せた子どものほうが、周囲のケンカに無反応で、仲裁に入ろうとする者がずっと少なかった。

・真夜中までテレビやパソコンの画面の光を至近距離で浴び続けると体内時計にズレが生じ、「眠れない」「朝起きられない」となりやすい。特に日当たりの悪い部屋で暮らしていると、太陽の光より人工光に体内時計が強い影響を受けてしまう。

・海外にはメディア中毒専門部門を擁する医療機関がある。ハーバード大医学部のマックリーン病院コンピューター中毒部長のオルザック博士は「社会的重圧や社会的スキルの欠如も中毒の原因」という。社会に居場所を見つけられず、ゲーム世界に見出してバランスを取っているように見えて、実は現実に向かい合う機会やモチベーションを奪われた結果、さらに現実的なスキルが低下する悪循環に陥ってしまう。

なーんとなく、「ありえるよね」と思える、興味深い調査だとは思った。

あと、筆者が本書の最後に書いているメッセージ「子どもを退屈させることが悪いことだと思ってはいけない」というのはおもしろい視点だと思った。
退屈そうにしているからといって、テレビやゲームをあたえることは、自分で退屈をやりすごす術を身につける機会を奪うことだ、と。

昔、とある薬物依存治療をしている医師と話した時、彼が「結局最後は一人でいる時間をどう過ごせるか、なんですよ。治療の鍵を握るのは、『一人でできる趣味』だと思うんです」と言ったことを思い出した。

一人で退屈だな、と思った時、パソコンをつい開いてしまうってのも、自分も含めて、実はどうかと思うもの。



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わたしも読みました~! 統計的に有意な差、というところは、「だからって、ゲームそのものと直接的な因果関係があるとは言えないでしょうが・・」って思いますよね。

いちばん興味をそそられたのは、アメリカのスクールシューティング事件で、犯人の子は実物の銃を初めて持ったにもかかわらず、ゲームで日々訓練していたから、プロの軍事戦略家もびっくりの的確な手順で銃をうちまくって高率で命中させてしまった、という話。あと、これもアメリカの子どもが、コンビニに押し入って、撃つつもりなどなかったのに、店員がふりむいたとたん、思わず眉間に命中させてしまった、という事件。。。

視覚イメージの刷り込みの恐ろしさをあらためて感じました。いまの世の中、子どもに見せたくないものがあまりにも多いです。そういう意味では、この本が出たのはよかったなあと思いました。

この本ねえ


 この本、いま、スローなテンポで読んでいます。
 なにがデータで、なにが彼の想いなのかをちゃんと分けるのは難しく書かれているので、文の流れに騙されないようにね(爆)。彼は、犯罪等の原因が、発達障害や人格障害のせいにされるのは嫌みたいね。これは、精神科医の立場からは当然でしょうね。ある意味、他の原因があってほしい、という願いが感じられます。

人を殺す禁止プログラムが人間にはあって、ゲーム漬けになるとそのプログラムが解除される、ってのも、彼の独自な説ですね。そもそも、人間に、そんなプログラムがあるのかどうかは、どの文を読んでも、客観的ではない。むしろ、性善説的な思想でしょうね。しかも、ゲーム漬けになってそのプログラムが解除されるのなら、おそらくは、世界で最大のゲームやアニメで暴力的なものを排出している日本が、どうして世界で一番人を殺さない国なのか。殺人率はイスラエルに次いで2番目に低い。イスラエルは戦争で人を殺すので、それを考えれば、人を殺さない。しかも、戦後の混乱期として片付けられてしまう時期の方が殺人が多い。これはゲームが殺人を誘発する説を納得させられない。

 まだ、最初のほうしか読んでないのだけど、このあたりだけ読んでも、いちいち他のデータと比較したくなるので、なかなか読み進むことができません。

一人でいる時間をどう過ごせるか

って大事だなぁって思います。私は昔、一人でいられない性分でしたが、今は一人で散歩したり、そこで受けた刺激を絵に描いたりと、一人でできる趣味も出来て、一人の時間を楽しめる様になりました。今の時期の散歩は、気温も暖かい日が増え、花がたくさん咲いていて目の保養になるので、家の中に居ることが多い人には、ゼヒ外に出てほしいです。ゲームやネットにはない楽しさが待っています。

りえりんさん。

子どもがゲームをすると、大人に対するのとは違う悪影響がある、と言われると私、弱いのよ。なにしろ、大人への「悪影響」は身をもって体験し、「ゲームが悪い、というより、ゲームをする側の持っているものによってものすごく影響を受けたり、そうでもなかったりするだけじゃん」という結論に達しているので。
ただ、子どもに対する影響となるとなあ。
40歳の私には、人体実験の不可能な世界ですし。
どうなんでしょうねえ。

渋井さん。

そうそう。読み進めているうちに、どんどん読み手側の気持ちを慎重にさせてしまう本ですよね。
私はそれで、飛ばし読みモードに入ってしまったんですが、そうですか、渋井さんは、他のデータとの比較とかされているんだ。感心しちゃいました。

ともさん。

でしょ? 一人でいられるかどうかって結構大事ですよね。ただし、私がほんとうに平然と健康的に「一人」を楽しめるようになったのは30歳過ぎてからだと自覚してるので、えらそうなことは言えないのです。はい。

マインドさん。

書評リンク、ありがとうございます。
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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