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息子が取り戻した消しゴム12個

「母ちゃん。学校で消しゴムがさ、なくなるんだよ。誰かに盗られてるんだと思う」
息子が最初にそう言い出したのは、たぶん1カ月くらい前だった気がする。
アメリカには、エンピツにつけるキャップ型のカラフルな消しゴムというのがあって、何色も入ったのを文具店で売っている。
「クラスのみんなが持ってるのを見て、ほしいなーと思うんだけど、買ってくれる?」
息子が米国に来て最初にねだった文具が、これだった。
「文具は日本のに限るなあ」  などと言うことが多かった息子が、初めてアメリカの文具に興味を示したのがなんとなくうれしくて、あっさり買ってやったのが1カ月前。
それ以来、一つ、また一つと机の中から消えていくんだという。

「だからアメリカは嫌なんだ」 などと息子が言い出すもんだから、「日本だってよくある話しじゃない~」 などと焦って言いなしたら、「俺は日本ではモノを盗られたことはないっ!」 と息子は断言する。 
なまじ日本で友だちに恵まれていた息子だから、何か嫌なことがあると、全部 「アメリカ」 のせいにしちゃいそうで、とっても心配なのだった。

そんなある日、息子は言った。
「俺、消しゴムを盗る奴、だいたい分かってきた。わざと消しゴムをちらつかせたら、ずっとこっちを見てて、こそこそと友だちと俺の名前を言ってたもん。明日はあいつを、1日じゅう、監視してやるんだ」
なんだか最初から敵対ムード。
穏やかじゃないなあ。
大丈夫なのかしらん。

そしたら翌日。
学校が終わって、お迎えの私の車に飛び込んできたと思ったら、ポケットの中から何やら出して、得意満面に言う。

「返してもらったよっ!」

手のヒラにはなんと、消しゴムが8つ。
息子の話は、こんな感じ。

「算数の時間に、俺、ずーっとアイツの行動を見てたんだ。そしたら、別の子の机の上から消しゴムを盗る瞬間を見ちゃったの。それで、英語しゃべれないけど、どうしたらいいかな、って考えて、ドーブリッジ先生のところに電子辞書を持っていって、アイツを指さしてから、『消しゴム』 と 『盗む』 って文字を辞書で探して見せたの」

先生はその子をすぐ呼び出し、事情を聞いたらしい。
その子は絶対にやってないと言い張ったけれど、2人組の片割れが全部正直に離し、その子も認めたんだそうだ。
で、その場で戻ってきたキャップ消しゴムの数が、なんと8個。
「まだ家にあるから、明日持って来てくれるんだって」
息子は実にうれしそうだ。

彼の喜びを分析するに、
「消しゴムが戻ってきた」 が5割。
「英語が話せなくても、なんとかなった」 が4割。
「先生がちゃんと信じてくれた」 が1割。
というところかなー。

息子に言いたいことは、実は色々ある。
「消しゴム」 くらい、辞書を使わなくても、既に知ってる単語だろ、とか。(完璧主義の息子だから、完璧を期したかったんだろうことは、容易に想像つくけどね)。
辞書を駆使してでも意思表示する気持ちがあるなら、誰かと友だちになるとか、もっとポジティブな場面でその努力をしろよ、とか。

それでも。
息子の性格を考えると、本当に緊張しながら、迷いながら、先生に告げに行ったのだと思う。
単に自分のモノが盗られたからじゃなく、クラスメートの消しゴムが盗られてるのを見て行動に移したことも、うれしい。
何より。
どんなささいなことでもいい。
少しでも自信を取り戻してもらえるなら、それはやっぱり息子にとっては貴重なステップなんだろう。

翌日。息子はさらに消しゴムを4つ持ち帰った。
その子が直接届けてくれたんだって。
息子は12個の消しゴムを、今はしっかり家で保管している。
現地校に行き始めてもうすぐ4カ月。
いまだ英語で友だちと会話する気配のない息子の、長い長い道のりの中での小さな出来事なのだった。


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ああ、息子くんが電子辞書を入力して、先生に向かっていくときの心臓の音が聞こえてきそうだよ。

でもなんか、いい話だなあ。
うちのムスコが「トゥーンディズニー」でハマって見ているアニメ『リセス』というのがあって、アメリカの公立小学校の4年生(だったかな?)の日常生活のあれこれが出てくる話なんだけど、その『リセス』に出てきそうなエピソードだなあ、と思って読みました。(ディズニーだから、基本的にはすごーくいい子の話です。ま、だから安心して見せられるのだけど。)
アニメなら、その盗んだ子と仲良くなっていくなんてことがありそうだけど(笑)

英語話さなくても、見てるもんは見てるのだ、と主張できたのが本当に息子くんの自信回復につながるといいね~。
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

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