スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

南部旅行が東部旅行になったわけ

息子のバッティングのスランプは続いている。
これまで、トラベルチームの試合では打てなくても、地元のレクリエーション目的チームの試合では当たり前のようにヒットを打ち、打点を上げていたのが、これすらままならなくなってきた。

打てない、と思う。

打ちたい、と思う。

どうすれば打てるんだろう、と迷う。

バットスピードを上げないと、どうせ球に当たっても飛ばない、とかあれこれ考え始める。

考え始めると、いよいよ、バットが振れなくなる。

結局内野ゴロに倒れてしまう。

というパターンが、何試合も続いている。
先日のトラベルチームの試合では、とうとう、打順は下から2番目まで落とされた。一番下位だったドリューがこの日、目もさめるような長打を2本放った。
一方、息子はやっぱり内野ゴロ。
この日はもう、見ていて痛々しいほどに落ち込んでいて、かける言葉も思いつかない。

だいたい、我が家の 「5泊6日『酒と音楽と魂の南部ドライブ旅』@ニューオリンズとメンフィス」 が湯露と消えたのも、息子のスランプが主な原因だったりする。
夫の仕事の都合で、行けないものといったんはあきらめたこの旅だが、「仕事がずれた。行けるかも」と夫から連絡が入ったのは前日のお昼。そのまま、息子の試合があって、上記のようなありさまで、すっかり落ち込む息子と帰宅したのが夜8時。

これから、夕飯作って、旅行の準備もして……。

となんかもう、疲弊しきっていたところに、息子が涙目で訴えたのだ。

「旅行に行きたくない。試合を休むのは嫌だ」

5泊6日で旅行に行けば、トラベルチームの試合2回、レクレーションチームの試合が2回、それにトラベルチームの練習を1回休む羽目になる (そうよ、平日も休日ももはや毎日、野球だらけなのよっ!)。
「すごーく試合が楽しみだから、出られないのは嫌だ」 というのでは、たぶん、ない。
今休んだら、みんなに置いて行かれるかもしれない、定位置のサードやショートまで誰かに取られるかもしれない、もっとヒットが打てなくなるかもしれない……。
すごく不安だったのだろう。

涙目で 「試合に出たい」 という息子に、ぐぐっと心を動かされた私は、数百ドルの払い戻し不可の航空券をすべてムダにしてしまう覚悟ができたってものさ。
そりゃそうだ。
「試合に出たいから、旅行に行きたくない」 とは、その根性、結構じゃあないかっ!

私がその話しを夫にしたら、夫もやけに早く心を動かされたらしい。
「だったら、もう旅行は、やめたやめた。それが一番いいよ。心をこっちに残したまま旅に出たって、あいつは楽しめないし、俺等も楽しめないだろ」
うーん、いいこと言うじゃないか。

ということで、あっさり旅行中止決定。
なぜか妙に気が軽くなる私。
なぜなら、今から旅行の準備するって考えただけで疲れるし、予定通り旅行に出れば、カレッジの試験前の最後の2回の授業をすっぽかすことになるし、合唱でも懸案があったし、週刊ポストの原稿もまだ書けてないし、季刊誌「青少年問題」の原稿も実はまだだったりするし、どう考えても、今回の旅行は無理があったのだ。
ムダになる航空券は悔しいし、「音楽と酒と魂の旅」 に出られないのも残念だけれど、もはや 「音楽と酒をあびる」 ほどの体力すら残ってなさそうなのだった。

さて。
「よく言った。それでこそ、野球少年だっ! 旅行は中止。こうなったら、野球に全力投球しようじゃあないか!」
と、母ちゃんは高らかに宣言したわけなんだけど。
あっさり、旅行が中止になったら、今度は息子のほうの態度がグラグラ揺れ始めた。

「そんな簡単に決めちゃうの?」
「行けないと分かったら、やっぱり行きたかったかも」
「もし試合が全部雨で流れたら? ものすごく後悔しそうな気がしてきた」
「ああ、やっぱり旅行に行きたい~っ!」

おいおい、なんだよー、それ。
この時点で、私、すでに精神的になんか疲れていて、ぜーんぶ夫に丸投げしたい気分。それで、息子に、「父ちゃんと相談してくれ。母ちゃんはもう、どっちでもいい」 といって息子の受話器を渡したのだった。
ところが。
夫はまさに仕事に忙殺されていて、特に睡眠時間がなかなか取れず、疲弊していたところだったので、いきなり 「やっぱり旅行に行きたい」 と電話で息子に告げられ、きっと、思い切りぶち切れたんだと思う。
「は? もう旅行は、なし。決まったことだろ」 と。

息子、号泣。
ダダダ、と2階に駆け上がりながら、「せっかく旅行に行きたくなったのに、父ちゃんが怒鳴った~っ!」
と。

……あのさあ。
そもそも、ほんの1時間前まで、我が家は旅行に行くモードになってたの。
母ちゃんも父ちゃんも、仕事でヘロヘロながら、それでも旅行に行くぞ、と覚悟決めてたの。
「行きたくない」の一言で、
ぜーんぶ、
ガラガラポンとひっくり返してくれたんは、
誰なんやーーーーっ!!

グジグジと二階でいじけている息子などほったらかしで、それでもついつい気になって、天気予報を見てみたら、1週間、ずーーーーーーーっと雨予想。
ははは、なんじゃ、これ。野球を理由に旅行を取りやめたはいいものの、試合が雨で流れたりして……。

あーあ、もう。
すでに、母ちゃんは布団を被って寝てしまいたい気分。
でも夕飯作らなきゃいけないし。
原稿書かなきゃいけないし。

2階に上れば、目の前には、試合で打てず、精神的にボロ布状態の、思春期に入りかけた息子。
靴下はくさいし、ユニフォームは泥だらけだし、それだけでもうっとうしいのに、おまけに、落ち込んで涙目ときたらもう、処置なし。
こっちまで、気分は、どよよ~ん、だ。

子どもが落ち込んでる時、それに感応せず、カラカラと笑い飛ばし、まったく無関係に前を向いていられる肝っ玉母ちゃん、というのが私の一応理想なんだけど、いかんせん、もともと 「子育てに難あり」 なタイプなもんで、そう理想通りにはいかないのさ。
目の前で子どもに落ち込まれると、こっちまでどよよ~ん、となり、家中の空気が重くなる。
ああ、最悪。
こういうのを吹き飛ばせる天賦の才能を持った、我が家で唯一の超楽観主義男である頼みの夫は、いまだ職場で仕事と格闘中……。

「旅行に行きたかった」と繰り返す息子に、「じゃあ、さっきどうして行きたくないと言ったのよ。行かない話になった原因は、あんたなんだからね」 と言い返す私。
「だって、さっきは野球の試合の後だったから……」 と言ったものの、自分の心変わりを言葉でうまく説明できない息子。
ああ、私が疲弊していてよかった。
私の体力万全だったら、理路整然とした理屈が見えるまで、息子をド詰めにしてたかも~。
(ほんと、私の悪いクセ……)。

それでも、夕飯を食べさせ、ぐじぐじと涙目で漫画を読み続ける息子を罵倒しながらベッドに追い込んだ。さすがは私の息子。ものすごーくしつこい。「あーあ、旅行に行きたかった。ものすごーく行きたかった」 と延々つぶやき、試合の後で疲れてるだろうに、眠ろうともしない。
そんな息子にイライラする私。ぜったい、ガン細胞が100個くらい生まれたと思うよ。

結局息子が寝たのは夜中の12時。
私が寝たのは12時半。
夫が帰宅し、「おい、旅行話、どうなった?」 と私を起こしたのが夜中の1時半。
それから、ああでもないこうでもないと息子の事情を説明し、「打てないスランプで精神的にかなりダメージ受けてるし、無理矢理でもこの状況からひっぺがして、旅行に連れ出したい、という思いもあるんだけどね」 と私が言ったところで2時近く。

夫はぼそっと、「だったら、今から、旅行の準備して、行くか?」

お互いに、じーっと顔をみつめあい、がく、っと肩を落とした。
私の目に映るのは、日米の時差と締め切りにほんろうされ、やれクライスラーの破綻だので、ほとんど寝られてない夫の疲れきった顔。
きっと夫の目には、ガン細胞を100個増やしてしまった妻の顔が映ってたと思う。

「無理だよな。オレは無理。体力的に無理。やっぱり旅行は無理」

力なく夫婦してうなづきあうのだった。
ちゃんちゃん。

さて、翌朝。
もしも旅行に行くなら、6時には起きて、7時には出発しなきゃいけなかったわけだけど、目が覚めたらもう8時だった。
息子は、寝ぼけ眼で最初にこう言った。
「あーあ、旅行、行きたかったな」

なんだよ、このしつこい性格。
誰に似たのよ?! って絶対、私だ。
夜中に夫に起こされてから、結局、私、ほとんど寝られなかったのだ。

それでも、結局、こういう時に前向きに事を進められるのは、我が家の万年楽天主義男殿。
「月曜日から2泊3日で近場で旅行に行くか。南部旅行をやめて浮いたレンタカー代だけで、2泊3日のホテル代くらい出るだろ」。
これが土曜日。

そこから、ほとんど力業で、ホテルを予約し、旅情報をリサーチして出掛けてきたのが、先日エントリーに書いたフィラデルフィアだったわけ。
我が家の南部旅行が、いつの間にか東部近郊旅行になったのには、まあ、そんなわけだったのでした。
ああ、つかれた。
(5泊6日の旅行で欠席予定だった4試合と1練習のうち、息子が出場できた1試合を除いて、すべて雨でキャンセルとなりました。ちゃんちゃん。まあ、人生なんてこんなものね。お天気には勝てません)。


スポンサーサイト
プロフィール

おぐにあやこ

Author:おぐにあやこ
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■07年秋まで新聞記者。仕事を辞めて渡米。11年、新聞記者に出戻り。
趣味■読書、歌、旅
目標■ちょっと背伸びして、
 疑問符を感嘆符に変える事
苦手■勧善懲悪


著書■
▼「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)
「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)
「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)
「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
「アメリカなう。」(小学館)
「アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた」(径書房、ミズノスポーツライター賞)
「?が!に変わるとき  新聞記者、ワクワクする」(汐文社、読書感想画中央コンクール課題図書、高校生の部)

訳書■
「自傷からの回復 隠された傷と向き合うとき」(みすず書房)

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
RSSリンクの表示
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。